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酔いどれ微生物哲学

――歯磨き粉を疑う夜に


※これは私自身の実体験と観察に基づく考察ですが、

医学的に証明された事実ではありません。

ただ、長年の違和感と体感を通して、

「清潔」と「健康」のあいだに潜む不思議な関係を考えた記録です。

酔った勢いでふと思ったんだ。

歯磨き粉って、結局なんなんだろう、って。


歯磨き粉は、歯にこびりついた雑菌の繁殖を防いでくれるらしい。

でも、もしそれが本当なら、

歯磨き粉を信用していない自分の歯ブラシには、

雑菌がうじゃうじゃと繁殖していることになる。


案の定、歯ブラシの根元はいつも赤くなる。

それに、お腹をよく壊す。

たぶん、それは当たり前のことなんだろう。

菌が移って、体が反応しているのかもしれない。


けれど、変なのは――

歯を磨かないときのほうが、なぜか腹痛にならないことがある。

口の中なんて、雑菌だらけのはずなのに。

それでも平気でいられる。


もしかして、これは菌のバランスってやつなんじゃないか。


清潔すぎる世界では、菌がいなくなって、

身体は“誰とも共存できない”体質になってしまう。

けれど、少しだけ汚い世界では、菌たちが共存して、

人間もそのバランスの中で生きていける。


そして気づいたんだ。

体調が悪いとき、なぜか腹痛が起きることがある。

それは、腸の問題というより、

口の中の菌のバランスが崩れたサインなのかもしれない。


風邪の前ぶれ、あるいはもっと極端にいえば、

インフルエンザの入口も、

実は口の中の小さな世界で始まっているのかもしれない。

菌たちの関係がわずかに乱れて、

体の中の音程がずれていく――

そんなふうにして、僕たちは“病気”になっていくのかもしれない。


だから、予防しようとは思う。

けれど、歯磨き粉のあの不自然な甘さには、

いつもどこかで嫌悪感を覚える。

“清潔”の味が、あまりにも人工的だからだ。


それでも、口内洗浄のマウスウォッシュだけは使っている。

雑菌を駆除するためには必要だと感じて。

不思議なことに、それを使っていると

歯ブラシの根元が赤くならない。


――それは、いいことなのだろうか。

悪いことなのだろうか。

いつも、少しだけ考えてしまう。




なぜこの分野は研究されていないのか?


そんなふうに考えるたび、ふと不思議に思う。

どうして、こんな単純な疑問――

「歯磨き粉と菌のバランス」について、

誰も本気で研究していないのだろう?


理由はいくつもあるらしい。


ひとつは、医学と歯科のあいだに落ちているから。

歯科医は歯と歯ぐきを見て、

内科医は腸と免疫を見る。

でも“口内菌と体調の関係”は、その境界線のど真ん中にある。

だから、誰も真正面から扱わない。


もうひとつは、症状が「地味すぎる」から。

歯ブラシの雑菌や腹痛なんて、

命に関わる病気じゃない。

研究費も注目も集まりにくい。


さらに、産業構造も微妙に関わっている。

歯磨き粉やマウスウォッシュは巨大な市場だ。

「殺菌しすぎはバランスを壊す」なんて結果が出たら、

それは“清潔産業”にとって不都合な真実になってしまう。


そして、何よりも難しいのは――

菌たちの生態系そのものを追うこと。

口の中には700種類以上の菌がいて、

それぞれが協力したり喧嘩したり、

まるで森のように絡み合って生きている。

その世界を解き明かすには、

人間社会と同じくらい複雑な理解が必要なんだ。


最後に、文化的な壁もある。

僕らは“清潔信仰”の中で育った。

「菌=悪」と教わり、「除菌=正義」と信じている。

だから、「菌と共に生きる」という発想自体が、

まだ受け入れられにくいのかもしれない。




でも、これから確実に変わっていく。


近年、「マイクロバイオーム(微生物叢)」という研究が進んでいる。

腸だけでなく、皮膚、肺、そして口の中まで――

人間は、菌と共に一つの生態系をつくっているという考え方だ。


ふと思う。

もしかしたら――体調不良は、口の中から始まっているのかもしれない。

風邪の入口も、疲れの芽も、

そのすべてが、舌の上の小さな世界で静かに始まっているのかもしれない。


それに気づかないまま、

僕たちは「清潔」という名の安心を求めて、

今日もミントの泡を口いっぱいに広げる。


けれど、その泡の下では、

小さな菌たちがまだ、

僕の身体を守ろうとしている。


口の中にも、小さな森がある。

その森は、菌たちの声でざわめいている。

僕たちは、その音を聞かないまま、

今日も、静寂を塗りつぶしている。

あとがき


これらの疑問がもし事実だとしたら――

口腔内こそが、身体の最初の砦ということになるのかもしれません。

その仕組みがもし完全に解明されたなら、

風邪にも、感染症にも、

あるいは“万能薬”のような予防法が生まれるのかもしれません。


けれど、それはきっと、遠い未来の話です。

人間と菌が、本当に共に生きる意味を理解できるようになるまで、

僕たちはまだ、清潔の泡の中で考え続けるのだと思います。

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