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第二話 刀を押し付けられたので


番所で臨時の町司バイトの話を聞いて、長屋に帰ってきた太助とおみつ。


太助は腹でも壊したような、何やらずーっと虫の居所が悪そうな

顔をしております。



「あーあ。結局全部あいつのお膳立てだったってことかい。

全く……面白くねーったらありゃしねぇ」



ぶつぶつ文句を言いながら帰りがけに買った三百文と、

ちょいと値の張る清酒をぐいっと呷り始めます。



「もぅ……すぐこれなんだから……」



なんだかんだ言いながら、これも帰りがけに買った南蛮漬けと

からすみを甲斐甲斐しく太助のためにちゃぶ台にセットするおみつ。

なんとなく幸せそうなのは気のせいでしょうか。



「大体、おみつも知ってたんだろ。全部耕牛の野郎に仕組まれてるって」



おみつは南蛮漬けを一口つまみながら返答します。



「私知らなかったよ……


町でなじみの町司さんとばったり会って……そこでお話聞いただけだもん!

それに、今の話がその通りだったら、怒るとこじゃないでしょ?


太助さん最近全然お仕事なくて困ってたじゃない。耕牛さんに感謝しなきゃ」



「はいはい、そりゃ悪ぅござんした。

……ったく耕牛の世話焼き野郎め……


大体な、一介の素浪人が町司のバイトなんか出来たり、いきなり帯刀許可なんて

もらえる訳ねーんだよ。まぁ十手なんか、もっと持たせてくれるわけねーけどな。

しかし、刀なんか持ってたら辻斬りに狙われちまうんだろ……?」



「あ、刀で思い出した!ちょっと待ってて!」



ぱたぱたと、おみつは出ていきます。

なにか急に思い出した様子。



少しして、おみつは古びた刀を抱えて戻って来ました。



「はい、これ!」



「なんだこりゃ……」



おみつが持ってきた刀を太助は訝しげに眺めます。

刃の長さは三尺と少し。

大太刀と呼ぶにはやや中途半端、でも素人が振るうには骨が折れそうな代物。

それでいて──どこからどう見ても手入れの行き届いていない、

埃まみれの正真正銘“おんぼろ刀”です。



「おっかさんがね、この前の畳替えの駄賃代わりに太助さんに渡しといてー

って言ってたの」



「はあ!?こんなぼろ刀、どこも引き取ってくれねーだろ!

一文にもなりゃしねぇ……返品だ!返品!」



「えー、こんなの家にいつまでも置いてたら、おっかさんに怒られちゃうもん。

ということで──これあげるね!」



言うが早いか、おみつは太助の家から逃げるように出て行きました。



「あ、おいこら!待ておみつ!」



一人と一振り。

ぽつんと取り残された太助は、ため息まじりに仕方なく刀を鞘から抜いてみます。



「こんなぼろ刀どうしろってんだよ全く……これも耕牛の差し金かぁ?

それに俺はもう刀は──」



太助が鞘からそっと刀を抜いた、その時でした。



『さっきから黙って聞いておれば……誰がぼろ刀じゃ!』



「……あーあ。やっぱこうなるのか……

つーか、お前はどこからどう見てもぼろ刀だろうが!」



そう──

実は、太助も刀としゃべれる【異能力者】だったのです。




――今回のお話はここまで。

おあとがよろしいかどうかは、あなた様次第でござ候。


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