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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
最終章

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33/73

いまや魔獣騎士団は

「さあ、着きましたよ」


俺をデュッセンドルフ領まで連れて来てくれた男は、ベヘモットからひらりと降りると俺に手を差し出した。

栗色の髪に緑の瞳の童顔の彼は九年の年月が流れていても、やっぱり九年前と同じく童顔で年齢不詳の若者に見えた。


どこまでもイケメンか、滅べ。


俺は恭しく差し出されたその手を叩く、わけは無く、しっかりとエルマーの手を手掛かりにしてベヘモットから下ろして貰った。

我、自分のことはよくわかってます。


「ぶふ。偉そうな顔して、五歳の時と全然変わんないな。って、変か」


「いいえ。ただお尻は可愛く無くなったのでお婿にするのは遠慮してください」


エルマーの目は大きく見開かれ、ここ三日ほど俺に向けていた余所行き? らしき表情がバリバリ崩れた。


「え。うそ。覚えてたんだ!!どうしてもっと早く言わないの!!」


ってか、時々ぎゅっと辛そうに目元に皺を寄せてたのって、あの日のブリューと今の俺が違う子だって思ってたからか。ええ~知ってると思ってた。エルマーが俺のこと実は嫌ってた、とかじゃなくて良かった。


「二泊三日の野宿旅で、あなたに口説かれたらたまりませんからって、痛い!!」


俺はエルマーに頭を叩かれていた。

叩き方がオズワルドを思い出してキツイ。

じわっと涙が浮かんだのは、エルマーのせいだ。


「悪い」


「謝んないでください。エルマーさんじゃないみたい。煩くなくなったし」


「九年もあれば変わるよ。お前が変わって無くて嬉しいよ」


「ひどい。こんなに大きくなったのに」


「中身の話だ。だけど、外も変わって無いかあ」


「ひどいってわああ!!」


脇の下に手を入れられて持ち上げ抱っことは、十四歳の青年にするべきことではない。でも、エルマーに意味もなく持ち上げられた事で、魔の森でのほんの一瞬の思い出を思い出せた。

皆が揃っていて、俺もいる。


「脅え方も変わってない。けど、もうちょっと変わろうよ。軽すぎ」


エルマーは俺を下ろすとさっさと踵を変えて歩き出す。

俺はエルマーの後姿をひたすら追いかける。

エルマーは今や魔獣騎士団の副団長だ。

騎士団長はブルーノらしい。

バルトリューは魔獣騎士団でなく砦の守備大隊長をしている。


あの日一緒に竜渓谷に行ったクレメンスにアルバンやギード、そして砦で俺に笑いかけてくれたダフネとハルバートも、もうこの世にいないのだ。


クレメンスとアルバンは、八年前に起きた魔の森のスタンピードにて殉死した。ハッセルホフはスタンピードに生き残れたが、左腕を失っての引退だ。あとダフネとハルバートは、ケヴィンの死に際して王都に呼び出されたアルブレヒト・デュッセンドルフ辺境伯の護衛官任務で襲撃を受けて辺境伯と共に死亡。

そしてギードはケヴィンともに消し炭にされることを選んでの、忠義どころか心中死をしたと聞く。


俺が覚えている人達だけでも、こんなにもたくさん亡くなったのだ。

魔獣騎士団全体ではどれだけの悲劇があったのか。

煩いばかりだったエルマーが、静かな人に変わったのも仕方が無いだろう。


「ブリューは、いやフィール様か」


「ブリューで。あの日の孤児のブリューとして俺はここにいるんです」


エルマーの足は止まり、彼は俺に大きく振り返る。

そして彼はかさっぺたを無理矢理剥がされたみたいに顔を歪めたが、それでもこんなことは大したことは無いっていう皮肉そうな笑みを顔に作った。


「孤児だなんて言ってると、団長に自分の子にされるぞ」


「自分の子供作れって言い返しますよ」


「ほんっと生意気だ」


エルマーは鼻を鳴らす。

俺があの日消えた事について、エルマー達がオズワルドからどんな説明を受けたか知らないが、この砦の主、今は当主となったケヴィンの兄のヴァルター・デュッセンドルフから俺のスキルについて聞いてはいるだろう。


見習い騎士志望でしかない俺を迎えに、副団長であるエルマーに行かせたのだ。

それは俺が伯爵家三男だからでなく、未来を変えられるスキル持ちだから、絶対に死なせずに連れて来いってことである。


「で、ブリューはまず何したい?」


「俺を過去に飛ばせるぐらいの想いを持つ人に会いたい」

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