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アマリリス 後編

「大丈夫かい?お嬢さん」

異型の者は顔にあたる部分を横に向け美島の安否を確認した。

「えぇ、てかあなた一体?」

「俺か?俺はただのさすらいの宇宙人さぁ」

自ら宇宙人と名乗った異型の者は顔を前に向け目線を天井に向けた。

そこには美島に向かって襲いかかってきた中蜘蛛が待機していた。

カサっと少し動き口から緑色の糸を吐き出した中蜘蛛。

その糸は異型の者に向かっており彼は腕を前に突き出し糸をわざと巻き回せる。

「ふん。簡単に引っかかったな」

異型のものは上から下へと勢いよく中蜘蛛をぶん落とし中蜘蛛は床に叩きつけれた。

中蜘蛛は背を下に叩きつけられたからだろうか。

戦意喪失になり目の色が青から黒になった。

「よし!俺の勝ちだ」

異型の者はガッツポーズをし美島の方へ振り向きしゃがむ。

するとカサっと穴があいた壁から今度は5体のしかも体の色が赤黒い中蜘蛛が現出した。

「おいおい。勘弁してくれよ。何体出てくんだよ・・・」

異型の者は立ち上がり中蜘蛛の方へ振り向きそれに向かった走った。

「おりゃぁ!」

手からどのような方法で出したか分からないが鉄の棒を取り出し中蜘蛛に向かった大きく振りかぶりそれに当てた。

中蜘蛛の体は装甲並みに硬かったが異型の者が当てた鉄の棒はそれより硬かったらしく勢いよくぶっ飛んだ。

そして壁にめり込みかなりの量の緑の液体を流し息絶えた中蜘蛛。

それに怯えたのか3体中蜘蛛はカサっと音をたてながら去っていった。

だが残り1体は弾みをつけ天井にくっつき異型の者に向かってもうスピピードで突進してくではないか。

「なに!」

異型の者は少し不意をつかれたので慌てて緑の液体がついた鉄の棒を構えたその時後ろから中蜘蛛めがけ手榴弾が投げ込まれた。

それは中蜘蛛に当たり爆発した。

異型の者が振り向くと美島が手榴弾を投げ終えたポーズをしていたので彼女が投げたことを確認し彼は美島に向かってサムズアップをしながら走り出す。

手榴弾を受けその爆風で壁の穴の向こう側に着地した中蜘蛛は少しダメージは受け顔に深い傷を負う。

目の前に漂っている白い煙に黒い影が中蜘蛛に向かって近づいてくるではないか。

「うぉぉ」

大きな声で叫びながら異型の者が鉄の棒を構えながら走ってくる。

そして数mと所で上に飛び中蜘蛛の顔をめがけ鉄の棒を前に差し出す。

その棒が深く負った傷に差し込んだ。

緑色の液体が深い傷から噴出し中蜘蛛は目の色を黒にしバタンッと倒れた。

「やったのね」

後ろから額から赤い液体を流している美島が異型の者に近づきながら倒れた中蜘蛛を眺めた。

「あぁ。じゃ俺はこれで」

異型の者は中蜘蛛を背にして去ろうとした。

「ちょっと待ってよ。私を助けない気?」

「あぁ大丈夫だろ。それにすぐに助けが来るさぁ」

異型の者はさっさと扉を開けバタンッと締めた。

数分後、ドタバタと急いでいる足音が聞こえそれが急にピタッと止まりガチャッと扉が再び開いた。

開けたのは汗だくの木嶋だった。

「大丈夫ですか美島さん!」

木嶋は美島の近くに寄り怪我してないか全体を見たがボロボロで手から赤い液体が流れていた。

「なんで戻ってきたんですか?」

「なんでってそりゃぁ美島さんのことが心配だったからですよ!」

少し顔を赤くした美島は「木嶋さん・・・」と小さくつぶやいた。

「ん?なんですか?」

「いや、何でもないですよ」

「そうですか。よし急ぎましょ。また中蜘蛛が現れてはい開けませんからね」

