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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第三章

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恐怖の夜は明けて

俺は光を感じて目を開けた。

だけど何かを見る前にすぐに目を閉じた。


俺はもう誰にも抱かれていない。

硬い床の上に転がっているだけなのだ。


それはあの時のようにワイバーンによってみんな死んでしまったからじゃないか、と、俺はとても心配になったのである。


「起きろ、ブリュー。もう大丈夫だ」


オズワルドさんの声!!

俺はパッと目を開けた。


だけどワイバーンが羽を広げた影が見え、俺はぎゅっと目を閉じる。


さっきのは幻聴だ。

酷いよ、どうせならば、意識が無い時に喰われて殺されたかった。


「おい。もう大丈夫だって。起きろ。適当に持ち運ばれて適当に転がされても起きない図太さがあるくせに、何を今さら繊細なふりをしているんだ」


オズワルドさんったらひどい、てか幻聴じゃなかった?

俺は恐る恐る目を開ける。


毛布を広げて持っているオズワルドさんが笑っていた。


襲い掛かってきたと錯覚したワイバーンに見えた影は、俺の為に毛布を広げているオズワルドが作った影でしかなかったようだ。

俺はホッと安心して自分の胸を両手で抑える。

そんな俺をオズワルドが毛布で包み、そのまま俺を抱き上げた。


俺の両腕が毛布で拘束されちゃいましたが、オズワルドさん?

あ、彼は抱きしめた俺の肩に顔を埋めた。


彼は少し震えている?


そこで俺は恐ろしい事実がある気がした。

もしかして、生き残ったのはあなただけ?


「ふふふ」


ふふふ?

泣きたくなるぐらいに酷い状況なの?


「オズワルド、さん」


「ふふふ」


「あの」


がばっと顔を上げた彼の顔は、狂気を感じるぐらいの笑顔だ。

それで?

彼は今度はミノムシ状態の俺を振り回し始めたではないか。


「きゃあああ!!きゃああああ!!」


「ハハハ。喜べ。こんちくしょう、天使め。ぜんぶお前のお陰だよ」


え?


「お前のお陰で誰も死ななかった。お前がワイバーンの襲来を教えてくれなきゃ、ここにいる俺達は全員が死んでいたかもな」


「誰も死んでいないの? ほんと? ほんとうに?」


ああ、良かったと、俺も嬉しさいっぱいになった。


なったけれど、俺はどこまでもマイナス思考の人間だ。

俺がまだここにいるのは、ワイバーンによるバルバドゥス領襲撃の可能性が消えていないからだ。普通未来が変わったら、今の俺の存在は消えるはずだ。

あるいは、この世界に俺が二人になっちゃった?


「あの、今日は何日でしょうか?」


「ユースティスの第三週の六日だ」


この世界は六人の女神によって世界が作られているという考えから、季節を大雑把に六人の女神に振り分けている。ユースティスの担当は9月から10月に当たる。だからか、日にちを言う時は二か月分の担当女神の名と八週の中の何日だ。

ああ、前世のカレンダーを教えてやりたい。


「あ、そうだ。今は建国何年目?」


「346年だな」


同年!!


オズワルドの答えで、俺が祝福を受けたユースティスの第四週の五日まであと六日もあること分かった。

俺が一週間前の世界に送られていたってことも。


昨夜はワイバーンを撃退できた。

でも、俺の祝福の日に襲来したワイバーンの群れはまだいるはず。


だって俺は消えていない!!


俺は俺を抱き締めるオズワルドをじっと見つめる。


「どうした?」


「お願いします」


「うん?」


「ワイバーンをせん滅してください。あと六日以内に。ワイバーンを殺して!!お父様とお母様とお兄ちゃま達の為に、ワイバーンを残らず殺して!!」


俺はぎゅっとオズワルドに抱きしめられた。

そして彼によしよしという風に背中を撫でられた。

お父さんの手を思い出す、しっかりとした手による慰めだった。


でも、慰められて終わりじゃダメなんだ。

ワイバーンをあと六日以内に殲滅しないと、俺は大事な世界を失ってしまう。

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