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アマリリス 前編

血相をかきながらもタクシーを捕まえ乗る美島。

タクシー内では普段スマホをイジるが今回ばかりはイジる暇なく両親に電話を何度もかけるが反応がなく少しの間あけようと思いスマホを胸に当て待ちわびる。 するとブゥブゥとバイブ音が鳴り響き両親からかとスマホを見ると上司と表示され出ないわけにはいかないと電話に出た。

「美島か!今何処にいる?」

「今現場に向かっています」

「そうか。我々はすでに現場に着いて武装準備をしている。お前も現場に着き次第準備しろ」

「了解!」

スマホを切り再び両親に電話するが繋がらず現場に着いた。

現場に着き巨大な白い物体を見ようと見物者が多数おり黄色の立入禁止テープで立ち止まっている。

タクシー降り野次馬の中をかき分けながら立入禁止テープの前まで進む。

「ここからは立入禁止です。下がって!」

野次馬をここからは通してはいけないという使命感ピッシリの複数の警察官がそこにはいた。

「あのすみません私地球防衛軍の美島ですが・・・」

「はい?どなたか知りませんがここは関係者以外立入禁止です!」

「その人は本当に地球防衛軍の隊員だ。通してやってくれ」

立入禁止のテープの向こう側で男が近づいてくる。

直虎だ。

「直虎!」

警察官がテープを上に上げ美島はそれをくぐり直虎の方へ近づく。

「ありがとう直虎。助かったよ」

「美島隊員早く行きますよ」

少し素っ気ない態度で前を向きあるき始める直虎に美島は「何怒ってるんだか」と小さく呟く。

直虎と共にしばらく歩いていると防衛隊員がわんさか集まっている所に着いた。

「おう美島。来たか」

「隊長!遅れてすみません」

美島は上司で憧れの隊長である杉道与太郎に少し遅れた事に関しての謝罪をした。

「いいさ。それより皆待ってるから早く簡易更衣室で着替えてこい」

「はい」

隊長の指示を受け手作り満載の簡易更衣室に行き中に入り着ていたジャージから用意している隊員服に着替えた美島。

さっと手慣れた仕草で着替えそこから出て隊員たちが集っている所に小走りで着いた。

「隊長!おまたせしました」

「よし皆情報によればあの白い物体があるビルには何人か取り残されている人がいるとのことだ」

隊長である杉道は少し前に知った情報を隊員達にも知らせた。

「私の両親があそこに住んでいるんです。連絡がつかずにいるんですが・・・」 「なに!もしかしたら避難所にいるかもしれないな。確認させよう。おい」

杉道は他の隊員の目を見て首を縦に振り隊員は避難所に確認するため防衛軍テントに向かって走った。

しばらくすると小走りで杉道の所で立ち止まった隊員は口を開く。

「隊長。確認した所美島避難所のリストの中に美島の名はないとのことでした」

「なに!ではまさか・・・」

杉道は上を見上げジッと白い物体があるビルを見つめる。

「あの中にいるってわけか!美島。君はここで待機していろ」

「隊長!私の手で両親をいや、取り残されている人を救いたいんです」

「・・・辛い結果になってもか?」

「はい!」

美島の覚悟を汲み取った杉道は「よし」とこちらも覚悟を決めた。

すると数十台のワゴン車がこちらに向かっており先頭車がププゥとクラクションを鳴らし野次馬をビビらせながら立入禁止のテープの前で停まり警察官がコンコンとドアの窓を叩くとウィィンと窓を開けた。

