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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章

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竜渓谷調査隊メンバー希望者

デュッセンドルフ砦にて俺の預かりは、領主夫人でも娘達でもなく、魔獣騎士団を率いるオズワルド団長様らしい。オズワルドはワイバーンの繁殖調査の上殲滅をしに、明日魔の森に発つ予定だぞ。


そんな危険極まる遠足に五歳児の俺なんか連れて行ったら、足手纏いの何ものでもないんじゃないの?


「未来が変わればお前が消えると言うならば、お前の消失でワイバーンの脅威を防げた、と確認できるだろ?」


砦の魔獣騎士団本部、それも団長室のソファに俺を放ると、オズワルドは俺が彼とこれから行動を共にする理由をさらっと告げた。


それ、ひでえ。


確かにそうだけど、あどけない五歳児に「お前を炭鉱のカナリア代わりにする」ってさらっと暴露すんな。わかっている俺でも、ずきっと今胸が痛んだよ。


「ちょっ、ちょっと団長!!それってひどくない?」


あ、ケヴィンはオズワルドを団長室で待っていたのか。

デュッセンドルフ辺境伯の息子でもケヴィンは魔獣騎士団の見習いの扱い、というかそれでオズワルドがケヴィンといる時が多いのかな。護衛的な感じで。


甘やかされている? とか思ったけれど、こうして俺を庇ってくれるんだ。

きっと末っ子な彼は小さな俺を弟と見做し、俺を守るためにオズワルドに意見までしてくれたのだろう。愛情を知っている人ほど優しいって本当だね。


「それって、ブリューはワイバーン討伐に連れて行くってことだろ? 俺は連れて行ってくれないくせに!!ひどいよ!!」


……。

うん、ケヴィンが俺のことよりも自分てとこ、知ってた。

包帯男もそうだったもんなあ。

俺は黄昏たが、ケヴィンに絡まれた男はケヴィンに呆れかえっただけのようだ。


「お前はまだ見習いだろうが」


「でも見習いの中で一番腕が立つって」


「領主の息子にダメだしするわけないじゃん」


二人がピタッと口を閉じ、俺をじっと見て来た。

あ、俺口に出しちゃってた。


「おま、お前」

「ぶはっハハハハ!!」


ケヴィンは顔を真っ赤にしてわなわなと震えている。

オズワルドは反りかえっての大笑い。


「ふはっ。ああ笑った。それでケヴィン、こいつの言う通りだ」


「俺は、俺の腕前は」


「そっちじゃなくてな。お前が領主の息子ってところ。お前を死なせたり大怪我をさせるわけにはいかないんだ。お前は考えたか? 未来のお前がこいつを送った先が、今、だ。こいつは六日後にことが起きると言っている。この地を超えて、ワイバーン達がこいつの住んでいた町を襲ったという事だ。その意味がわかるか?」


「……デュッセンドルフの砦が落ちた」


「そういうことだ。最悪を考えれば、お前以外全員死ぬ予定なのかもしれない。それで未来のお前はこの危機を今のお前に伝えろとフィールに頼んだ」


「……俺の行動を変えることが未来に繋がる、から?」


「ああ。俺はそう考えた。だから今回は俺はお前を連れて行かない。お前はここで砦を守るんだ」


俺もそこでハッとした。

たぶん、オズワルドはワイバーンに砦を落とされた場合も想定している。

オズワルドが対ワイバーン戦に辺境伯どころか領の正騎士団を除外したのは、犠牲は魔獣騎士団だけで良いとの決断だったのではなかろうか、と。魔獣騎士団の第一陣が破れても、温存した辺境伯の騎士達による二回戦が可能となるだろう。


慎重すぎて火力足りなくない? と思うが。


未来を知ったらオズワルドがこんな風に慎重になるから、ケヴィンは俺に「オズワルドに」でなく、「(ケヴィン)に伝えろ」と言ったのだろうか。

だとしたら、オズワルドのこの判断は悪手?

未来のケヴィンの願った事ではない?


「だけど、俺の目は」


「お前の目の有用性よりも、俺がお前のお守りで身動きが取れない方が問題だ」


ケヴィンは口惜しそうに唇をかむ。

確かにケヴィンを守ろうとオズワルドは身を挺する……あ。

そうだケヴィンは生きていた。

生きていたから俺をやり直しができる過去に送れたんだ。

たぶんどころか確実に、オズワルド達の誰かが身を挺しての死亡があったはず。


「僕はケヴィンが一緒の方が良いと思う」


二人はやっぱり口を閉じ、同じ動作で俺へと振り返る。

五歳児の呟きでしかないんだけど、注意を向けてもらえるのは嬉しい。

俺がそう考えるのは理由を聞いてもらわなきゃ、だ。

俺は右手を胸の前まで上げ、親指をゆっくりと折った。


「一つ、昨日ケヴィンは俺の目があればって言った。サーチ能力あるいは暗視能力があるなら、ワイバーンを探すのに必要だと思う」


「あと四つも理由があるなら全部言え。二つ目は?」


え、四つ?

俺は薬指と小指も立ったままだと気がつき、慌てて人差し指と中指が立っただけの状態にしてから右手を上げ直す。一つ消えてのあと二つです、もともと三つしか意見ありませんから。


ケヴィンの絶対生存の為に、ケヴィンはオズワルドのそばに置いた方が確実。


デュッセンドルフの砦が無事でも俺の家族が死んでしまった場合、俺がケヴィンを殺して俺の家族の生き返りを女神に望んでもらう。


この二つは口に出せやしないから、理由は五つではなく三つなのだ。

幼児なんで、小指と薬指を曲げた三を表す手の形は難しかったの。

それでごまかされて欲しいなあ。


オズワルドは鼻でフッと笑う。


「――了解。あと二つ、頼む」


「二つ目は、デュッセンドルフの人達を一か所にしない方がいいかなって」


「そうだな。お前の所は一家全滅だったな」


俺はオズワルドにこくりと頷き、最後の一本、中指を立てた手を裏返す。


「包帯男の炎は凄かった。ケヴィンの炎であいつら全部焼き殺したい」


「ハハハ。このガキは。わかった、ケヴィン、同行を許そう」


ケヴィンは喜ぶどころかそろそろと右手を上げた。

頭などがっくり下げた姿で。


「ケヴィン?」


「辞退して良いですか。俺、こいつが望むような攻撃魔法使えない」


「「チッ」」


俺とオズワルドは同時に舌打ちをした。


「あの包帯男よりも使えない」

「お前、若いんだから暴発しようや」

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