木嶋は負傷してない手を担ぎ急いで扉を開け出た。

「両親は?」

両親の心配をした美島は木嶋に問いかける。

「親御さんと直虎さんは道中出くわした杉道隊長に託しました。すみません。私に託すと言われたのに・・・」

「いえそれは大丈夫ですよ。それより隊長に出会ったのですか?」

親のことより杉道に出くわしたことに驚いた美島は木嶋に再び問うた。

「はい。我々に任せろと言われたんですが美島さんのことが心配で言う事聞きませんでした。てへっ!・・・すみません。テヘッとか言って」

「いえ可愛いですよ」

「えっ?」

「あ、いやぁそのぉ」

美島はしまったつい口に出してしまったと頭の中で呟き木嶋から目をそらす。

そらしたはいいがこのシーンとした状況はどうしたものか考えに考えたが答えは見つからずため息をつく美島。

「どうしましたか?美島さん。まさか・・・」

「はい?」

「怪我がより痛み始めましたか?」

動揺した美島だったが少し深呼吸をし「いいえ。大丈夫ですよ気配りくださってありがとうございます木嶋さん」と笑顔になると今度は木嶋が照れ目をそらす。

「い、いえ大丈夫でしたらOKです」

「無事か!2人共!」

2人が進んでいると2、3人引き連れた男が近づいてきた。杉道だ。

「隊長!」

「2人共無事だったか!良かった心配してたんだぞ。木嶋研究員が急に直虎と君の両親を私に預けるから驚いたよ」

「隊長!それよりこんな事があったんですよ」

美島は異型の者に出くわしたこと等話した。

「そいつが中蜘蛛を倒したのか?」

「はい」

「そうかぁ、謎だなその宇宙人は。敵か味方かわからんが美島の話を聞くと敵意はないと思うが・・・」

「杉道さん!」

杉道の話を遮った木嶋は遮って申し訳ない感を出しながら話す。

「どうした木嶋研究員」

「話はここを出てからにしてはどうでしょうか?」

「それもそうだな。よしここを脱出するぞ。他の隊員達も取り残された人を救出したしここには要はない。行くぞ!」

「分かりました!」

「了解!」

3人は長い廊下を渡り階段で降りマンションを脱出した。

脱出し皆が集まる簡易テントに向かう。

そこには直虎と美島の両親が横たわっていた。

「お父さん!お母さん!直虎!大丈夫?」

両親に寄り添った美島は涙を流し木嶋はしゃがんでいた美島に寄り添い頭を「大丈夫ですよ」と言いながらポンポンした。

「ありがとうございます。木嶋さん」

お礼を言った美島を木嶋は頭をポンポンするのをやめ美島の背中を優しくさすった。

複数台の救急車のサイレン音が鳴り響き停まり美島の両親、直虎たちを乗せ病院へと運ぶ。

「両親も直虎も大丈夫でしょうか?」

「大丈夫ですよ・・・と言いたいですが僕も心配です」

少し元気ない美島を励まそうとしたが今はそういう空気ではないと考えやめた木嶋。

「木嶋さん」

「はい!何でしょうか?」

急に名前を呼ばれ少し裏声で返事した木嶋をよそに美島は続けた。

「私はあのアマリリスのせいで両親が被害に遭ったと思っています」

美島は木嶋の方へ振り向き少し涙ぐんだ目でジッと見つめる。

「でも木嶋さんはあのアマリリスが研究対象でアマリリスが起こした被害は仕方ない派ですよね?」

「いえそんなことはないです。あの中蜘蛛はアマリリスを守るために生まれた存在なんです」

木嶋は話しながら近づく。

「えぇとそれで?」

「ですからアマリリスとあの蜘蛛たちは1種の運命共同体なんです。つまり蜘蛛がやったことはアマリリスがやったと同然なんです。ですから私も美島さんがあれを恨むなら恨みます」