美島達からは見えにくかったが何か提示したらしく立っていた警察官が立入禁止テープを上げ数十台の車を入れたではないか。

「何だ何だ!あの数十台の車は!」

他の隊員達が驚きその中にいた直虎が口を開く。

「まさかアイツらでは?」

「アイツらって?」

美島が直虎に問うていると数十台の車の先頭車が美島達の前に停車した。

その車のドアが開き白衣姿の男女5人が降りてきた。

「直虎あの人達誰?」

ヒソヒソ声で再び直虎に質問した美島。

「知らないんですか。アイツらAPEの研究者達ですよ。

アイツら自分の研究のためなら何でもする輩ですよ!」

「へぇそうなんだぁ」

美島は自分から聞いたにも関わらず興味なさげな返答をしながら研究者と聞いてとある人物を思い出した。

そう木嶋である。

非常事態に不謹慎だなと思い今は考えるのをよそうと頭を振り現状に集中した。

「あれ美島さん?」と聞き覚えのある声がし振り向くとそこにいたのは木嶋だった。

「木嶋さん!どうしてここに!」

「美島さんこそどうしてここに?」

木嶋は美島の姿をジロッと見て察した。

「美島さんあなたAPEの隊員だったんですか!」

驚愕した木嶋と同様に美島も驚愕した。

何故か、それは木嶋が白衣姿で現れたからである。

「美島隊員。この人ご存知なんですか?」

「まぁうん。この人は私の命の恩人だから」

「命の恩人?」 美島は直虎にあの時の状況を伝えた。

「なるほど。そんな事があったんですか。で気づいたらこの人に助けてもらったと?」「そうなのよ」

「でも本当に助けてもらったんですか?ただ近くにいただけじゃないですか?」

直虎は疑心暗鬼の目で木嶋を見た。

「いや本当に助けてもらったんだってば!疑ってんじゃないよ。ね木嶋さん」 少し困り顔になった木嶋はゴホンッとせきばらいをし口を開いた。

「あの時同じその隊員服を着ていたんですね。僕少し目が悪いので気が付きませんでした」

「そうだったんですね。私も木嶋さんが研究者だと仰ってましたがまさかAPEのだったとは気づきませんでした」

「すみません。上司から口止めされてまして」

「私が何だって?」

すると突然木嶋の後ろから少し背の高い女性が話しかけてきた。

「木嶋。なんでAPEの隊員と話しているんだ。行くぞ!」

「木嶋さんそちらは?」

「あぁこちらは僕の上司である浦川清見です」

オドオドしながら上司の自己紹介をした木嶋は「じゃ僕はこれで・・・」と清見の後ろに付いて行った。

「APEの研究所の長まで来るとは・・・。あの白い物体は一体何なんだ?」

「普段敵対しているが今回ばかりは共闘しなければならないかもしれないなぁ」

杉道は悟るような顔をし白い物体を見つめる。

しばらくして研究職員は何かを組み立ていた。

「APEの隊員諸君。あの白い巨大な物体が何なのか調べるため透視装置を組み立てている。そのため人命救助は今しばらく待ってくれ」

「何を言ってるか!あのビルの中に何人か人がいるんだ。早急の救助が必要だ!」

温厚で有名な杉道が少し怒りを込めながら発言した。

それを見た清美が更に続ける。

「気持ちはわかるが私達も仕事なんでね」 「私達も悪ものの宇宙人や怪獣を倒したり人命救助するのが仕事です!もう我慢できない。直虎行くよ」

「了解!」

美島と直虎はビルに向かって走り出す。

「あっ、コラ!美島、直虎!勝手に動くな!」

杉道の怒号を無視し二人はビルの入口辿り着く。

「ようし。直虎行くよ」

「了解!」

入口の中に入ろうとしたその時「美島さぁん」と再度聞き覚えのある声がしまさかと思いながら振り向くと白衣姿の木嶋が息を少し切らしながら美島の目の前に辿り着く。

「木嶋さん!なんでここに!」

「いやぁ美島さんの事が気になって」

「えっ!」

少し顔を赤くした美島と木嶋の間に入ったのは嫌味を言う気満々の直虎だ。 直虎は汗だくの木嶋に詰め寄った。

あの嫌味を言った長に行けって言われたんですか!正直言って邪魔です!帰ってください!」

「いえ帰りません。上司の命令で着た訳なく僕の意思で着たんです!そこは誤解しないでください。それに僕は元救助隊にいたんであなたよりは役立つと思いますよ」

何だと!」

木嶋により詰め寄る直虎の肩に美島が「まぁまぁ」と言い手を置き木嶋との距離を開けそして彼レの間に入る美島は木嶋の方に向き口を開ける。

「木嶋さん。あなたのお力お借りしていいですか?」

「はい!喜んで!」

木嶋は満面の笑顔で答えた。

「いいんですか?市民を巻き込んで」

「木嶋さんはAPEの一員でNO市民だからいいでしょ。それに何かあったら私が責任取るよ」

「いや責任は私が取る」

無線で杉道の声がし驚いた美島、直虎の両隊員はすかさず「隊長!」と叫んだ。

「隊長すみません。私・・・」

「最後まで言わなくてよい。分かってるよ。美島。君の正義感は我々以上に強いことと命令無視してまで人を救いたい気持ちは私がよく知っている。だから救ってこい。そして直虎と木嶋研究員、これは命令だ!美島と共に取り残された人々を救出せよ!」

