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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二章 デュッセンドルフ砦の正規軍のゴタゴタ

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呪いを受けている朝食

冒険者ギルドにて俺とデニーが暴れた事について、俺とデニーは誰からも叱責を受けなかった。砦に戻った俺に対し、砦の騎士達が物凄くよそよそしい? 振る舞いをするようになったぐらいだ。

なんかビクつきながら敬語使ってくる奴もいるし?


やりすぎたかな?

あれからひと月も経ってしまったのかあ。


オズワルドの家であるが、その後修繕も終わり家具も置かれ、オズワルドと俺とデニーは二間前にこの家に完全に居を移している。

結局新しい家具を全部買い揃えることは必要無かった。

せっかくだからとベッドを自作してたのをオズワルドに知られて鬼と叱られた上、なぜか領主のご厚意で使用しない家具を沢山貰えたからである。


「デニーが許すからって、デニーを働かせすぎだ!!」


だが俺が考案してデニーが製作したベッドについては、オズワルドの方が気に入ってしまって取り上げられた。なので結局デニーは自分の分も入れて三人分作らなきゃになったのだから、本当の鬼はオズワルドだと思う。


ベッドは木枠に板を張る代りに、革ひもを縦横で組んだだけである。ところがその革ひもが、この世界では標準的だが前世では粗悪品なマットレスに、なんと副音をもたらしたようなのだ。革ひもの伸縮で低反発ぽくなり、湿気もこもらない。とにかくとても快適なものになったのだ。


俺がいなくなったらバラしやすいものと、俺は考えただけなんだけどね。


ほら、オズワルドが暑苦しいからさ。俺が消えた後の事を考えての対策はしておかなきゃじゃない。

だから書き物机とか大型家具は、自分用のものは用意するつもりはなかったのに。

領主様からのご厚意家具で、しっかり俺の部屋に俺専用大型家具がいくつも……どうしよ。


さて話は自作ベッドに戻るが、やっぱりオズワルドを頭に頂く魔獣騎士団。

オズワルドのベッド自慢に自分達も欲しくなったみたいで、団員から大量注文がデニーに来ちゃったらしい。それでデニーは律義にも俺に作ってもいいかと伺いを立ててきた。そこで、家具屋と契約して売れた分だけ特許料をデニーが貰うようにすれば、とアドバイスすれば彼は泣いて喜んだ。

材料費と些少な手間賃だけじゃデニーの負担が大きすぎるし、デニーの借金はまだ少し残っているからね。


「天使ですか、あなたは!」


「他人のベッド作りで俺の世話に穴が開くとかやだもん」


「悪魔ですか、あなたは!」


そんな感じで最近は俺を罵れるようになった忠義者デニーは、今日も俺の為に朝ご飯を作ってくれる。早朝の小鳥のチュンではなく、階下の鳩時計の太い声に起こされる俺は、朝の支度ができたと階下の厨房に降りた。すると、四人掛けできる程度の四角いテーブルに、デニーが朝食の皿を置いている所だった。


我が家は野菜スープにパンでは無い。

俺はこの家で好きにできる特権を活用し、朝といえばパンケーキとカフェオレと、この国にはない朝食メニューにしてしまったのだ。

カフェオレはコーヒー無いけどチコリコーヒー風のものはあったから、それでね。

いつか本物のコーヒーも飲みたいな。


さて、今日もデニーのモーニングプレートは旨そうだ。

ちょっと薄くて小型のパンケーキが何枚も重ねられ、その横にはスクランブルエッグにカリカリ焼きベーコン、そして家庭菜園させてるプチトマトとパセリ添え。

そこに砂糖と蜂蜜を煮詰めて作ったシロップをかけるのだ。

俺が席に着けばデニーも向かいに座る。


「ふふ。今日も冒涜の極みだ。恵みをありがとうございます」


「ふふふ。ブリュー様には悪いことばかり教えられてます。恵みをありがとうございます。神よ栄光あれ」


俺達は微笑み合い、最高の朝食にフォークを入れる。


リンゴーン。リンゴーン。


無情に鳴る玄関の呼び鈴の音。


俺は忘れていたな。

この素晴らしき朝食には呪いが掛かっていた、ということに。


オズワルドは自宅から砦に毎日通うのは難しいと、今も週の殆どは砦の寮で寝泊まりしているのだ。この家の位置は町よりも近いけど、ここから砦へ行ったり来たりの距離を考えると砦にいたほうが良い。オズワルドの呼び出しにここまで来る部下が可哀想だし。


