目次 次へ PR 1/39 名探偵の暗号 あるところに、名探偵がいた。 その名探偵は、死後の死体解剖依頼に来た科学者に不敵に笑ったという。 「わたくしの心臓はここにはないわ。それでもいいのなら」 心臓なくして、人は生きることは出来ない。 そんな当然で明瞭な摂理に矛盾した言葉を放つ名探偵に、科学者はただ、出来の悪い首振り人形のようにこくりこくりと頷いた。 しかし死後、暴かれた体の中に心臓はきちんと存在していたという。 これが後に「名探偵の暗号」と呼ばれ、名探偵の死後もなお、討論される逸話である。