「了解!」

「分かりました!」

杉道が無線で話し終わると杉道の無線機を取りいや、これは奪ったと言ったほうが正解であろうか。奪い取ったのはそう清美だ。

「冗談じゃない。APEの一員とはいえ木嶋は研究者だ。帰ってこい木嶋!」

「嫌です」

あっさりと断った木嶋を見ていた2人は見合わせクスクスと少し笑った。

無線で断られた清見は呆れていた。

「そっちがその気ならこっちも勝手に調査するからな!」

憤慨寸前の清美はスタスタと調査員が待つ所へと歩いていった。

その姿をみた杉道は「清見・・・」と発したのだった。少し笑いリラックスできた美島は「よぉし」と気合を入れるため両手で顔を叩いた。

「行きましょう木嶋さん、直虎」

「はい」

気合いを入れた3人はビルのロビーに辿り着きエレベーターでとりあえず美島の両親が住んでいる部屋の階へと行こうとしたが案の定故障しており階段で行かざるを得ず仕方ないと3人顔を見回し階段で中階へと目指すのであった。

一方その頃清見率いる研究所チームは白い物体が何たるか調べるため透視できる装置を組み立てていた。

だがその装置を組み立てるのも一苦労である。

無理もない。

なんせその装置はバカでかく軽量化もあるが精度が悪くそれのほうが精度ががグゥンと上がるのである。

二十分かかっただろうか。やっと組み立て完了し「よし!全員自分の持ち場に付け!」と清見の号令で研究所職員達は慌てながらもそれぞれのPCの前に座り清見は大型装置のスイッチを入れ自分もそれから離れ設置した簡易ラボの中に入る。

「第一ステージクリア!」

職員達の大声が響き渡り続けて「オールクリア!いつでも透視OKです!」とドーナツ片手にもう片方の手でサムズアップした葵を見た清見はそれを合図と確認し「よぉし!透視開始ぃ!」と白い物体を指差し巨大装置はゴォォとバカでかい音をたてながら透視した。

ラボの巨大モニターで透視越しに見ている白い物体を見た清見達は絶句した。

「嘘だろ!まさか」

「何なんだこれは!」

パッと清見が後ろに振り向くとそこにいたのは元夫で現在はAPEの隊長である杉道であった。

「与太郎!なんでここに・・・。それに見ぃたぁなぁ。これは極秘だ。他言無用だぞ」

「そんなこと言ってる場合か!これは一体何だ?」

「教えるから無線機貸しな。木嶋に伝えることがある」

相変わらずの荒い言い方だなと感じつつ今はそんなこと言ってる場合も争ってる場合でもないと清見に無線機を渡した。

「こちら清見だ!木嶋に変わってくれ」

「わかりました」 美島は無線機を木嶋に渡す。渡された木嶋は美島たちにも聞こえるよう音量を大きくした。

「どうしました?」

「木嶋。アマリリスだ」

「なんですって!」

「どうしたんですか?木嶋さん。アマリリスって?」

木嶋は興奮した感じで答えた。

「アマリリス。それは伝説上の生物の名です。我々チームは伝説の生物に日本の花言葉をつけているんです!」

「そうなんですか・・・。ん?どうした直虎?」

あっさりした返答をした美島をよそに少し難しい顔をした直虎は口を開く。

「アマリリスの花言葉って確か・・・。輝くなんとかだったような・・・」

「えぇ。輝くばかりの美しさです」

木嶋が答えたので直虎は苦虫を噛むような悔しい顔をした。

「なぜアマリリスってつけたんです?」

木嶋は音量を戻した無線機を美島に返し耳につけ清見が何やらグチグチ言ってるなと感じながら無視し耳にイヤホンをつけ前を向き小走りで階段を上がりながら美島は質問した。

その質問に木嶋は息切らせることなく答えた。

「はい。先日昔の見つけた古文書にはこう書かれていました。金色に輝く伝説怪獣、姿は見惚れるほど美しい・・・と。それには名は書かれておらず花言葉が一致するアマリリスと名付けたんです」