だからオズワルドが自宅に帰るのは休みの日だけだ。

自宅に三日しか泊った事無いなんて、哀れ。


だけど、砦にはオズワルドが必要だ。

仕方が無いだろうに、彼は俺考案デニー作の魅惑のモーニングセットが砦に帰れば食べられないことを子供みたいに悔しがり、自分がいないところでモーニングセットを享受できてる俺達に多大な憎しみを抱いているのである。


「畜生、お前等ばっかり!!呪われてしまえ!!」


その程度の呪いなんで忘れていたけど、オズワルドはその気になれば呪いを実力行使できる人だったんだよなあ。


俺とデニーは呼び鈴が鳴る表の玄関の方角へと視線を向け、それから無言で互いに視線を交わし、軽く頷き合う。無視しようねって。では、朝食に戻ろうか。


「でも、いいんですか?」


「気になるならデニー行って。俺は表の奴がこっちの裏口に回ればいいと思うから、動く必要性を感じない」


「裏口に回るには、ジェニーさんが生息する危険地帯を超えねばなりませんよ」


「どうしても伝えたいことがあれば来るでしょ。カリカリベーコンに甘いシロップが掛かるとどうしてこんな罪深い味になるんだろ。うま」


「仰る通りでした。明日はまた目玉焼きと肉詰めでもいいですか? 俺は胡椒と塩がまぶされた目玉焼きにシロップが掛かった時の罪深さが好きです」


「うあ。今から明日の朝が楽しみだよ」


「もう昼に近い時間ですけどね」


「ブランチとはそういうものだ。ああ、いい朝だねえ」


「あの朝に弱い団長が早朝から働いているというのに」


「これが贅沢ってもんだよ。デニー」


デニーはお貴族時間な俺と違い、早朝にパンとチーズの簡単な朝食をとり朝仕事を終えている。その後は俺が起きるまで、二度寝したり本を読んだりと自由時間を過ごしているようだ。


俺が起きたらわからない所を質問して来るのが少々めんどいけど、デニーが法律の勉強が楽しいって喜んでいるなら俺も付き合わねば。

彼は俺がやったことにかなりの感銘を受け、王国法や条例条約など、暴力を使わずに人を縛れるルールついて興味をとても惹かれたそうなのだ。


それって、法を隅から隅まで知っている暴力行為も出来る人を目指してるってことだよね。と、俺は個人的にとてもヤバァい人間を製造し始めてる気がして焦る。

まだデニーは未完成だし好きにさせてていいよね(汗)


俺は少々不安を抱きながら、チラッとデニーを見れば。

学ぶことで自信が戻って来たのか、デニーは俺に余裕ある男の笑みを返した。


「一生ついていきます。ブリュー様」


ぐふっ。


美男子でないのに、内面から滲むイイ男要素で物凄いイケに感じる。ヤバァい。


リンゴーン。リンゴーン。リンゴーン。リンリンゴンゴーン。


「「ちっ」」


「敵は実力行使できたな」


「やっぱ出てきますね。どうでもいい用事だったら、二度とこの家のベルを押したく無くなるように指導してきます」


「お手柔らかにね」


デニーは立ち上がり、仕込み杖を突きながら厨房を出て行った。

義肢での移動は大変なのに杖を突いて歩くのを嫌がっていた癖に、杖に武器を仕込んだ途端に手放さなくなるのはこれいかに。

俺はふっと笑いながら、最高のスクランブルエッグを、


「おい。何勝手に入ろうとしてんだ!!」


「私は砦の騎士ですのよ。大事な話なのよ!!さっさとグラナータ様の愛人に取り次ぎなさい!!」


うわ、マジ呪い案件かよ。

俺は無心になって、優雅な朝食を続けることにした。

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