10節 僅かなる会話劇
『やあフォルティア』
「…………ユースティか」
『君のくれたコレ……「携帯電話」だっけ? 便利だねえ、わざわざ飛んでいかなくても話せるなんて。カリタシウスにもあげたら?』
「それでは結局全員に渡さなければならない」
『あ、そっか』
「……安寧圏は相変わらずか」
『そうだねー、今年の交配もいい感じ☆』
「………………はあ」
『何その反応!?』
『あ、それで本題なんだけど…………』
「何」
『君、月の代行者を放っといてるんだって?』
「問題はない」
『ありまくりだよ!? カリタシウスもフィデミアも機嫌悪かったよ!?』
「会ったのか。飛び回ることにかけては流石、我々の中で最速の羽を持つ天使だな」
『へへ……いや誤魔化されないからね!?』
「…………別に、こちらから接触せずとも待てば良い。奴らは必ず来るのだから」
『絶対に勝てる、と?』
「いや、半々だろう。だからこそ私も時間が欲しい」
『それはあの騎士くんを呼びつけたことと関係があるのかな』
「………………」
『君の沈黙は肯定さ。言葉の駆け引きが下手だねえ』
「……喋り疲れた」
『おや、そうかい。まあ、このくらいにしておこうか』
「ユースティ」
『何かな?』
「私は────何なのだろうな」
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「…………だってさ」
「そうか」
「携帯電話貰えなくて残念だったね」
「それは別にどうでもよい」
玉座の高い背板に軽く腰掛けた天使──ユースティは、その椅子の主である皇帝カリタシウスを見下ろした。カリタシウスは唇を撫でて考え込んでいるようだった。
「フォルティアは膂力に欠けるが技術には秀でている。もし本当に月の代行者が闘技に出ているなら、観察の余地も必要か」
「まあね」
フリルのついた黒いドレスの裾を弄りながら、ユースティは嬉しそうに言った。
「あの子も色々、考えてるんだなあ」
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研鑽階層。
ルーチェに協力を取り付けた後の宿屋にて。
「ねえ! ルーチェはさ、何で義肢なの? 手も足も!」
「はー? それ訊くか普通」
「だって気になるんだもーん!」
ラビの隣で寝台に転がっているアルカが、仰向けのまま、ちょいちょいとルーチェの服の裾を引く。それからごろりと転がって、紙袋を被った長身の男にも話しかける。
「あと、モン太……だっけ? ルーチェとどういう関係なのー?」
「も、もん!?」
モン太が驚いたように後ずさる。
ルーチェはガジガジと頭を掻く。それからモン太の背中を強く叩いた。
「コイツはオレの舎弟! あと参謀役!」
「…………もん!」
胸を張るモン太。アルカは眉を上げる。
「どこで知り合ったの?」
「そりゃガキん時────って、どこまで聞く気だよ」
「全部〜」
のんべんだらりと言ってのけるアルカに、ルーチェは根負けしたようだった。アルカの横にどっかりと座り込み、声を一段小さくして言った。
「あー、話せば長くなるんだが」
「手短に」
「殺すぞ」
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