「まさかあの白い物体は!」

直虎は木嶋の方へ振り向き大声で発した。木嶋はそれに答えた。

「そうです。あの白い物体はアマリリスの卵だと思います。でも直虎隊員、白い物体が怪獣の卵と分かってどうする気ですか?まさか内側から壊す気じゃないでしょうね?」

「なんでわかった!」

「まぁそんなに怒らないでくださいよ。なんとなくですよなんとなく」

「俺をおちょくるなよ!」

前を向いて進んでいた美島は直虎の方へ振り向き1段2段と降り再び彼の方に手を置く。

「よせ直虎。今は怒ってる場合じゃないだろ」

「し、しかし・・・」

美島は少し怒りの感情に満ちた直虎を冷静にさせるため「落ち着け直虎」と声をかける。

「木嶋さん。後輩が無礼なことを・・・。すみません」

「いえ。僕にも非があるのですみません」

お互い謝罪をし「行きましょうか」と前を向き進み続けた。

そしてやっと美島の両親が住んでいる部屋の階へと辿り着く。

「やっと着いた」

非常階段入り口の扉を開け廊下を歩く3人。

するとカサッと音がしたと感じ美島はパッと振り返る。

「今のカサッて音なに?」

「そんな音しました?」

キョトンとした直虎をよそに美島は木嶋に問いかける。

「木嶋さん音しましたよね?」

「えぇしましたね。まさか・・・」

木嶋が不可解な事を言い「えっ?」と彼を見た途端ドスッと何か着地した音がしその方を振り向くとなんと天井ギリギリの高さがある大蜘蛛が現れたではないか。

「何だこいつぅ!」

突如現れた巨大な大蜘蛛にビビった直虎は「こ、こっちに来るなぁ」と銃を乱射する。

その一発が当たったか知らないが大蜘蛛は美島達に後ろを見せ何処かに行ってしまう。

「直虎落ち着け!」

美島はまだビビっている直虎の方に手を置きこちらの方に振り向かせ顔を両手で包みジッと見つめ「深呼吸をしろ!直虎!」と大声で言い直虎は2度深呼吸をした。

「落ち着いたか直虎」

「はい・・・。すみません。もう大丈夫です」

「そっか。よし先に進もう」

先に進もうとしたその時木嶋が大声で「美島さん!」と発したのでパッと勢いよく振り向き後ろを向き上を見ている木嶋の先を見ると今度は先いた大蜘蛛とは色が違う別個体と思われる数十体の小蜘蛛が天井をササッと美島達に向かって来るではないか。

「ここままではマズイ。一旦逃げましょ美島さん!」

「はい!いくよ直虎!」

「りょ、了解」

3人はすかさず前を振り向き走って逃げる。

逃げて数分経つがまだ追いかけてくる小蜘蛛。

「クソッ!まだ追いかけてきやがる」

「こうなったら!」

美島は走るのをやめ後ろに振り向くと同時に銃を構え追ってくる小蜘蛛に向かって「うりゃぁ」と叫びながら乱射する。

銃弾は数体の小蜘蛛にめがけ当たり天井から落ち息絶え少なくなると思いきや後から数十体の小蜘蛛が増えるばかり。

「キリがない。でもやるしかない。木嶋さん先に逃げてください!」

「しかし・・・」

「いいから早く!」

「あ、はい!」

美島に行けと言われ先に逃げた木嶋を見て「行ったね。よし直虎!私を引っ張って」と直虎に指示した。

「了解」

直虎は後ろを向いた美島の隊員服を引っ張り前へ進んだ。

地に靴の底が付いたまま後ろに引っ張られた美島は銃を小蜘蛛に向かって乱射する。

一方一人逃げた木嶋は美島に逃げろと言われ逃げたがその先が行き止まりで辺りをキョロキョロしながら少し引き返し歩いていると見覚えのある文字の表札があった。

「美島・・・ってまさか!」

するとババババッと銃の乱射音がし美島を引っ張る直虎の姿が見え「直虎さん!こっちです!」とかなりの大声で直虎に気づかせた木嶋。

木嶋の姿に気づいた直虎は気合を入れ彼に向かって猛スピードで向かう。

直虎と美島は木嶋の所に辿り着く。

「この部屋に入りましょう。さぁ早く!」

美島は木嶋の方へ振り向きチラッと表札を見ると美島と書かれていてので「まさか・・・」と言葉が思うよりも先に口にでていた。

木嶋はドアノブを手で持ちガチャッと開いたので少し驚いたが今は驚く暇はないと「ここに入りましょう。さぁ急いで!」と小蜘蛛が接近している最中、美島と直虎はアイコンタクトし木嶋に言われるまま部屋に入った。

バンと急いでドアを締めドドッと音を立てながら小蜘蛛が過ぎ去ったのをドアの隙間から確認した木嶋は疲れたのか少し壁にすがった美島と直虎を見てドアを締め美島の隣に座った。

