人生は自分勝手に楽しむべしが家訓です
俺の頭の中では、幼い頃に観た特撮ドラマの主題歌が流れている。
鼻歌も歌ってるかも。
俺は楽しい気分で自分のお部屋でお絵描きをしていた。
カミラさんにお祝いは言ったし、赤ちゃんも見たし、デボラさんから「ヴァルターを叱っておくわ」って言質も取ったし、でも家に帰りたいからヴァルターを助けて恩を着せたし。俺は自由だ。
デボラさんから自分こそ逃げたいヴァルターは、ちゃんと俺をお家に送ってくれたよ。オズワルドが家にいないうちに、急いで。「この臆病者」と罵ってあげた。お約束だし。
それで家に帰って来て、あの晩に寝られなかった分寝まくって、今日はお昼頃まで寝てたから頭はしっかり回っている。よく寝たから気分は最高。
「さあて、すごい武器を考えるぞ」
あの夜はあれからユーグにバレ領の魔獣について聞いたが、まんまパニック映画などに登場しそうな面々であったのだ。海って素敵。
まず、フカ。
外見と習性からサメだな。けれど小型イルカぐらいの大きさで群れで襲い掛かるとこは、魔の森で厄介だと言われているブラッディウルフに近いものがある。
あいつらと同じ、一滴の血の匂いで集まって来てしまうとこも同じ。
次に教えてもらったのが、陸地に上がってこようとする魔獣筆頭のクラーケン。
いたよ、クラーケン。思わずうっひょと両拳をあげて、ユーグに白い目で見られたほどだ。ヴァルターは俺にハーブティがぶ飲みさせてきたし。酔ってないよ。
あと、マーマン。
こっちは海のゴブリンだが、ゴブリンと違ってメスばかりだ。彼女達は繁殖に雄を攫いに来るので、女子供は惨殺される。そこもゴブリンと反対。そんなマーマンが竜人達の恐怖なのは、全身に魚の鱗がある半魚人の姿がバレ領の竜人達のトラウマを刺激するらしい。確かに、「やーい鱗人間。マーマンと結婚しちまえ」と子供時代に罵られたら、くるね。
幼いユーグを罵ったやつ、俺が殺していいですか、だ。
それから小型魔獣として、トビウオ系のエグゾセに毒魚のバラクーダ。習性も名前も前世の魚と一緒で笑えるが、攻撃性は笑えないほどやっぱ魔獣さん。エグゾセは人の体なんて簡単に穴を開けるし、バラクーダは海で出会った瞬間にぱっくりと噛みつかれる。フカに胴体喰われても、頭だけでフカを齧ってたなんて逸話もあるそうだ。フカよりも怖いんじゃないかと俺は思うが、一匹で回遊しているのでフカよりも負荷は無いそうだ。ユーグ、冗談言えるようになったか。
で、まず俺達が考えねばいけないのは、フカ対策だ。
ダンジョン周辺海域をなわばりにしている大きな群れがあるので、まずこいつらの数を減らさねばユーグがダンジョン入り口に辿り着けないのだ。
サメ映画でサメにどう戦うか頭を悩ます一場面そのまんまだな。
本当に楽しい。
「ユーグがダンジョンに到達した後、ダンジョン内に水が入っていなかったら俺も潜るからな」
「うわっ」
いつの間に真後ろに!!