木嶋の発言にそんな事言っていいのかとドキッとした美島。

「研究者がそんな事言っていいんです?」

「研究者であろうがなかろうが自分の愛する人を傷つけた奴は許さないのです」

「えっ?」

木嶋が愛する人と言った事を聞き逃さなかった美島は「愛する人って?」と質問した。

「えっあ、そ、それは・・・」

木嶋は片手で指を閉じながら美島を指した。

「わ、私!」

美島は心の中で少し安堵した。

何故か、理由は2つある。

1つ目は他の人ではなかったこと。もしかして私!と思いつつ他人ではないかと思い一応聞いたのだ。

2つ目はまさか両思いであったこと。

それにしても木嶋が何故私のことを好きになったのかと思った美島は少し顔を赤くした。

「美島さん?」

「はひ。何でしょうか?」

美島は甘噛をし動揺しているのがバレバレじゃないかと考えさらに顔を赤くした。

「大丈夫ですか?」

熱でもあるのかと気にした木嶋に向かって美島は「すみません私用があるので・・・。じゃ」と後ろを振り向きスタスタと走っていった。

「木嶋何してる?」

振り向くとそこには命令を聞かずに美島と共に救出しに言ったことに御立腹の清見がいた。

「清美さん!」

清美は木嶋に近づいた。

「木嶋ぁ!勝手に動きやがって!お前は研究者だろうが!APEの隊員じゃないんだからな!その事弁えろ!」

「はぁ、すみません」

少しではなくかなり御立腹の清美はフンガフンガしたが少し落ち着きを取り戻し「ま、反省してるならいいよ」と言われ木嶋は清美から離れた。

しばらくして夜7時になり辺りが暗くなった頃木嶋は簡易ラボにいた。

アマリリスの巣をライトで照らしそれに当ててある透視装置で中の様子を見ていた木嶋は少し唸っていた。

「少しずつですが大きくなっていますよね」

「あぁ孵化しそうだなぁ」

清美は満面の笑みでモニターを見アマリリスが孵化するのをうずうずしながら待っていることを隣りにいた木嶋もわかった。

すると近くにあった電話機がプルプルと鳴り出しすかさず受話器を取った木嶋。

「はいもしもし木嶋です。・・・はい少々お待ち下さい」

「清美さんお電話です」と清見に受話器を渡した。

「誰だよ全く。もしもし清見ですが・・・」

受話器を手にした清美は数分後大声で怒鳴った。

「それどういう事です?」

清美の大声が簡易ラボ中に響き渡り作業していた他の研究員の視線が清見に移った。

横にいた木嶋も清美の大声に驚き視線を彼女に移す。

「どうしました?清美さん!」

清美は木嶋の問いに答えようと受話器の下の部分を手で塞ぎ「ヤバいことになったぞ!」と少し小声で木嶋に言い「もしもし失礼しました」と向こう側の人間に言った。

向こう側の人間とは清美の恩師に値する菅原三郎である。

「でどこまで話しましたっけ?」

「だから会議で今アマリリスを駆除するか否かで揉めているんじゃ。駆除せよとお主の元旦那の杉道くんの上司である高知幸山が発言しており周りの皆がその意見に賛成なんじゃ!」

