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第十話 刀も逃げるので


「よし、まずはわしからいくぜよ!」



周りの武士達の熱い声援を背に梅太郎が柱の前に立ちます。



「負けないで下さい坂……じゃなくて才谷さん!」



「そんな柱、一刀両断だ!りょ……じゃなくて梅太郎!」



酒も入り、特にこれといった余興もなかったため、本日一番の大盛り上がりを

見せる見世物になってしまったこの対決であります。



「陸奥守吉行、俺に力を貸してくれ!」



梅太郎は一声叫び、気合を入れると、スッと腰を落とし、居合抜きの構えを

取りました。

構えに入ったところで盛り上がりは最高潮、誰もが梅太郎の勝利を信じて

疑っておりません。



その頃、かに吉と太助は少し離れた場所で胡坐をかき、この様子をぼーっと

眺めておりました。



「なんか、えらい盛り上がりだな」



『元はといえば主のせいではないか』



「いやーまさかこんなに盛り上がるなんて、俺としても嬉しいよ」



『……残念ながら主を応援する者は、ここにはおらん』



「え、そうなの?」



『当たり前じゃ!主はただの悪役じゃ!』



「なんだよ、せっかく盛り上げてやったのに」



『主は、ここの武士に反感を買っただけじゃ!

危うく斬られるところじゃったというに……』



「まあ、その時はさっさと逃げるつもりだったけどなー」



かに吉は溜息をつきながら、割と重要な事を太助に聞きます。



『全く……

ところで主よ、梅太郎に本当に勝てるのか?主には気付けないと思うが……

あやつ、ただ者ではないぞ』



「気付けねぇってどういう事だよ!

……まあ、見てりゃ分かるよ。ありゃあ、北辰一刀流じゃねーかな。

全く、人畜無害そうな面してるくせに、とんでもねぇ狸野郎だぜ」



『どうするんじゃ?いくら主でも、あの柱を斬り落とすのは無理じゃろ』



「まともに斬ってたらな。

つーか、梅太郎よりもいい斬撃入れときゃ勝ちだろ」



『まさか……』



太助はまたニヤリと、まるで悪人のようにほくそ笑みました。



「異能持ちのすごさを分からせてやりゃあいいんだよ」



これでも太助は、このお話の主人公でございます。



――



「うおぉぉぉぉ!」



「もう1回いったれ!」



梅太郎は3回ほど柱を斬りつけましたが……

やはり酔いがまわっているせいか、表面に傷がついただけのようです。



「いやぁ、こりゃあ固い柱ぜよ。さすがは花月楼じゃのう」



梅太郎はその場に座ってしまいました。


そして……

その背後から、ヌッと現れた影が――


太助が来ました。



「なんだ梅太郎、もうギブか?それじゃ俺様の番だな!」



「いやいや、なかなか固い柱ぜよ。あんまり無理はせん方がえい、太助よ」



太助が柱の前に立つと、周りの武士達の声援がブーイングに

がらっと変わりました。



「さっさと斬ってみやがれ!」



「梅太郎さんより斬れなかったら、どうなるか分かってんだろうな!」



相変わらず太助は、ブーイングを浴びてもどこ吹く風といった様子。



「一撃で決めたら俺の勝ちって事でいいな!?」



なんだかもったいぶっている太助に、武士達もイライラが募ります。



「さっさと斬れ!」



「お前じゃ傷一つつけられないだろ!」



ブーイングを背に、太助は満を持して上段の構えを取ります。

ちなみに梅太郎が柱の左側、太助は柱の右側から斬りつけます。



『主よ……本当にやるのか?」



「ったりめーよ!行くぞかに吉!」



太助が”気”をかに吉に送り込みます



『酔いのせいか……いつもより”気”の練り方が甘いのぅ」



「全力でやったらほんとに柱、ぶった斬っちまうだろ。

これでちょうどいいんだよ!」



太助の様子を見ていた武士の中にも、気づいた者が数名おります。



「おい……あれ、異能の力を使おうとしてないか?」



「ほんとだ……あやつ刀に”気”を送ってるぞ!」



”気”の量が、いつもの半分も行っていない程でしたが、太助は叫びます。



「行くぞ!ムーンアタック!」



ズバッ!──



太助がムーンアタックを放った場所は、まるでチェーンソーを当てたような

抉れの大きな刀傷が出来ていました



「だーっはっはっはっ!

どうだ!俺の勝ちだ!」



太助は雄々しく勝ち名乗りを上げました。


ところが……


場の空気の温度がみるみるうちに下がってきます。



「異能の力を使うなんて卑怯なやつめ……」



「貴様!それでも武士の端くれか!恥ずかしいと思わんのか!」



またまた一斉にブーイングが飛び交い始めました。

改めてお伝え致しますが、このお話の主人公は太助で間違いはございません。



「え!?異能使っちゃダメなんて誰も言ってねーじゃねーかよ!」



かに吉が疲れきったような溜息を再び吐きつつ



『だから本当にやるのかって聞いたんじゃ……

もう限界ぞ、さっさと逃げるがよかろう』



「何でだよ!勝ったの俺だぞ!?

何で逃げなきゃ――」



ビュン――!


ヒュッ――!



武士達はとうとう太助を目掛けて空になった徳利や皿を投げ始めました。



「この卑怯者!」



「こっちは己の力だけで勝負したのに!」



「金返せ!」



どさくさに関係ない事を言い出す者もおりますが……



「いてっ!なんだよ!異能だって俺の力――ぶはっ!」



『主よ、さっさと逃走じゃ!』



「ったく……なんか納得いかねー!」



太助はかに吉を鞘に納めると、一目散に逃げだしました。


まあ、こうなると思っておりましたが……

このあと二人はどうなってしまうのでしょうか。




――今回のお話はここまで。

おあとがよろしいかどうかは、あなた様次第でござ候。

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