表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/72

光の余韻

 前書き


 本稿は、蛍光灯の生産終了とLEDの普及に伴う違和感をもとにまとめた、小さな物語である。

 ただし、ここで描かれる内容には偏りや推測が含まれており、科学的に確立された事実ばかりではない。


 LEDの光が人間の目や生活にどのような影響を与えるのかは、現在も研究が進められている途上であり、確定的な結論は出ていない。

 だからこそ、読者には本作をひとつの視点として受けとめ、あわせて公的な研究報告や多様な情報に触れていただきたい。


 光の未来を考えるために、物語と現実のあいだを往復しながら読んでいただければ幸いである。

 蛍光灯が姿を消してから、街の夜は変わった。


 ビルの窓から漏れる光も、住宅の廊下を照らす明かりも、道路を走る車のヘッドライトも——すべてが白く硬質なLEDに統一された。政府は省エネの成果を誇らしげに発表し、未来は明るいと宣言した。


 だが、その光の陰で、人々の目は静かに疲弊していった。


 タクシー運転手の佐藤は、深夜の高速道路でハンドルを握りながら呻いた。

 「眩しいな……」

 対向車のLEDライトが視界に突き刺さる。

 蛍光灯に慣れた彼の瞳には、その鋭さが焼き付くようで、しばらく視界に残像が漂った。


 家庭の明かりも同じだった。勉強机に向かう子どもは眉間に皺を寄せ、妻は頭を押さえて「また頭痛がする」とつぶやく。

 白く無機質な光は、便利であるはずなのに、どこか不自然だった。


 ある夜、佐藤は客を降ろしたあと、裏通りに小さな店を見つけた。そこでは「自然光を再現する照明」「最後の蛍光灯」と書かれた商品が並んでいた。

 闇市のような静けさが漂う。店主は声を潜めて言った。

「LEDは省エネだが、人間の目に優しいかどうかは別の話さ。ブルーライトだけじゃない。フリッカー、波長の偏り、高輝度……そういう細かい刺激が、じわじわ効いてくる」


 科学者たちも同じことを指摘していた。LEDに曝され続ける子どもたちに、数十年後どんな影響が出るのか——まだ誰も答えを出せていない。

 認知機能や睡眠への影響、眼精疲労。未知のリスクは光に紛れて進行している。


 そのため、眼鏡にはブルーライトカット機能が当たり前のように備わるようになった。だが裸眼の人々は防御手段を持たず、症状に悩まされやすい。

 「コンタクトにもブルーライトカットが出るかもしれないけど、高くて手が出せないだろうね」と眼鏡店の店主は肩をすくめた。

 結局、目に優しい選択肢は従来どおり眼鏡に限られるのかもしれない。


 街は今日もLEDの光に包まれている。

 省エネの未来と、人間の快適さ。その狭間に揺れながら、人々は暮らしている。


 佐藤は夜空を見上げた。

 昔よりも暗く感じる空に、星はほとんど見えなかった。

 「俺たちは……本当に正しい光を選んだんだろうか」

 白い光がまぶたを照らすなかで、彼の問いは誰にも届かず、静かに夜に溶けていった。

 あとがき


 LEDは文明の省エネを支える象徴となった。しかし「便利であること」と「人にとって良いこと」は必ずしも一致しない。


 目や脳は長期的な刺激に敏感であり、累積曝露の影響は数年では表れない。子どもや若者の世代は、生まれたときからLEDに囲まれて育ち、その影響はこれからの時代にゆっくりと浮かび上がるだろう。


 未知の健康リスクを無視して進むことはできない。長期調査と監視が不可欠であり、もし兆候が見えれば、規制や普及の凍結も検討されるべきである。


 蛍光灯の優しい光に戻ることができないのだとしたら、まずは新しい照明技術の開発が優先されるべきだろう。

 それでもなお健康被害の懸念が残るのなら、ブルーライトカット眼鏡の着用が今後推奨され、やがて義務化される可能性すらあるのではないだろうか。


「光」は文明の象徴であり、人の暮らしを形づくる基盤である。だからこそ、省エネと同じくらい、「人が安心して生きられる光」を追い求めることが大切だと考える。


 さらなる情報分析が進められることを切に願う・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