かなり慌てぶりの菅原に「落ち着いてください先生!」と清美が言った。

「これが落ち着いてられるか!最大の研究材料になりかねんアマリリスじゃぞ!清美くん何とかならんかい?」

「そう言われましても・・・」

すると横にいた木嶋は受話器から漏れた彼の声を聞きすかさず簡易ラボから去った。

「おい木嶋!どこに行く!」

「た、大変じゃ清美くん!たった今APEの上層部が高知幸山の意見を採用しアマリリスを駆除すると決定したそうじゃぞ!」

「何ですって!」

清美はどうしたらよいか頭の中で考えに考えたが打開策が浮かばずモニターに映っているアマリリス一点を見つめる。

「どうしたら」

清美は受話器を置き何もできない自分を情けなく感じ落胆したのだった。

木嶋は走る。

簡易ラボから出た木嶋は急に降り出した雨に濡れながらアマリリスの巣があるビルめがけながら。

すると道中双眼鏡を両手で持ちアマリリスの巣を観察していたAPEの隊員がいた。

後ろ姿で誰だか分からないが木嶋は直感で「美島さぁん!」と雨音に負けず大声で発した。

「き、木嶋さん!」

美島は双眼鏡を覗くのをやめ振り向いたはいいが近づいてくる木嶋を直視できず振り返ることをやめ再び双眼鏡でアマリリスの巣を見た。

「美島さん。なんでここに?なんでアレを見てるんですか?」

「命令でアレを監視しろと言われたので」

美島は素っ気ない態度を取ったが心の中で“ごめんなさい木嶋さん素っ気ない態度取って”とすると「美島!」と杉道が2人の所に小走りで近づいてくる。

「おぅ木嶋研究員もいたか。なんでここにいるかは聞かないことにしよう。それよりアマリリスの駆除が決まったぞ」

「何ですって!」

木嶋は大声を出し「なんでそんなことに!」と杉道に近づき怒号した。

「上層部が決めたことだ!我々はこの決定に従うしかないのだ」

「そんなぁ」

かなり落胆した木嶋を見て美島は杉道に「隊長!何とかなりませんか?もう一度上層部に掛け合ってもらえませんか?」と提案した。

「美島・・・」

杉道は美島の表情をみて「気持ちは分かるが・・・。分かった上に掛け合ってみよう」と渋々簡易テントに戻った。

「ありがとうございます。隊長」

杉道は振り返ることなく手を少し上げた。

「美島さん。ありがとうございます。僕のために言ったんでしょ?」

木嶋は美島にお礼を言った。

「まぁ怪獣を倒すだけが私達の仕事じゃありません。それに・・・」

「それに?」

「それに私が好きな人の困った顔を見ると助けたくなるっというか」

言っちゃったと再び顔を赤くし心の中で呟いた美島に木嶋は近づき美島の目の前に立つ。

「美島さん」

「は、はい」

美島の顔をジッと見つめる木嶋は少し恐縮顔をしながら「すみません。雨音が強くてあまり聞き取れなくて。なんて言ったんですか?」と言った。

「えっいや。なんにも言ってませんよ!」

少し語尾を強く言い木嶋の視線をそらす美島。

その後美島は心の中で「木嶋さん目をそらしてごめんなさい」と再度謝り言葉に出さないまま無口になった2人。

先程から降っている雨が激しさを増し雨音が大きくなった。

「美島さん、雨が激しくなったので何処か避難しましょうか」

重い空気の中口を開いたのはそう木嶋だった。

「じゃAPEの簡易テントに行きましょう。そこでアマリリスを監視しましょう」

「それは良い提案です。行きましょう」

2人は駆け足でテントに向かった。

テントに着き中に入ると杉道が受話器を持ち誰かと話していた。

話し相手は上司である高知幸山で杉道は汗を掻きながらかなりの衰弱状態で話していた。

「ですからアマリリスの撃退をもう少し遅らせてほしいんです。お願いです高知さん」

「杉道。しょうがないなぁと言いたいところだがあの怪獣が人間を襲わない保証はない」

高知はスパッと言い杉道は戦いた。

「ですが・・・」

「杉道。私の言うことが聞けないのか。私が決めたことは絶対なのだ」

威圧感バリバリの高知の言葉にあの心が強いと評判の杉道が涙目になっていた。

それを見た美島は杉道が手に持っていた受話器を奪い取り自分の耳に当てた。

「もしもし先から聞けばあなたね!いくら隊長の上司とはいえちょっと言いすぎじゃありませんか!」

「何だと貴様名を名乗れ!」

「APEの隊員の美島ですが!」

名を名乗った美島は杉道の上司である高知に恐れることなく堂々とした態度で話す。

高知はその態度に驚いたがすぐ冷静さを取り戻す。

