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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章

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辺境伯とオズワルドの内緒話

2025/12/13 俺含めて5名→6名に修正しました。連れて行く部下が5名なんです。

2025/12/30 オズワルドと辺境伯が内緒話したかった理由を「ワイバーンが研修所を襲った理由」で簡単に説明した所を、もう少し詳しくしました。

包帯男がケヴィンの未来だった、という話はケヴィンの家族の心を抉った。

そしてオズワルドは、彼らを更なる恐怖に落とす報告をしたいらしい。


辺境伯とオズワルドが、包帯男のケヴィンが「昔日の赤」という歌を俺に預けたことについて笑い話にしてごまかした理由は分かっている。

たぶん、包帯男のケヴィンが俺をこの時間枠に送ったのは、オズワルド達が研修所で死んだ場合の出来事が「ケヴィン以外の辺境伯家の全滅」も防いで欲しいという願いじゃないのか?


だって、研修所でケヴィンが生き残っていたならば、「愛している」なんていつだって言えたはずなのだ。よっぽどこじらせていようが、生還して家族の無事を知ったら、抱き合って互いの命があることを喜び合うはずだ。


ということでオズワルドは辺境伯に人払いを頼んだ。

執務室には自分と辺境伯だけにしてくれと伝えたのだ。

もちろんケヴィンは残りたそうな顔をしたが、父親から信任厚い長兄だって部屋から追いだされるのだ。そんな兄に背を押されたら、ケヴィンはしぶしぶながらも出て行くしかない。


俺?


辺境伯夫人は娘達と外に出る時に俺も連れて行こうとしたが、オズワルドが丁寧に断ったので俺はオズワルドの膝の上だよ。


お子様は大人の難しい話は分からないから大丈夫って、オズワルドさんは何を言ってくれてるのかな。

わかるよ? 中の人は成人だから。

俺が大人の話がわかるとわかった上で、オズワルドが俺をここに残したのだろうことだってわかるよ。


でもそれはどうしてなのか、そこは俺でもわからない。

だから俺は静かにして、大人の話を聞くしかなくなった。

それでもって、辺境伯の家族が消えた途端に、オズワルドの辺境伯に対する口調はとってもおざなり? 敬語とか消えてしまったことには驚いた。


オズワルドは辺境伯のファーストネームのアルブレヒトどころかアルと呼び、アルブレヒトさんはオズワルドのことをグラナータと。

…………こっちは同じか。


「アル。昨夜研修所に襲い掛かって来たワイバーンは六頭。ベヘモットをぶら下げたまま高度を上げられる翼力を持った奴はいなかった。奴らには百年前の記録に残っていたぐらいの、でかい個体がいるはずだ」


「ちょっと待て、グラナータ。ワイバーンが絶滅していなかったどころか、魔の森から溢れるほどに繁殖している、それも変異種ありと、そう言いたいのか?」


「その通り。明日魔獣騎士(うち)団から調査隊を出して魔の森の竜渓谷に行く」


「調査隊って。この状況で魔獣騎士団が遠足だと? ここの守りはどうする? 次は確実にここが蹂躙されるんじゃないのか? 未来のケヴィンからの伝言では」


「俺が死んでいればね。昨夜のあれは斥候ですよ。しかし、試し襲撃は失敗した。とりあえず今夜は砦に俺はいる。準備もある。だが、明日以降は? ワイバーンの繁殖状況が掴めなきゃ、そのうちに虚を突かれて全滅する」


「わかった。くそ。お前等の戦力が抜けるのは――」

「行くのは俺含めて六名だけ。副団長のハッセルホフに団を任せておけば大丈夫だ。あいつは防衛戦にこそ生きるからな。それから、飛翔型魔獣を想定した武器のアレは昼過ぎまでに設置完了するはずだ。砲台じゃ真上の敵を叩けないだろ」


「おい、アレって」


「むろん、アパッチオの(いかずち)だ。独断で引き出させてもらった」


辺境伯は「アパッチオの雷」の所で、ワイバーンが繁殖していた報告の時よりも、それはもう嫌そうな顔をした。そんなにすごい武器なのだろうか。


「で、私の許可なく勝手に設置されたアレに、私が使用許可を出さねばいけないのだな。網状の電撃魔法を投擲するが、それを受けて落ちて来た魔獣ごと周囲も感電死してしまう、あのふざけた武器の使用許可を」


「緊急事態だ。観念しろ」


「くそが。許可する。どうせ感電死するのもお前の部下なんだしな」


「俺の部下は足が速いから大丈夫。アパッチオに巻き込まれる心配は、閣下指揮下の砦の真っ当な騎士の方だな」


「わかった。デュッセンドルフ騎士団は領民の保護と避難にあてる。今回の対ワイバーン戦については、魔獣騎士団に全権を委ねる。お前等だけ死んで来い」


「ありがとう」


辺境伯とオズワルドの話合いはそこで終わりだ。

オズワルドは俺を腕に抱くと、意気揚々という風に執務室を出た。


「どうしてワイバーンが竜渓谷にいるって言い切れるの?」


「竜渓谷には、名前通り小さな翼竜が住んでいたからかな」


「翼竜とワイバーンは仲良しなの?」


「飛翔方法が似ているから、あそこかなって奴だよ。過去に書かれたワイバーンの記録ではね、ワイバーンは飛翔するために、かなりの距離を滑走するか高所から飛び下りて風に乗るしかないそうだ。よって、デュッセンドルフにほど近く、飛び下りるには丁度良い崖があり、崖下から上昇気流が噴き出している場所と言えばで考えると、竜渓谷しかない。それだけだ」


「でも、翼竜がいるんでしょう」


「力を失ってそんな大きさになってしまった、鹿サイズの小型の竜がね。彼のお陰であそこだけは魔を退ける聖なる場所として残っていたのにねえ」


魔を退ける場所に魔獣でしかないワイバーンが繁殖している?

俺は疑問を抱き、けれどすぐにオズワルドの言葉が過去形だったと気がついた。

彼は竜渓谷にいた翼竜について過去形でしか喋っていないのに、翼竜について大きさどころか性別だってわかるぐらいにとても詳しい。


「あなたは渓谷に住んでいた翼竜さんとお友達だった、の?」


「かつては神の使いとされた存在と友人というのはおこがましいな。ただね、魔の森で迷った者は竜渓谷を避難所にさせてもらっていたよ。あそこだけは、魔獣が絶対に入って来ない、魔の森に置けるオアシスだったんだ」


「そんな。聖なる場所なのに。どうして魔獣のワイバーンが入れたの」


「寂しかったのかもね。ワイバーンは竜じゃ無いが、見た目で言えば竜に近い。もしかしてワイバーンの卵を竜の卵と思い違えたのかもしれない」


「それじゃ仕方ない、ね」


「ああ。仕方がない。だが、そんなあいつの気持を台無しにしてあいつをぶち殺しやがったクソトカゲは、あいつに恩がある俺達が殲滅してやらなきゃなあ」


俺はオズワルドの腕の中でガクガク震えた。

凄みのある笑みを浮かべたオズワルドが、怖すぎて。

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