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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
最終章

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32/73

七年後、そして旅立ち

俺は十四歳になった。

二十一歳となった長兄は、学園を卒業した後も領地に帰らずに王都の館に留まって、父の代りに社交を担当している。

というか、王都の社交界が兄を手放したがらない、というか。


長兄は父のレプリカのようであったが、まだ母の遺伝子が頑張っていて、それはもう麗しい美青年に成長しているんだ。


十七歳の次兄は学園の最終学年の生徒だ。

彼もやはり母遺伝子のお陰と生来の快活さで兄とは違うイケに育っており、引きこもりの俺の耳には学園での華やかな兄の話がずんどこ入って来る。

同期の王子から側近に誘われているとかなんとか。すげえ。


そんな兄達はあんなにも憧れていた「若き英雄」について、今や一言だって語ることはしない。

ケヴィンの最期を王都で詳しく知ったことで、彼等は軽々しくケヴィンについて語れなくなったのだ。


ケヴィンは自分の身を盾にして数十人の生徒を学園外に逃したが、王都にアンデッドを放つことはできないと学園内に残ってアンデッドを討伐し続けたのだ。

そんな彼になぜか増援は無く、アンデッドから傷を受け力尽きた彼は、魔力暴走を起こして自爆したのである。


ケヴィンが自爆したせいで、学園があったそこは、今や大きなクレーターだけだ。


現在の王立学園は、とある高位貴族から寄贈されたタウンハウスを改造して使用している。以前よりかなり敷地が狭くなったので寮は男子寮だけとなり、王都内に自宅がある者は入寮を許されない。ついでに昔は一緒にあった騎士科がなくなり、騎士科志望の生徒は最初から騎士学校に進学だ。


兄達のどちらかは騎士学校に進学するかと思ったが、父も母も十七歳で散ったケヴィンの二の舞にさせたくはないと騎士学校進学は許さなかった。


騎士だからこそケヴィンは最後まで残り、王都の民を守るために命まで捧げた。


そんな素晴らしきケヴィンを貴族だったら、普通は見習えと親は言うべきなのだが、と俺は思う。けれど俺は大人の内緒話も聞いて知っている。


ケヴィン達は逃げ道を封鎖された上で、王宮魔術師団によって爆殺されたのだ。


まだアンデッドからの傷も負っていない状況であるというのに、今後のアンデッド化を踏まえての処分決定である。

学園生徒を守り逃がそうと頑張った騎士科生徒全員、まだ十代の青年達が、アンデッド化したら王都に住む自分達が危険だからという理由で虐殺されたのである。


ケヴィンを含む騎士科の生徒は殺される前に遺書を書かせられたが、ケヴィンは遺書の封筒と一緒に俺への返信も付けて渡していた。


だから、「待つな」だったのだ。


彼だったら死ぬ間際に俺の元に来れたかもしれないが、彼を殺す決定をした奴らが言うように自分がアンデッド化をした場合を考えて「最期の祝福」を使用しない決心をしたという事だ。


「では、父上、行ってまいります」


執務室の父は相変わらず大きいが、日々々小さくなっているように感じる。

それは俺が大きくなったからではない。

俺の決定を覆せないと、彼がここ数日思い悩んで眠れない状態だからだろう。


「どうしても行くのか?」


「行きます。俺一人ぐらいは騎士にならねば」


「だが、お前は」


父は耐えきれなかったのか、自分の目の前に立つ俺を抱き締めた。

父からの抱擁は懐かしいばかりだ。

父の体が平均男性よりもかなり大きいからか、抱き締められる感覚は幼い頃とそう変わらなかった。俺は幼い子供の頃と変わらずただ嬉しくて、ニヘラっと笑う。


父は心配なのだ。

脱力系の子供でしかない俺が軍隊生活など無理、と言いたいのであろう。


でもね、父さん大丈夫だって。気力がない人間って、実は命令されたルーティンワークに従う状況が一番楽だし、誰よりも乗り切れたりするんだよ。


まあ鬱化して、ぷつんと自死してしまう確率は、普通の人より多いかもだけど。


「お前は体も細いし小さいし。すぐに風邪をひくし」


「ですね。でも、大丈夫なんですよ」


俺こそ俺を心配する父親の体に腕を回してぎゅうと抱き締め返す。


騙して悪いけど、俺は騎士に何かならないから、本気で大丈夫なんだよ。


「デュッセンドルフ伯への推薦、ありがとうございました」


「俺の推薦なんか必要ないぐらいにあっちはお前を歓迎している。それだけデュッセンドルフは危険だってことじゃないのか?」


「ですね。でも、だからこそ、彼らはぎりぎりで、もしもを望んでいるのですよ」


「終わりってことか?」


「いいえ。起死回生です」


父は俺を自分からグイっと引き剥がし、まるで壊れたフクロウみたいな顔と動作で俺を見つめる。小首をくるくるくるっと回し、大きく目を見開いてホー? てな感じにってこと。


「何か?」


「いや、お前が行けば起死回生できるって、大きく出たなあ」


「父上の子供ですからね。僕は優秀です」


ぶはっ!!

父は吹き出し、俺の背中をバンバンと叩く。

笑い過ぎて涙目だ。

父さん失礼過ぎだよ……いや、可愛がっている末っ子の出立が辛いのだろう。

兄達と違って不出来で地味な俺なのにさ。


「行ってきます、父上」


大丈夫、騎士に何かなりません。

俺はケヴィンの死を今でも忘れられ無い人達の感情を揺さぶって、こんな世界でない未来にするために過去に戻りに行くのです。


イヤだよ。アンデッド化した生き物が跋扈してるせいで、運搬力も生産力も下がって満足にごはんが食べられなくなっている今のこんな世界は!!


絶対に過去に戻ってやる。

そして、前みたいに三食お腹いっぱい食べれて、だらだらできる世界にするのだ。

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