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安心してください
「安全です。安心してください」
そう言われたとき、私はなぜか考えるのをやめていた。
疑問を持たないことが、正しい態度のように思えたからだ。
あとになって気づいた。
安全や安心は、私のために用意された言葉ではなかった。
それは、私が考えなくて済むように置かれた言葉だった。
判断はどこか別の場所で行われ、
結果だけが、私のところに届く。
失敗したときだけ、私は当事者になる。
安全という言葉が増えるほど、
自分の考えが不要になっていく。
そのことに気づいた瞬間、
私は初めて少しだけ不安になった。
その不安は、
まだ考える余地が残っている証拠のように思えた。
あとがき
この文章は、
「安全」や「安心」という言葉を発する人や場面に、
違和感をそっと残すためのものです。




