円の価値は、いつ動く?
朝、ユウはいつものコンビニでコーヒーを買った。
昨日まで120円だった缶コーヒーが、今日は130円になっている。
「……円、弱くなったな」
同じ財布、同じ1000円札。
でも買えるものは確実に減っている。
ユウにとって円の価値とは、今日何が買えるかだった。
昼、ニュースが流れる。
「日銀は金利引き上げを検討。円の価値を守るため——」
ユウは眉をひそめる。
「守る? もう下がってるじゃん」
家賃、電気代、昼飯。
円は軽くなっていく感覚しかしない。
金利を上げるってことは、円の価値が下がった“後”の話に思えた。
夕方、銀行アプリを開く。
定期預金の金利が、ほんの少し上がっている。
0.001%が、0.2%に。
「……増えるのか、円」
今使えば減る円。
でも、置いておけば増える円。
今日の130円のコーヒーは買えないが、
1年後、円は昨日より多く残っている。
円は弱いのか、強いのか。
ユウは答えを出せずに画面を閉じた。
夜、外国為替のチャートを見る。
円安が止まり、わずかに円高へ振れている。
海外の投資家が、円を買い始めたらしい。
「円、守られてる……のか?」
ここでは円は
**“使うもの”じゃなく“持つもの”**だった。
その日、ユウはノートにこう書いた。
円の価値は
朝は下がり
昼は疑問になり
夕方は増え
夜は買われていた
結論は、最後の1行。
円の価値は
金利で上がるのでも、下がるのでもない
“いつ・誰が・どう使うか”で姿を変える
ユウは明日もコーヒーを買う。
そして、しばらくは円を使わず、少しだけ寝かせてみようと思った。
金利と円の価値を考えるときに最初の方にできた、短編小説です・・・




