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第九話 刀も対決するので


「だーっはっはっ!そうかそうか!

堅いこと言わんと、気楽にやろうぜや!飲みや飲みや!」



「だーっはっはっ!あんた話分かるねぇ!

ほら、もう一度乾杯しようぜ!」



亀山社中の宴に乗り込んでしまった太助とかに吉でしたが

隣りに座っていた者と一悶着してる間に、頭に見つかり

なんと、その頭が隣に来て一緒に太助と飲み始めてしまいました。

なんだか、あっという間に意気投合してしまったようです。



『主よ!自分ばかり呑んでおらんで我にも新しい酒を注がんか!』



かに吉も完全に出来上がっていました。

目が太助と同じようにすわっています。



今日は無礼講ということもあり、周りにいる何十人という武士達も

楽しそうに酒を酌み交わしております。あちこちから笑い声が聞こえ、

はたまた歌声までが聞こえてきます。

仲居さん達は先程からせわしなく行き来しており、お酒の入った徳利を

下げてはまた、新しい徳利を持ってきます。


酔いがすっかり回り、膳をひっくり返してしまう者もおり、どっと笑い声が

湧きたちます。仲居さんが笑顔を引きつらせながら、せっせと片づけを

しているのが何とも健気です。


酔っ払いはいつの世も変わらぬものでございます。



「けんど、あのオランダ通詞の知り合いっちゅうたぁのぅ。

あの男、えらい堅物っち聞いちゅうけんど……

ほんまに今日来ちゅうがか?」



「ああ。いつもいつもスカしたやつでよー。

まあ、俺のマブダチってやつ?

なんだけどな。

もっとユーモアを理解すれば言う事ねーんだけどなー」



「なんちゃ言いゆうか分からんけんど、堅いことはなしじゃ!

飲みや飲みや!」



「あんたさっきからそればっかりだな!

話が分かるやつは好きだけどな!」



「「だーっはっはっ!」」



大盛り上がりの太助と頭でしたが、いつの間にかひとまず落ち着いた様子。



「ところでお前さん、名は何てぇんだい?俺は太助だ!」



何気なく太助が頭に名前を聞いてみます。



「おお、わしは坂――

……うぉっほん!

わしは梅太郎、才谷 梅太郎じゃき!よろしゅう頼むぜよ!」



「おお、梅太郎か。何か変わった名前だなぁ」



『……そうかの?まあ、何かしっくりこない名前な気はするが……』



少しだけ慌てた様子の梅太郎が、話に入ります。



「ま、まあ、えいやんか!ところで太助、おまん異能っちゅうが

持っちゅうか?

しゃべる刀見るんは久しぶりじゃき。

その刀、なかなかのモンやねぇ」



『わーっはっはっ!いやいやお主、なかなか見る目があるのう!』



太助の元に来て初めて誉められたかに吉は、いきなり上機嫌です。



『梅太郎よ、お主もなかなかの得物を持っておるではないか。

しっかりと手入れも行き届いておるようじゃ。

どこかの誰かと違ってのぅ……』



横から太助の「うるせぇ!」という声が聞こえますが、

そこは置いておき、



『時に、お主はこの刀と会話はせぬのか?』



「ん?ああ……残念ながら、わしには異能はなさそうでのぅ。

もし叶うんならこいつ――陸奥守吉行と、いっぺん語り合うて

みたかったけんど……

まあ、無理なもんは無理やき!

だーっはっはっはっ!」



そこへ、文句を言いつつも全く遠慮せずに日本酒を水のように吞み、

酔いが再びいい感じに回ってきた太助が口を挟んできます。



「なんだなんだ、

自分でしゃべれねーなら他の奴らにしゃべらせりゃいいじゃねーか」



太助は、周りをぐるりと挑発的な目つきで見回しながら続けます。



「それともなんだ?これだけ雁首揃えてて、だーれも異能力持ちが

いねーってか?しゃーねぇなぁ。

俺の住んでる長屋じゃ近所のばばぁでも包丁としゃべってるってのによ!

だーっはっはっはっ!」



びっくりしたように目を見開き、かに吉が慌てて止めに入ります。



『こ、これ主よ!主はこの人数にケンカを吹っかける気か!?

命が幾つあっても足りんぞ!』



しかしながら少し、かに吉の制止は遅かったようで……

今まで騒がしかった宴の場が一気にしん、としてしまいました。

酒も入っていたせいか、武士達みんなの目が段々と殺気を帯びてきます。



「貴様……言わせておけば……」



「異能の力なぞ我らの目的には露ほども関らんわ!」



早速周りの武士達からブーイングの嵐が巻き起こりました。



「りょ――梅太郎殿!こやつ、どこぞの者ですか!?

我らを馬鹿にしに来おった不届き者に違いありませぬぞ!」



これにはさすがの梅太郎も慌てだし……



「ま、まぁまぁまぁまぁ、落ち着きや皆の衆。

今宵は宴じゃき、まぁ一杯やりながら和ろうや!」



しかし、武士達の怒気は収まる気配は無く、



「武士たる者、素浪人風情に馬鹿にされたとあっては

沽券に関わります!このままでは済まされませぬぞ!」



あちこちから「そうだそうだ!」の大合唱が聞こえてきます。

自業自得とはいえ、このピンチを太助はどう切り抜けるのでしょうか。



「あーもう!うるせーな!刀で勝負すりゃいいんだろ!刀でよ!」



『主よ!たわけたことを抜かすでない!こんな席で血を見たいと申すか!』



「あ?んなわけねーだろ。俺ぁ刀で勝負って言っただけだぜ?」



太助は、かに吉を持ったまま、ふらふらと部屋の上座の右端の方へ

歩いていきました。

武士達の睨みつけるような視線が太助に集まります。

当の太助はそんな視線を全く意に介する事なく……


太助は部屋の右にある立派な柱の前に来ると、梅太郎の方へ向き直り、

ニヤリと不敵な笑みを浮かべます。



「さっきから気になってたんだがよ。ここにいい柱があるじゃねーか……

梅太郎!俺とこいつで勝負だ!」



『ま、ま、待つんじゃ主よ!その柱、まさか……斬る気では――』



梅太郎は両手をポンっと打ち、



「乗った!そういうことなら、わしが相手になっちゃろうや!」



『ええぇぇぇぇぇ!』



「おお!いいぞ!やれやれ!」



「坂……じゃなくて才谷殿!いつものように見事な太刀筋、見せて下され!」



一斉に周りの武士から声援が飛び交い始めました。

果たして太助とかに吉はこの後どうなってしまうのでしょうか。



というか……



勝手に店の物を斬るなど、あり得ないお話ではございますが……




――今回のお話はここまで。

おあとがよろしいかどうかは、あなた様次第でござ候。

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