「そうか。貴様が美島か!杉道からよく聞いているよ優秀な隊員だと。私に歯向かうのもいいが自分の立場も弁えろよ!いいな?」

そう言い残し高地は電話をガチャッと切った。

「何という人ですか!隊長の上司は酷いです」

かなり憤慨している美島を見て涙を拭った杉道は口を開く。

「仕方ない。昔からあの人はあぁだから」

「でも」

「美島!君は私の指示と高知さんの命令、どっちに従う?」

神妙な面持ちで急に問うた杉道。

「僕は杉道さんを信じてます」

「木嶋研究員・・・」

美島より先に杉道の問に答えた木嶋は無言で簡易テントの外に出た。

「わ、私も隊長の指示に従います」

そう言った美島は敬礼をし真っ直ぐな眼で杉道を見た。

「ありがとな美島。よし美島隊員、木嶋職員を追いかけろ!」

「えっ?」

「これは命令だ。行け!」

「りょ、了解!」

美島は急いで簡易テントを出て木嶋を追った。

外は雨が降っておらず木嶋はアマリリスの巣に向かって歩く木嶋に「木嶋さぁん!」とかなりバカでかい声で彼を足止めし美島は走る。

「美島さん!」

振り返り必死に向かって走る美島に驚き「どうしたんですか?」と質問した木嶋。

「隊長が木嶋さんを追いかけろって命令してきたんで追いかけただけですよ!」

美島はまた顔を赤くした。

「木嶋さん、私木嶋さんのことが・・・」

するとその時ブォォンと鈍い音がし何事かと2人は何故かアマリリスの

巣をとっさに見た。

アマリリスの巣が黄金色に光っているではないか。

「き、木嶋さん!あ、アレは!」

「羽化する直前のサインです。美島さん!ここにいたら危ない!避難しましょ!」

「えっ?」

鈍い音が鳴り響いたと思いきやそれが止まりその瞬間ビリビリとTシャツでも破かれたと思うぐらいの切り裂き音がバカでかく鳴り響く。

その音の正体はアマリリスの巣が破れた音でその中からアマリリス本体が羽化してくるかと思いきや白いガスが噴出し辺りは白い世界になりかけていた。

「木嶋さんあの白いのは?」

美島は木嶋に質問した。

「アレはおそらくアマリリスの状態を維持するために入っていたガスでしょ。人体に影響ないと思うのですが・・・。ですが一応避難しましょ美島さん」

「木嶋さん!アレ!」

美島は再度巣を指差す。

なんと巣から抜け出そうとアマリリスの体が見え次に顔が姿を現した。

羽を閉じたまま孵化したアマリリスはヌァォンと鳴き辺りを響かせた。

美島と木嶋の視界は白くそのせいであまりアマリリスの姿が見えず鳴き声だけが聞こえる。

その時アマリリスは羽をバサッと広げその風圧で漂っていたガスが消え白い世界が開く。

そのお陰で2人はアマリリスの姿をはっきり目視できた。

「アレがアマリリス・・・・」

美島が見たそれは白い体で羽は体より大きく容姿はまるでアゲハ蝶に酷似していた。

羽化し羽を広げたはいいものの動かず飛び立とうとしないアマリリス。

「美島、木嶋研究員無事か!」

簡易テントから出て2人の所に駆け寄ったのは杉道だ。

「隊長!無事です」

「そうか。それはよかった。ところで木嶋研究員アレがアマリリスか」

「あぁアレが伝説怪獣だ」

答えたのは木嶋ではなく彼の上司清見であった。

「清見さん!」

清見は数人研究員を引き連れ3人の所に近づいた。

「清見。何故その伝説怪獣は飛び立とうとしないのだ?」

清見に質問したその時APEの隊員が息を切らしながら駆け寄って来たのだ。

「隊長大変です!」

「どうした!」

杉道は隊員の肩に手を置き「落ち着け!今田何があった?」と問いかける。

「巣があるビルから巨大な蜘蛛の怪物が現出しそこにいる隊員隊が敗れ怪我を負っています」

「何だと!」

美島と木嶋は今田の発した言葉に対してお互いの顔を見合わせる。

「巨大な蜘蛛って、まさか!」

美島は木嶋に振った。

「えぇあの時直虎隊員が銃を乱射追い払った大蜘蛛・・・だと思うのですが」

「確認しに行きましょう木嶋さん!」

「はい!美島さん」

2人は孵化したはいいが飛び立たないアマリリスがいるビルへ再び向かった。

向かう2人を見て杉道は大声で「おい!2人共どこに行く!」と発したが無視した美島と木嶋。

しばらくビルに向かって走り到着すると今田が言った通り巨大な蜘蛛がこちらを見ていた。

「やはりあの時の大蜘蛛ですね」

「えぇ色も形と言い先程出会った個体ですね」

大蜘蛛は何もせず見つめ美島と木嶋の2人は相手が威嚇や攻撃等しないためただ立ち尽くすしかなかった。

