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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第五章

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こんにちはそしてさようなら

オズワルドは有言実行の男だった。

そして俺は、デュッセンドルフが誇る魔獣騎士団の恐怖を、この目に焼き付けることになった。


研修所を襲って来たワイバーンに対し、無傷で殲滅できるだけあるのだ。


彼らはワイバーンに情けなど一切かけなかった。

虐殺したのだ。


地べたを這い逃げるワイバーンを、騎乗するベヘモットを使って踏みつぶし、あるいは引き裂かせ、仕損じ損ねを己が剣か戦斧で切り刻む。

ある時は飛び掛かって来るワイバーンを長剣で切り捨て、逃げようと飛び立った個体には炎魔法で翼を焼いた。


聖なる竜の住む場所は一時間もしないうちに、ワイバーンの死体置き場と様変わりしてしまったのである。


「キシャアアアアアアアアアア」


地面を揺るがす魔物の声が渓谷に大きく響いた。

大型種が谷の異常に駆け付けたか。


俺は奴の叫びで起きた振動、体にも感じる小刻みな振動から、なんとなく答えが見えた気がした。

何度もオズワルドが口にしていた、彼の疑問の答えだ。


簡単に壁に穴を開ける。


俺も見たけど、叫び声だけで地面が陥没していた。


風魔法?

違う、そうじゃない。

ほら、ワイバーンの翼って単なる皮膜で、蝙蝠みたいじゃないか。


奴らに超音波が出せるって考えれば、奴らが地面に穴を開けて体を浮かせられた理由も説明できる。仮定でしかないけど、奴らは音波を投射して衝撃波を起こせる、なのかもしれないと。


俺達に大きな影が落ちる。

ただ、高速でもなく突っ込むだけならば、騎士も彼らを乗せたベヘモットも慌てるなどあるはずもない。難なく向かって来た巨大種をひらりと避けた。


「わあ!!」


ケヴィンがベヘモットから落ちた。

俺サイズのワイバーンがケヴィンに貼り付いている?

でもってオズワルドもアルバンもブルーノも、とにかく皆が剣や戦斧を閃かせたってことは、こっちにも小型種の飛び掛かりがあったのか。


「すごい。大型種は自分を囮にしたのか。意外と賢い。トカゲにしては」


「言ってやるな。やられたケヴィンが可哀想じゃないか」


「ああ、ケヴィンは!!」


ケヴィンは無事にベヘモットさんの背に戻っていた。

ケヴィンを乗せるベヘモットさんの口にはワイバーンの引きちぎられた翼が。

多分、そのワイバーンの破片はケヴィンに貼り付いた奴の一部だね。


「ケヴィン。そのまま引け。ギードはケヴィンの守りに。あとは大型種に集中!!」


人数がいればこの大型も大丈夫なの?

でも。


俺は先程思い付いた答えで、ぞわっと背筋が寒くなった。

背中などオズワルドの胸にぴったりとくっついているというのに。


だけど、思い出したんだ。

奴らが神殿の屋根を軽々と壊してきたことや、それに突き飛ばされたデュッホルトのぐにゃりとした遺体を。


大型のワイバーンは、神殿で俺達家族にして見せたようにして、身を起こして立ち上がった。けれどあの時と違い、俺達を喰おうとはしない。


あ、こいつは叫ぶつもりだ。


「オズワルド!!超音波がくる!!」


「超音波?」


「あいつは叫びで僕達の体の中をぐちゃぐちゃにする気だ! 反射させなきゃ! 鉄あるいは鉛で盾か何かない? あったらあいつの口の前に置いて!!」


それで防げるのか、そこまで俺は分かんないけど。

とにかく超音波を反射しなきゃ、無意味な行動でもしないよりかはまし。

コンロの火を消したかどうしても気になって、通勤途中に家に戻って確認した時あるだろ。結局意味のない行動で遅刻になって責められたけど、火を消していたって安心はあったよね。


「お願い。オズワルド!!」


「クレメンス。お前の鉄斧を投げろ。その後はギードと炎で鉄斧を板状に変形させろ。ケヴィン、エルマー。風魔法で鉄斧をワイバーンの顔の前に固定」


「俺の相棒。って、糞!!」

「急、急すぎ。でもって意味わかんないよ!」

「風魔法こんな使い方したの初めて!」


歴戦の相棒だろう鉄斧を溶かす羽目になってごめんなさい、クレメンス。

それと、クレメンスは仕方ないにしても、うるさいなエルマー。

あとケヴィン。


「キシャアアアアアアアアアア」


ワイバーンは叫び声を放つ。

だが奴の顔の真ん前には、奴の口先を遮る程度だが、ひしゃげて歪な四角だろうが平面はつるつる(短時間ですごい。反射ってことで頑張ったんだな)という鉄の板が浮いているのだ。まるで口の中の吐息を遮るマスクのようにして。


間に合った、と俺がホッとした瞬間、鉄板が大きな音を立てて地面に落ちた。

第二波が来たら、と俺は構えたが、ワイバーンはそのままぐしゃりと潰れた。

するとすぐに、ワイバーンへと動いた者がいた。もちろん、エルマー。彼は剣先でぐちゃぐちゃと、ワイバーンの死体を突ついている。


「うそ。鉄板で塞いだだけなのに」


「うわやっばい。頭部の中身がぐちゃぐちゃ? 頭部の穴という穴からなんかぐちょぐちょな中身が出てるよ。どうして?」


早速エルマーに追従しているのはケヴィン。

まだ十五歳だものね。

だが、お前が死んだら全てが終わるんだから自重しようか。


「で、何が起きたか説明してくれるか?」


俺の頭の上にオズワルドの顎が乗った。

俺は縛り付けられて逃げられないからって!!

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