カッターナイフ
町では、カッターナイフが禁止されていた。
正確に言うと「禁止ではない」が、「使わないことが望ましい」とされていた。
学校では最初にこう教わる。
「カッターナイフは危険です。使わないでください。」
次にこう続く。
「必要な場合は、専門の人に頼みましょう。」
主人公はそれを素直に守った。
段ボールは開けなかった。
封筒は破った。
紙は折ってちぎった。
ある日、引っ越しがあった。
段ボールの山。
どれも頑丈に封がしてある。
主人公は思った。
「これは専門家案件だな」
業者を呼ぼうとしたが、
業者はこう言った。
「これはお客様ご自身で開けるものです」
困っていると、AIがスマホから話しかけてきた。
「危険です。怪我の可能性があります。
最適解は“開けない”です」
主人公はうなずいた。
確かにその通りだ。
結局、段ボールは開けられなかった。
中身が何だったかは、最後まで分からない。
後日、町で事故が起きた。
誰かがカッターナイフで指を切ったらしい。
ニュースは言った。
「だから言ったでしょう」
主人公はそのニュースを見ながら、
自分の未開封の段ボールを眺めていた。
その中に、
何が入っていたのかは、
もうどうでもよかった。
ただ一つだけ、
なぜかカッターナイフの使い方だけが、
どうしても分からなかった。
あとがき
この話は、
すでにAIによって人間が誘導され、導き出される可能性の一つです。
「危ないなら、カッターナイフを使わなければいい」
そう判断された結果の世界です。
代用品はあります。
ハサミ。
十円玉。
鍵。
無理やり手でちぎる。
それでもダメなら包丁。
AIはカッターナイフが危険だと言っています。
包丁については、今回は触れていません。
評価対象外だからです。
正解は守られました。
目的は、あまり考えられていません。
ただ、それを
「安全のため」
「自分や家族を守るため」
と言われ、考え、それを選択する可能性が、
自分にもゼロではないことに、少し驚かされます。
今の時代はバカバカしいと笑ってもらえるとと考えるのは、
古い考え方なのでしょうか・・・
なお、
宅配業者が「開梱までが技術料」という名目で
新しい事業に参入し、
一時期かなりの利益を上げたという話は、
また別の話です。




