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【1章完結】天使の國  作者: 遠梶満雪
2章 阿修羅研鑽階層イーラ・エト・インサーニア
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10節 僅かなる会話劇

『やあフォルティア』

「…………ユースティか」


『君のくれたコレ……「携帯電話」だっけ? 便利だねえ、わざわざ飛んでいかなくても話せるなんて。カリタシウスにもあげたら?』

「それでは結局全員に渡さなければならない」

『あ、そっか』


「……安寧圏は相変わらずか」

『そうだねー、今年の交配(・・)もいい感じ☆』

「………………はあ」

『何その反応!?』


『あ、それで本題なんだけど…………』

「何」

『君、月の代行者を放っといてるんだって?』

「問題はない」


『ありまくりだよ!? カリタシウスもフィデミアも機嫌悪かったよ!?』

「会ったのか。飛び回ることにかけては流石、我々の中で最速の羽を持つ天使だな」

『へへ……いや誤魔化されないからね!?』


「…………別に、こちらから接触せずとも待てば良い。奴らは必ず来るのだから」

『絶対に勝てる、と?』

「いや、半々だろう。だからこそ私も時間が欲しい」


『それはあの騎士くん(ロチェスター)を呼びつけたことと関係があるのかな』

「………………」

『君の沈黙は肯定さ。言葉の駆け引きが下手だねえ』

「……喋り疲れた」

『おや、そうかい。まあ、このくらいにしておこうか』


「ユースティ」

『何かな?』

「私は────何なのだろうな」


──────────────────────


「…………だってさ」

「そうか」

「携帯電話貰えなくて残念だったね」

「それは別にどうでもよい」


 玉座の高い背板に軽く腰掛けた天使──ユースティは、その椅子の主である皇帝カリタシウスを見下ろした。カリタシウスは唇を撫でて考え込んでいるようだった。


「フォルティアは膂力(りょりょく)に欠けるが技術には秀でている。もし本当に月の代行者が闘技に出ているなら、観察の余地も必要か」

「まあね」


 フリルのついた黒いドレスの裾を弄りながら、ユースティは嬉しそうに言った。


「あの子も色々、考えてるんだなあ」


──────────────────────


 研鑽階層。

 ルーチェに協力を取り付けた後の宿屋にて。


「ねえ! ルーチェはさ、何で義肢なの? 手も足も!」

「はー? それ訊くか普通」

「だって気になるんだもーん!」


 ラビの隣で寝台に転がっているアルカが、仰向けのまま、ちょいちょいとルーチェの服の裾を引く。それからごろりと転がって、紙袋を被った長身の男にも話しかける。


「あと、モン太……だっけ? ルーチェとどういう関係なのー?」

「も、もん!?」


 モン太が驚いたように後ずさる。

 ルーチェはガジガジと頭を掻く。それからモン太の背中を強く叩いた。


「コイツはオレの舎弟! あと参謀役!」

「…………もん!」


 胸を張るモン太。アルカは眉を上げる。


「どこで知り合ったの?」

「そりゃガキん時────って、どこまで聞く気だよ」

「全部〜」


 のんべんだらりと言ってのけるアルカに、ルーチェは根負けしたようだった。アルカの横にどっかりと座り込み、声を一段小さくして言った。


「あー、話せば長くなるんだが」

「手短に」

「殺すぞ」

いつもありがとうございます!

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