「大丈夫ですか?美島さん」

「えぇなんとか」

少し疲れ顔の美島を見て木嶋はこりゃいかんと思い立ち上がり部屋の捜索を始める。

すると冷蔵庫の側に男女二人が倒れていた。

「大丈夫ですか!美島さぁんこっちに倒れている人がいます。こっちに来れますか?」

「はぁい!今行きます!」

美島は力を振り絞り立ち上がり疲れ切って壁にすがっている直虎を置いて木嶋の声がした方へとゆっくり歩き向かう。

冷蔵庫の所へ向かい木嶋の方に視線をやり次に倒れている男女に視線をやると美島は驚愕した。

「お父さん!お母さん!」

そう倒れてた男女は

美島の両親だったからである。

「えっ!こちら美島さんの両親だったんですか!」

「そうです。大丈夫?お父さん!お母さん!」

しゃがみ込み父親である幸次の体を少しゆすり「う、うぅ」と反応があったので木嶋に「ご両親の名前は?」と急に問われたが冷静に「幸次と悠美です」と答えた。

「ありがとうございます。幸次さん聞こえますか!」

木嶋は幸次の肩を優しく叩き反応を見た。

するとドカァンと美島と木嶋が壁にすがっていた場所からバカでかい音がし2人は何だなんだと思いながら見てみると直虎が衝撃で吹き飛んだかどうかは定かではないがキッチンの入り口近くに倒れていたではないか。

「直虎!どうしたの!」

薄れていく意識の中直虎は「美島隊員・・・。逃げて・・・」と指をさした。

指を指した方向を見てみると煙の中からカサカサッと音をたてながら3体の蜘蛛がそこにいた。

「何だってこんなところに」

先ほど群れで現れた小蜘蛛よりは大きく一番最初の大蜘蛛よりは小さい。この3体は中蜘蛛だと美島は頭の中でそう考えた。

「美島さんどうします?この状況少しやばいですよ!」

木嶋は少し焦りながら言い美島は口を開く。

「木嶋さん!この中蜘蛛は私が何とかします。だから私の両親と直虎をどこか安全な所へ連れてってくれませんか?」

「美島さんそんな無茶な!1人でどうかできる相手じゃないですよ!」

「そんな事やってみなきゃ分からないでしょ!」

「しかし・・・」

「考えてる暇があるなら行動してください。さぁ、早く」

木嶋は「わ、分かりました。美島さん本当に無茶だけはしないでくださいよ!」と直虎をおんぶしそのまま美島の両親の所へ行き両手で幸次と悠美を担いだ。

「お願いします。木嶋さん!」

「はい」

美島は中蜘蛛に銃を向けながら木嶋のためにドアを開け彼が走りながら去っていくのを確認しドアを閉めた。

「私が相手だ!どっからでもかかってきやがれ!」

美島の言葉が通じたか定かではないが真ん中の中蜘蛛が勢いよく襲い掛かってきたではないか。

一方そのころ直虎と両親を担いでいる木嶋は少し息が切れ倒れかかったその時、彼の肩を抑えた人物がいた。そうその人物こそ単独行動をした美島と直虎を心配して隊員を2,3人連れてきたAPEの隊長である杉道であった。

「大丈夫か?木嶋研究員。どうしたんだ?」

「あ、あなたは美島さんの上司の・・・」

杉道さんと言おうとしたが疲れて言えなかった木嶋。

だがこれだけは言っておかないといけないと考え杉道にかくかくしかじか今まであったことを言った。

「そうか。それは大変だったな。ここからは我々に任せろ!」

「いや僕は今から美島さんを助けに行きます。だから隊長さんは美島のご両親と直虎さんをお願いします」

木嶋はおんぶしていた直虎と担いでいた幸次と悠美をおろし彼らを杉道に任せ後ろを振り向き走っていった。

「1人で無茶だ!戻ってこい!木嶋研究員!」

杉道の声も届かないほどの距離を木嶋はかなりの速さで走った。

美島は襲い掛かってきた中蜘蛛の攻撃を受け手に傷を負っていた。

「ハァハァコンチクショウ。でも私は諦めない!絶対に!これでも食らいやがれ!」

傷を負いながらも銃を構え中蜘蛛の目に向かって

銃弾を打ち込む。

すると弾が中蜘蛛の目に命中しキュルゥと断末魔の叫びが部屋に響き渡る。

これで残り2体の中蜘蛛は怯むだろうと考えた美島。

だがその考えは飴より甘かった。

何故か、それは2体の中蜘蛛が同時に襲ってきたからである。

「終わった・・・」

銃は球切れで手に力が入らず美島は諦めかけていた。

しかしその時だった。

そんな美島の目の前に現れたのはなんと言ったら良いかわからないほどの人形ではあるがトゲトゲがありどう見ても人ではない異型の者だった。

 つづく

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