すると大蜘蛛は二人に背を向けカサカサと音を立てながらビルに向かって進行しビルに張り付く。

そしてアマリリスの巣の所まで素早く進みその巣に入り込んだではないか。

ピョンと巣に飛び乗った大蜘蛛はそれからしばらく姿を見せることはなかった。

だがその代わりアマリリスがヌォァンと鳴き羽を羽ばたかせ白い体が黄金に輝き出したではないか。

「う、美しい。なんて美しいんだ!」

巣から飛びたったアマリリスは真っ直ぐ宇宙に向かい始め遠くに行く。

そんなアマリリスに見とれた2人は何故かお互いの顔をしばらく見つめ合い目を閉じお互いの唇を重ね合う。

そうアマリリスの魅力に見とれ美島と木嶋はキスをしたのだ。

唇を離し目を開けお互い顔を赤くした。

「き、木嶋さん私・・・」

美島はジッと木嶋の目を見た。

「私木嶋さんを最初見てから胸がキュンとして・・・。だからその時から好き・・・なんです」

「美島さん。僕もあの時から美島さんあなたのことが大好きです」

お互い好きであることを告白し照れくさい雰囲気になった。

ヌォァンと三度鳴きアマリリスは宇宙の彼方へ飛び立つ。

辺りはアマリリスが黄金色に輝いていたがアマリリスが地球を放っれた途端通常通りの暗さになった。

「木嶋さん。アマリリス行っちゃいましたね」

「えぇ。ですが何年後かに戻ってくると僕の勘ですがそう思います」

「アマリリスが、ですか?」

「はい。まぁ僕の勘なんで。真に受けないでくださいな」

木嶋は頭を掻き「美島さん!」と美島の方に手を置く。

「は、はい」

「またいつか会えますよね?」

「はい。絶対に会いましょう。木嶋さん」

2人は会うことを誓いあった。

そして木嶋と美島はその場を去りそれぞれ美島は簡易テント、木嶋は簡易ラボへと向かって歩くのであった。

美島が簡易テントへ戻るとそこには杉道が美島の帰りを待っていたかのように椅子に座っていた。

「美島。遅かったじゃないか」

「隊長!すみません!」

美島は杉道に謝った。

「また勝手に行動して!上から監督不行届だと叱られるのは俺なんだからな!」

「すみません隊長」

「まぁいつものことだからいいが程々にな美島」

「はい」

一方木嶋も上司である清見から喝と叱られていた。

「ったく!お前は!」

「すみません清見さん」

「反省してるならいいが。よし木嶋!残されたアマリリスの巣を回収するぞ!」

「あ、はい」

木嶋はあまり叱られることなく終わったので良かったと心のなかで呟き清見と数十人の研究員と一緒にアマリリスの巣を回収するためラボを出た。

翌日の夜、美島は自分の家の中で飲み友達でAPEの広報に所属している絢子と飲んでいた。

「え?キスしたの?マジで!」

「大マジ。なんかそういう雰囲気になったっていうか」

ジョッキいっぱいに注ぎ込んでいたハイボールを片手に持ちグイッと飲む美島。

絢子も美島と同様ハイボールを美島の恋バナをおつまみにしながらグイッと飲む。

「でその後どうしたのさ?」

「その後は何にもないよ。ただキスしただけよ」

その時ピンポォンとインターホンがなり「ちょっと待っててね」と絢子に告げ立ち上がり玄関の方へ歩く。

「はい」

インターホンの目の前に立った美島がボタンを押すと外の様子が表示された。

するとそこに映っていたのは木嶋だった。

「美島さん夜分遅くにすみません」

なんで木嶋さんがと心のなかで呟きながら急いで玄関の方へ走りドアを開けると木嶋が白い紙袋を片手に持ち「あ、これお口に合えばいいのですが」と差し出した。

「ありがとうございます。いやその前に何故木嶋さんがここへ?しかもなぜ私が住んでいる場所がわかったんですか?」

「住所は杉道さんから教えてもらいました」

美島は「隊長から!」と驚愕し木嶋は「はい。少し美島さんと込み入った話をしたいと言うと教えてくれたんです」と満面の笑顔で言った。

「そうですか。まぁここじゃあれなんでどうぞ中へ」

「ありがとうございます。美島さん」

木嶋は美島の家の中に入り好きな人が家の中に入ってるなんてとドキドキしている美島をよそに冷静にリビングの扉へたどり着く。

そして美島はドアノブを右手で持ち開ける。

開けると少し酔っ払っている絢子がいて木嶋は「あれ?お友達がいたんですね。また別の機会にお邪魔しましょうか?」と言い美島は少し慌てた様子で「いや今飲み会中ですが大丈夫ですよ」と言ったので渋々入った。