俺が書いていた「すごいぶき」の絵を取り上げた男は、俺からペンを取り上げて瞬時に思い付いたダメ出しを書き入れてから俺に戻した。
「もちろん、海中戦もするぞ。フカという奴をせん滅するのは楽しそうだ」
俺がフカ対策で考えていたすごい武器は、前世で捕鯨砲と呼ばれてた火薬で銛を発射する機械だった。固定式の。
そこにオズワルドは「持ち運べるタイプにしろ」と全否定してくれたのだ。
俺が捕鯨砲を知っているのは、十代の頃にしたゲームに登場してたランス系武器がそれをモデルにしたものであったからだ。
火薬で銃みたいに銛を撃ち出し、銛が魔物に刺さると内蔵されていた銛がさらにめり込み体内で爆発するって、かなりの凶悪系で……エフェクトが派手で好きだった。子供は爆発する物大好き。
そう、俺がゲームで好きだった捕鯨砲も、オズワルドの注文通り、グレネードランチャーみたいに大型で持ち運べる武器で、恰好良かったさ。
けど現実だよ。
暴発したらどうするの。
だから俺は固定式に拘った。前世の船に取りつけて砲台みたいに使用してた捕鯨砲にするべきだと考えた。するべきだ。使用者の安全性が高い方を俺は選びたい。
「却下です。フカに刺さる威力で撃ち出さなきゃで火薬量が凄いんですから。暴発を考えたら固定式です」
「そしたらお前も撃ち出せるもんな。だけどな、俺には機械の威力なんざあんまり必要ない。殺傷威力なんぞ俺が付加できるからな」
確かに。クルセイダーの弾に魔法を乗せて、威力を大きいものして撃ち出したな。
だけどオズワルドの本来の攻撃魔法の威力と比べれば、蟻のおしっこだ。
無意味だと思う。
「魔法で威力追及だったら、銛を撃ち出す機械こそいらなくねえ?」
「人生には遊びは必要だぞ」
「あんたは遊びばっかで時々人生じゃないか!!」
「人生楽しんだ奴勝ちって、お前こその自論じゃないのか。ヴァルターはお前に揶揄われ唆され乗せられたせいで、かなり話が分かる奴になっているじゃないか」
「そのせいで逃げ足が速い男になってしまいましたけどね」
「ハハハ。ばあか、だよな。バレのあれに、妻子を頼む、とお願いされたら、わかったとしか言えないからと逃げまくりやがって。まだまだ青いな」
「オズワルドは分かってたんだ。だったら、オズワルドもユーグを慰めてあげればいいじゃないか」
「無理。あれとは話が合いそうも無いからな。無理だよ。あれは、まだまだ希望いっぱいだ。愛した女を抱かずに逃がせばいいものを、愛した女に流されて子供まで作ってしまう。それでも身を引かなきゃって実家に帰したくせに、子供に鱗が、自分が死ぬ気だからと、理由作ってノコノコ会いに来る。俺にはいい加減に腹を括れとしかあれに言えねえな」
「わかる。その言葉を勘違いして海の藻屑になるユーグの姿が」
「だろ。それで役に立ってあげられなかった俺は、俺に出来ることであれを助けてやりたくてなあ」
「うそだあ。魔獣大戦ウキウキな顔しかしていない」
「俺の攻撃力は何のためにある!!」
「あなたが人生を楽しむためですよ!!」
あああ考えたら楽しそうだよ。
俺が子供の時に遊んだゲームを、オズワルドはリアルでやれちゃうのだ。
俺だってファイヤボール撃ち出したかった!
確かに固定砲台ならば、俺もフカに銛撃てるって考えた時もありました。
「くっそ。俺が考えた凄い砲台全否定か。けど、ただの銛発射機だと、やっぱり、今回はクルセイダーに改良を加えた水中銃特化型で済んでしまう。改良で済むんだったら、僕の考えたすごい武器は、ホランドに投げてお終いじゃないか!!」
「よし。そういうことであとはホランドに投げろ、こっちはもうお終い」
俺は首根っこを掴まれて机から引き出された。
どこに連れて行こうとするのか。
「俺は腹が減っているんだよ。なんだっけ? フライパンピザ? どうして今まで俺は喰えなかったんだろうな。俺はそいつを喰うために帰って来たんだ。作ってくれ。あいつらが喰ったよりもいい奴を」
「いや、だってそれは作らなかったんじゃなくて作れなかったからだよ。だってアンチョビが無かったから」
「そのアンチョビとやらはユーグが持って来た土産か。砦に行くぞ」
オズワルドは俺に思う所があり過ぎていたようだ。
というか「自分だけピザ食べてない」は、彼にとっては重要案件らしい。




