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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二部第一章 俺は帰って来た、過去のデュッセンドルフに

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俺の猟犬よ、さあお前の獲物を連れて行け

デニーを嘲り、オズワルドの家を台無しにした奴ら。

「黄昏の風」のリーダーカインは、俺が作った契約書にサインをした。

一切文面を読みもせず。


かつてデニーと交わした口約束が書いてあるだけ、そう思い込んでいるのだろう。

でもね、信用のおける相手と間違いのない書面の契約書だろうと、読むものだよ。

もしかしたら互いの思い込みで、互いが損してしまう書面になってるかもだし。


まあ、読みたくても、俺が作成した貴族の飾り文字バリバリの契約書なんて絶対に読めないだろうけどね。


デニーの言い値は少なすぎたから適正価格に色付けて直した数字は、貴族間でやり取りする正式な文字数字(前世では壱とか弐とかね)で記載してある。そこに、返還時に現状回復しなかった場合の罰則金も盛り込んであるのだ。


頑張った作成者としては、きっちり読んで騒いで欲しい気もするけど。

その場合、口約束なんか知らないってデニーを追い込んだように、デニーとした口約束とその契約書が違うと言える証拠あんのか、と追い込んであげるから。

――追い込みたいなあ。


「さあ書いたぞ。さあ石を寄こせ!!」


俺はカインなど無視をしてデニーから契約書を受け取ると、その契約書を受付カウンターに持って行った。

もちろん、目の前には今にも憤死しそうな顔したギルマスだ。


「このサインが正しいか公正な目で確認してくれないか。大事な書類だ」


「おい!!俺のサインに文句があるってのか!!」


馬鹿だなあ。

俺がせっかく契約書がお前にとって公正なものか、確認する機会を与えてあげたというのに。それなのにお前が騒ぐから、ギルマスはたぶん文面を読み切れ無かった気がするよ。

あと、そんなにギルマスに見せたくないのは、お前にこそ理由があるよね。


「ふざけんな。この馬鹿が!!嘘のサインをして、価値のある魔石をかすめ取ろうなんざ、なんて馬鹿な事をするんだ!!」


「ああ、やっぱり。では、この件も含めて彼は憲兵に引き渡し」

「書く、ちゃんと書く。間違えただけだ!!」


「ではギルドカードを出して、正しいサインをもう一度お願いします。こっちも遊びではないもんで」


「て、てめえ。覚えておけよ、このガキが」


「いいから書けよ。この冒険者ギルドの面汚しが!!」


うん、ギルマスもいい仕事してくれる。

俺は出来上がった書類にデニーにもサインをさせ、それをギルドにて複製を二枚作ってもらった。ギルドの受付は、コピー機みたいな複写魔法も使えるとギルドまでの道すがらエルマーに教えて貰っていたが、実際に目にすると感動だ。


二枚の白紙に原本に書かれたものが転写するだけなのだが、コピー機でウィーンと出てくるのと違い目の前でみるみる文字が浮き出てくるんだよ。

魔法はやっぱり素晴らしい。


さて複写された一枚は、今回仲立ちしてくれた冒険者ギルドに渡した。

もう一枚は、誰もがわかるようにしてカインに預ける。

債務者には債務内容を忘れてもらっちゃ困る。


そして最後に原本をデニーが受け取ったが、彼は原本を俺に差し出した。

俺はニヤリと笑うと、銀貨入りのポチ袋をデニーに手渡した。

彼は嬉しそうにポチ袋から銀貨を取り出して、彼もニヤリと笑う。

だね、これでやっとひと仕事が終わった。

俺達は思いっ切りの笑顔となった。悪い悪い笑顔だ。


「ほらあ、これで俺がお前の家に泊ったことは証明だ。俺が残していた石を返して貰おうか。ガキ」


「証明されたな。ではカイン。借金奴隷になりたくなければ、契約書に記載ある賃貸料に家屋へ与えた場合の罰則金に未払いが続いた延滞金。しめて金貨十二枚を今すぐに支払って貰おうか。端数は優しさで切り捨ててあげたよ」


「急に払えるか!!それに賃料は後払いか分割って話だろ!!」


「ハハハ。デニーはね。でもね、債権はたった今デニーから僕に移動したんですよ。僕は分割を許すとは言っていない」


「じゃ、じゃあ、その石を俺に返せよ!!お、お前の知らない石だってんなら、俺達が泊まり込んだ時に残した石だ」


「ええ、今朝まで石のことは知りませんでいたよ。オズワルド・グラナータがね、家の片付けで余計な出費があった時にと渡してくれた石なんです。これはオズワルドがジェネラルオークを討伐した時に得た石ですよ。良かった、彼がこれを自宅に置いておかなくて。置いておいたらお前等に盗まれるとこでした。あったはずなのに消えていた小さな絵画のようにね」


「アーニャ、お前絵も盗んだのか」


「知らない。そんなの知らない!!」


バカなのかな。

この場で手癖が悪いの紹介しなくても。消えた絵画なんか無いんだし。

俺はギルドマスターに視線を向けると、彼はもう完全にあきらめ顔だ。

俺はカインに視線を戻す。


「僕も鬼じゃないですからね、あったかどうかも不確定な消えた絵画なんて今さら追及しません。それよりも、金貨十二枚、今すぐに払ってくださいよ」


「う、うう。今すぐなんか出せるはずないだろ!!払わないって言ってないんだ。人には都合ってもんがあるだろうが」


「僕があなたの都合に合わせる必要あります? 僕に大事なのは僕の都合だけです。デニー」


「はい」


「おい、何を、ぐうう」


デニーはカインの襟首をしっかりつかみ、そのまま引き摺り始めた。

死地にて巨大な斧を振り回していた元戦士の腕を、シルバープレート程度の冒険者がどうにかできるわけもない。


「こいつを借金奴隷として奴隷登録所に置いてこい」


「かしこまりました」


「たす、助けて!!悪かった。俺が悪かった!!奴隷は嫌だ!!放せ、放して」


「いい加減にしなよ。お子様が粋がってんじゃないわ」

「そうだ。このくそが。無事にここから出られると思う……か」


ようやくカインの助成をしようとしたのか、黄昏の風メンバーが俺に声を荒げた。ありがとう、お前等のお陰で、使うこと無いかなって思い始めてた俺が置いておいた暴力装置が作動しちゃったよ。


俺達を鑑賞してた五人の騎士達(私服だけど威圧感はバリ)が、わかりやすく睨みを聞かせながら同じタイミングでザンって感じで一歩前に出たのだ。


一瞬で室内は氷点下。


俺とデニーはそんな沈黙の中扉へと向かう。

カインをただのずた袋の如く引き摺りながら。


「ちょっと待て!!俺がその債権を買う!!」


ギルドマスターの慌てた甲高い声がギルドに響いた。

俺は足を止め、ギルドマスターに向けてにっこりと微笑む。

借金の取り立てなんて、ダルイ事したくないし。

本当に上の奴がいると話が早い。


※金貨一枚 今も昔も25万円前後 という事で、十二枚で300万。あんまり暴利で無いのはブリューの良心ではなく、契約書の内容を突かれても常識なものでしかないと言い張れるからです。

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