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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第二部第一章 俺は帰って来た、過去のデュッセンドルフに

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夜空の下を酔っぱらいとグダグダ歩く

オズワルドの移動は常にベヘモットだと思っていたが、なんと徒歩だった。これから砦まで、徒歩で二時間かかる距離を歩くという。娯楽が酒や女にギャンブル程度の世界では、歩く事も娯楽であるというのだろうか。

俺はせっかくだから夜空を楽しもうと空を見上げる。


「雲で星も月も見えやしない。何が楽しくて二時間も」


「宿にしけこんで朝一の連絡馬車で戻るつもりだったからなあ」


「それで行こう。今日は町の宿に泊まって、明日の朝帰ろう。さあ町に戻ろう」


「あそこは連れ込み宿だけだぞ。他人のやり声聞いて寝れるか」


「あんたは本気でどうしようもない生活してたんだな」


「張り合いが無くなってねえ」


「俺がいないことがそんなに辛かったか!!」


俺にしては弾んだ声が出ていた。

仕方がないだろ、俺の存在を喜んでくれる奴には俺は弱いのだ。

ああ、前世のトラウマとは一生づきあいなのかなあ。


「お前こそ嬉しそうだな」


「過去に戻った甲斐があったからね」


「確かにな。お前の顔を見れて良かったよ。ガキもツレも同時に亡くせば、誰だって落ち込むもんだ。それも俺自身が消したんだからよ」


「ツレ?」


「わかってんだろ、お前は。あの竜を」


「凄すぎる火力だと思ってたけど、納得。竜でしたか、あなた」


「違うし?」


「だってツレって」


「いくらなんでも俺は人間で相棒(ツレ)作るわ。まあ、それも元だけどな。一緒に見習いやって俺は正騎士になったが、あいつはならなかった。冒険者の方が稼げるってな。あいつは冒険者ギルドに登録して、民間人として魔の森に潜っていた。それで俺が言いたいのは、俺と同じく翼竜に恩義があるはずのあいつが、翼竜をぶち殺していたってことだよ」


オズワルドが竜の体に食い込んでいた剣を抜き去った後、それを捨てるどころか腰帯に差して持ち帰った事を俺は思い出した。


「オズワルド、もしかして?」


「俺は元ツレだったそいつを殺していないよ。ただ、半年前にそいつの家が丸焼けになって、臨月の女房とあいつが消し炭になったことを思い出しただけだ」


「オズワルドの友達や翼竜を殺した奴らは、自分のした事が身に返ってアンデッド化したんだよね? ちゃんと悪事は返っているよねって、わあ」


俺の頭は乱暴に撫でられ、俺の頭も体もぐらぐら揺らされる。五歳から成長していると言っても、俺は平均よりも小柄な十四歳で、相手は長身の戦士様なのだ。


「乱暴!!」


「お前って不思議だよな」


「確かに過去に行けるって不思議だよね」


「そうじゃなくてさ。お前は本気であくどいことを考えられる癖に、最後の最後まで人や善を信じている。まるで堕落した人間を裁く天使様みたいだ」


「で、オズワルドがその天使を使役する神様だって?」


「ハハハ。そうかもな。じゃあ、手下の天使に、俺の全能ぶりをみせてやろう」


オズワルドは二本の指を口に当てた。

ピューイとトンビの鳴き声みたいな音が闇夜に響く。

その後は、後は?

オズワルドが口笛を吹いてすぐに、俺達は魔獣とエンカウントしていた。

鞍も何もつけていない裸のベヘモットさんだ。


「これぞ神の御業。野生のベヘモットにエンカウントしちゃったぜ?」


「違うな。優しいベヘモットさんが俺をお迎えにあがりました。だよ」


「従魔を放し飼いしてていいの? 職権乱用?」


「こいつは俺の大事な家族だよ。研修所が無くなってジェニーさんは居場所を失ったんだ。散々お世話になった者として、お身請けさせてもらったのさ」


「それはどうでもいいけど。放し飼いは迷惑じゃね? という話なんだけど」


「あの家の庭に放って飼っているんだ。餌や散歩やフンの始末はデニーに頼んでいる。放し飼い? こいつは飼い主の俺の後ろを歩いてただけさ。普通に飼い主と従魔の散歩だ。問題なかろう?」


「あんたが飼っていると言えないとか、デニーさん哀れとか、突っ込み多すぎて放棄だな。でもってジェニーさんの存在、俺はぜんぜん気がつかなかった」


「ハハハ、だろうな。この間抜け。さあつべこべ言わずに乗れ。砦に帰るぞ」


俺はオズワルドに抱えられ、ベヘモットに跨がせられた。

どうしてかオズワルドに向かい合わせ状態で!!


「鞍が無いし、お前を縛る縄も無い。だったら、わかるよな」


「わかんないよ!!だけど、もう!!」


叫びながらも俺はオズワルドに抱き着く。

その瞬間にベヘモットは駆け出した。

空を飛びようにして、ひゅーん、と、風を切って。

抱き着く相手は酒臭いし、後ろ向きなんで爽快感は全く無いけどな。


酔っぱらいは妙に上機嫌で大笑いしながら、ベヘモットを曲芸させるみたいに駆けさせる。俺はオズワルドにしっかりしがみ付くしかなかった。


俺はここに来る前に俺を抱き締めた父の体を思い出す。

一日二食食べることも難しく、常に領民のことを考えて働き続け、筋張るばかりになっていた父の体。

毎日の風呂なんて過去の話だ。


「父様の匂いを忘れたくない。頑張っていた父を忘れたくない」


「口で息をしろ。そうすりゃ俺の匂いなんかわからない」


「そうじゃなくて。不幸な世界でも耐えて俺達家族を支えていた父様が俺の父様だからさ、幸せになった世界の父様に会えなくていいんだよ。だから、だから、お願い。オズワルド。世界を救って!!」


「任せておけ。お前に新世界を与えてやるよ」

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