「あれ?もしかして・・・先日お会いして僕が担いで自宅まで送りしたお友達ですか?」

「えっ?」

「あ、そうですそうです。絢子は初めてよね。こちら木嶋拓哉さんでAPEの研究員だよ」

絢子に木嶋を紹介し次に木嶋に「こちら私の友人でAPEの広報

担当の田中絢子です」と紹介した。

「木嶋さん詠美から聞いた通りのイケメンですね」

「いや全然イケメンじゃないですよ」

「木嶋さんコチラにどうぞ」

美島は木嶋を座らせ「で、話とは?」と振った。

「あ、そうでした。話というのはですね。田中さんがいるのでちょっと・・・」

「大丈夫ですよ。気にしないでください。私口だけは堅いので」

「そうですか。わかりました。話します。アマリリスが飛び立ち美島さんと別れ巣を回収しようとした時の話です」

そう話は木嶋達APEの研究員が清見筆頭にアマリリスの巣を回収するときまで遡る。

木嶋達は巣があるビルに辿り着きその場でなにか遭ったはならないと考え防護服を身につける。

要請したヘリで巣がある屋上に別班が辿り着きブヨブヨしたそれを傷つけることなくかなり大きめの透明な底がない箱に入れ、入れた途端底をウィィンと鉄の板が出現しそれを閉じ込めた。

そしてヘリで箱を浮かせ清見たちが待機している地面へと置く。

そして置いた途端透明な箱の一部分つまり側面がガバッと開く。

「よし調査するぞ。準備いいか?」

「はい!」

木嶋含む研究員はブヨブヨしたアマリリスの巨大な巣を調べようとまずは長い脚立を巣にかけ昇り中身を見た。

すると中にはあの大蜘蛛が入っていた。

「これはマズイ」

木嶋は脚立から降りようとしたが少し待っても大蜘蛛が動かず目の色が輝いてなくつまり生きてないと確信した。

「なんで生存してなかったんでしょうか?」

美島は木嶋の話を遮ったのを申し訳ないと思いながらも疑問を木嶋にぶつける。

「それが調べてわかったんですがアマリリスはこの大蜘蛛の成分を吸ってから飛び立ったんではないかと」

「なるほど。孵化したてであまり栄養がなく羽広げても飛び立たなかったんですね!」

「な、なに?何のこと!私にも教えてよ!」

絢子は話の置いてけぼりにされたので嫌だったのか少しムスッとし美島は「ごめんごめん実はね・・・」と起こった出来事を話す。

「へぇ。そんなことがあったんだ。広報には何も情報が降りてこないからさぁ。何が起こっているんだとの電話が殺到よ。こちら情報が来てませんのでお伝えできませんと平謝りよ」

絢子は再度グイッとハイボールをプハァと飲み干した。

「結構大変だったね」

「だぁかぁらぁあんたはいつも他人事口調なのよ!」

「絢子酔っ払ってる?」

「うん。かなりね」

木嶋の前でも構わず酔っ払い寝落ちしてしまった絢子。

「寝てしまいましたね・・・」

「すみません。いつもこうなんですよ」

美島は木嶋に謝った。

「いえいえ」

木嶋は手を振り「あ、そうだ。今日来たのはもうひとつ目的があるからでした。つい忘れてしまいました。えぇとこれです」とポケットから長方形の小さな紙を出した。

「こ、これって!今人気でチケットが取りにくいテーマパークのチケットじゃありませんか!」

「えぇ友達が取ってくれたんですが行かれないことだったんでその・・・。美島さん!」

「はい」

「2人で行きませんか?」

美島は驚愕し“こ、これはま、まさかデートの誘い?キャァ!”と心で呟き木嶋の誘いに「はい。是非!」とOKした。

承諾した美島に木嶋は目面の笑みをしいつ都合が良いか早速スケジュール調整をした。

「この日はどうですか?」

スケジュール帳を手にしとある日付を指定した。

「あ、この日は丁度非番日なのでいいですよ」

「じゃこの日にしましょう」

テーマパークに行く日が決まりウキウキ気分になりテンションが爆上がりになった木嶋。

「この日を楽しみにしています!」

「はい!私も楽しみです」

美島は木嶋に劣らず満面の笑みをした。

「じゃ僕はこれで・・・」

木嶋は立ち上がりすかさず美島も立ち玄関まで一緒に行く。

「ここでいいですよ」

玄関で美島に言った。

「いいんですか?外まで送りますよ」

「いや絢子さんが寝ているので側にいてください」

「わかりました。ではお気をつけて。おやすみなさい木嶋さん」

木嶋は「はい。おやすみなさい」と美島に言い玄関の扉を閉めるのである。

つづく

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