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複利の檻 ― 資本主義という習慣の牢獄

 まえがき


 資本主義が、税金という仕組みを作っていると考えています。

 それは、強者の論理によって形づくられたものであり、誰もがその中で生きています。


 私たちはその不条理に気づきながらも、生活がその仕組みに支えられていることを知っている。

だからこそ、この構造を完全に否定することもできず、

ただ静かに、その中で回り続けているのです。


 これらの考えは、誰かの言葉を借りたものではありません。

むしろ、人間として考え始めたとき、同じところにたどり着いてしまう“必然”のようなものなのかもしれません。


 資本主義がこれほどまでに効果的だったのは、

成果主義という「わかりやすい指標」を持っていたからでしょう。


 努力と結果が数値で結びつく世界は、人々を“習慣化”へと導き、

社会全体を一律の成果へと動かすことを可能にした。


 けれどその「わかりやすさ」は、人間の生を単純化し、

測定できない尊厳や静けさを、見えない場所へ押しやってしまった。


 そして、「老後に悠々自適な暮らしをすればいい」という幻想は、

生産を終えた人間の尊厳を無視する、静かなマインドコントロールでもあったのかもしれません。

  ― 本文 ―


 複利を善とした人類は、やがてその恩恵の中でゆっくりと鎖を編んでいった。

 最初は繁栄の約束だった。働けば報われ、投資すれば未来が広がると信じていた。

 だが、複利の法則はいつしか「増える者だけが生き残る」という数学的な冷酷さを帯びた。


 資本を持つ者は、労働ではなく数字を増やすことで富を重ね、

やがて国家すらも、その資本の傘下に入っていった。

 税は再分配の名を借りながら、実際には弱き者から徴収される。

 強者から奪うことは政治的にも経済的にも「非効率」とされ、

理不尽が日常の制度として正当化されていく。


 複利が資産を五倍にする時、社会は見えない亀裂を抱える。

富が一点に集まると、経済は再び破綻を求め始める。

 戦争や崩壊は偶然ではなく、資本主義が自らを延命させるための儀式なのだ。

破壊がなければ再生できない――その循環こそが、近代の宿命である。


 そして私たちは、その仕組みを知っていながら止まれない。

 習慣は理性を超える。

 便利さ、効率、比較、所有――それらはすでに私たちの精神構造の一部となった。

 人間は進歩しているように見えて、同じところを回っている。

 音楽が止むのを恐れる猿回しの猿のように、

止まることへの恐怖が、私たちを永遠の回転へと駆り立てる。


 社会学者は言う。

「資本主義はいずれ崩壊する」と。

 だが、崩壊するのは制度ではなく、人間の習慣の方かもしれない。

 複利の檻を壊すためには、まず自らの中にある“資本主義の思考”を壊さねばならない。

 しかし、それを壊すには勇気がいる。

なぜなら、檻の中こそが、私たちにとっての“安心”だからだ。


 それでも、誰かがふと立ち止まり、音楽の鳴りやむ静けさを聴く日が来るだろうか。

 その沈黙の中にこそ、人間の自由の最初の鼓動が、もう一度、生まれるのかもしれない。



 あとがき


 資本主義の仕組みを責めることは簡単だ。


 けれど、それを支えているのは、私たち一人ひとりの“安心への依存”だと思う。


 複利の法則も、成果主義の基準も、税の仕組みも、すべては人間の恐れと欲望から生まれた“生存の癖”にすぎない。


 人間は、進歩しているようで、同じところを回っている。


 けれどその回転の中で、時折ふと立ち止まり、「なぜ回っているのか」と問う瞬間こそが、

まだ消えていない、人間の“意識の自由”なのだろう。


 いつか気が向いたら、この思索をもう少し言葉の奥に沈めながら、静かに書き記してみたいと思う。

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