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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二部第一章 俺は帰って来た、過去のデュッセンドルフに

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ファンタジー世界を堪能するにはやっぱ冒険者ギルド

俺はデニーだけを供にして、冒険者ギルドに入ることにした。

もちろん俺が何するか興味津々の五人組には、時間差で入ってこいと伝えてある。


「開けて」


「はい」


冒険者ギルドの扉をデニーに開けさせる。

伯爵令息は自分で扉を開けないものだから。


ギルド内は俺が漫画や小説で読んでいた風景とは違い、屋内に酒場は無かった。

ただし、仕事を依頼したり冒険者登録をするカウンターはあり、窓のない壁には沢山の依頼書が貼り付けられてる所はイメージ通りだ。それから、見るからに粗暴そうな男や女性達が何人もおり、彼等は入って来た俺に一斉に視線を向けた。


俺への品定めだろうが俺は気にせず、ツンと顎を上げたまま真っ直ぐに受付カウンターへと向かう。服装なんかどうでもいい。貴族かどうかは姿勢でわかる。

それに俺の後ろにはデニーが続く。

怖いことなど何も無い。


「あの、順番を守って頂けませんか?」


カウンター内の制服女性が立ち上がり、俺に列に並べと言って来た。

俺は鼻でフッと笑い、持っていた黒表紙の帳面を開く。


「攻撃させるな!!」


壁際に立っていた男が二名、ナイフを持って俺に襲い掛かる。

用心坊が俺の手前に来る前に、デニーが俺を自分の背に隠し、その流れで杖代わりにしてた金属棒で二人のナイフを撥ね退けた。


奴らは用心坊だろうが、デニーの左足を喰った魔獣よりも弱いのだ。

そしてデニーは怒号を上げる。

己の存在を知らしめるようにして。


「武器を持たない方に襲い掛かるとは何事だ!!」


用心坊二人の足は止まる。

俺はよくやったとデニーの背中を軽く叩き、それからデニーの前に出る。

俺が睨むのはカウンターの受付だ。


「素晴らしい出迎えです。ギルドは一般人の話を一切聞かないって本当ですね」


「いえ、あの」


「てめえが不穏な動きを見せただけだろうが!!」


黒表紙なだけで魔法書と間違えたか!!狙ってたけどね!!

俺は内心で大笑いだが、顔の表情はスンと崩さない。


「不穏ですか? 順番を守って欲しいと言われた事に関して、自分の用事はどのカウンターに行けば良いと尋ねようとしただけですが?」


「ご、ご用は何でしょう」


「受けた損害についての相談ですね」


「いま、今のは」


「言いがかりだ。このくそガキが。痛い目に遭いたくなければ、あんまりオイタをするもんじゃないぞ」


ギルドの用心棒は阿吽像みたいに、二人の内一人ばかりがお喋りなようだ。


「何を笑っていやがる」


「いえ。本当の脅しを知らないなって。ねえ、魔の森の魔獣を知ってるお前はこの二人はどう思う?」


俺がデニーに振り向けば、デニーは口元をほんの少しだけ歪めた。

それだけでデニーの百戦錬磨ぶりが読み取れる。

俺はノリの良いデニーにホッとしながら、再び受付女性に目を向ける。


「お、お客様。誤解があると思います」


「僕は誤解だと思いませんよ。僕はこの二人に襲い掛かられ、その行為が誤解と間違えようもない脅迫も受けました。この二人を庇われるのは職員だからですか? でしたら王国法の第二三七条に抵触します。王国法第二三七条は組織的に市民に対して脅迫行為が行われた場合、組織解体あるいは罪に準ずる罰金刑に処されるとありますね」


「ちがいます!!この二人は職員ではありませんから!!」


「あ、そうですか。ではこの二人はただの脅迫行為を行った者ですね。では憲兵を呼んでください。犯罪行為者です。あ、そうだ。憲兵に囚われた犯罪者はどうなるんだっけ? ねえ、受付さん」


受付女性は目線を揺らがすばかりで答えられない。

それよりも、彼女が見捨てたばかりの用心棒の視線にも脅えているのだ。

だって。


「領外退去ですね。犯罪者認定された者はギルド証も失効しますね。さあ、では、憲兵を呼んでください。この二人はギルドには関係なく、むやみやたらに暴力行為を一般人に向ける犯罪者です。ギルドが彼等の暴力を許容していないならば、さあ!!」


「どうしてくれんだ。リリィ!!」

「ギルドに尽くした俺達を斬り捨てるのか!!」

「そ、そんなつもりじゃ」


「いい加減にしねえか、お前等。それに、このガキが!!誰のお陰で安全な世界で生きていられると思っているんだ」


デカい大声を上げて奥の部屋から出てきたのは、筋肉隆々の巨体にスキンヘッド。

ここのギルドのマスターだ。

交渉はトップとした方が早い、と、俺は前世でも今世でもしっかりと学んでいる。

受付相手にグダグダしていても仕方が無いのだ。


俺はギルドマスターに向けて軽く微笑み、そして、伯爵令息としての気概をもって彼へと声を上げた。誰が聞いても大声では無いが、ここにいる誰もが聞き取れる声で、だ。


「僕の安全はあなた方のお陰では無いのは確かだ」


知っているか?

貴族の当主が誰よりも静かなのに声がどこまでも通るのは、幼い頃よりボイストレーニングによってそういう声を出せるようにしてるからだよ。

この声が出せることこそ、教育を受けた貴族である証明なんだ。


「ハッ。お貴族様にはオズワルド様がいるからってか?」


がなるなよ。

子供の俺が押さえた声なのにお前が大声だと、確実に格下に見えるぞ。


「何をおっしゃるやら。僕はここの人達に暴力を振るわれかけました。僕の安全は、この場所、ここにいるあの二人によって脅かされた。そしてあなた。彼らを庇うということは、彼らはやはりギルドの職員と見做して良いのですか?」


「ガキが知ったかして。何が王国法だ。奴らがどんな奴だか俺は分かっている。貴族様こそ俺達が卸す魔獣の素材が必要だろうが。ガキは余計な」


「びびりまくり」


「てめえ」


「だってそうでしょう。話の本筋を違えている。どこから魔獣の素材の話が出たのですか? 僕は、脅迫を行った二人を犯罪者として憲兵に引き渡して欲しいと願っているだけです。ギルドがする事は、犯罪者を憲兵に引き渡すことです。けれど彼等を庇い、彼等がギルド職員に準じると言い張るならば、彼等の行為が王国法第二三七条の組織的な市民への脅迫行為という文言にかかってくるけどどうしますか、という話だったはずですよ」


ギルドマスターはぎりっと奥歯を噛みしめた。

彼がすべきことは、俺に驚かせて悪かったと謝罪し、あの二人の用心棒にも謝罪させれば良いだけなんだよね。だけど彼は俺を子供と侮って、彼こそ俺を罵倒してしまった。貴族のようでも貴族の格好をしていなければ、暴力的な威圧で勘違いしたガキが丸め込めると思ったのが失敗だ。


プライドが邪魔で今から謝るって出来ないよね。

力が第一って考えの人を束ねるギルドでは尚更ね。

俺は優しいから逃げ道をあげるよ。


「そして、こんなことをしに僕はここに来たわけではない」


「ぼうず?」


「僕はシルバープレートの「黄昏の風」という恥ずかしいパーティ名の人達に用事があって来たのです」

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