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今日、防災の日にしない?

作者: 藤倉楠之

 大変な暑さが続きますね。

 夏休みの家族の食事に頭を悩ませている家事担当者の皆様、お疲れ様です。

 生きているだけで自分をほめてあげたくなるような酷暑のなか、一日に三回(おやつが必要なご家族がいる方は四回以上)やってくる、『今日なに食べる?』問題。


 特に、普段は学校や園で給食を食べてくる年代のお子さんをお持ちのご家庭では、外で発揮してくるはずのエネルギーをありあまらせ、みなぎらせている子どもたちの面倒を見ながらの食事の準備となる方が大半ではないでしょうか。


 深刻です。


 このエッセイでは、この問題に一つのご提案をしたいと思います。


   ◇


 日本のほぼどこで起こってもおかしくない、地震や水害。物流網が数日麻痺したときのための非常食の備蓄、皆様のご家庭ではされているでしょうか。

 農林水産省の指針では、最低でも三日、可能ならおよそ一週間ほどの食糧備蓄をすることが望ましいとされています。

 自然災害に限らず、例えば、コロナウイルスへの感染が判明し、家族全員が自宅待機となった時にも、この食料備蓄が活躍することは、言うまでもありません。


 ところで、この備蓄食料、普段から、家族みんなで食べていますか?


 賞味期限が間近になった時には食べることもあるでしょう。そのときに、大人だけ、とか、なんなら、主婦(主夫)の一人ランチの時に消費してしまっていたりしませんか?

 これは、とても危険な解決方法です。ダメ、絶対。


 緊急用の備蓄食料を本当の意味で必要とするとき、というのは、家庭に何らかの非常事態が起こっているときです。その時に、より不安定で心が揺れやすい小さなお子さんたちが、食べ慣れない非常食を食べることになったら。

 味の違い、においなどに、普段以上に敏感になって、受け付けないお子さんも出てくることと思います。

 ただでさえ、長期保存用の備蓄食料の味付けや食感は、普段、新鮮な食材で作られた料理ばかり口にしているお子さんに、大人が思う以上の違和感を与えることも多いのです。


 ですが、緊急事態下で新鮮な食材を集めるのは当然ながら至難の業です。

 どうするか。


 ここで、逆転の発想をしましょう。


 「防災の日」として、家族みんなで備蓄した食料を食べる日を作りませんか? というのが、このエッセイの提案です。

 普段から防災食を食べる機会を積極的に作り、その味に少し慣れておけばよいのです。

 お湯でふやかす長期保存米の出来上がりをわくわくしながら待った時間。缶入りのパンを開けたときの驚き。家族で楽しくおしゃべりしながら食べたカップラーメンの味、レトルトご飯とレトルトカレーの味。そうした幸せな記憶があれば、非常事態に陥った時でも不安な心を少しでも慰め、食べたものを心のエネルギーに変えていくことができるはずです。


 折からのコロナ禍で、外食にも気をつかう場面が多く、ままならないなかで、食事のマンネリ化に悩んでいる家事担当者の皆様。ベランダに机といすを出したり、庭にピクニックシートを敷いたりして、カップラーメンやレトルト食品を食べるだけで、ちょっとしたキャンプ気分、登山気分になりませんか? それも大変なら、普段はダイニングで食べる食事を、リビングの電気を消して車座で懐中電灯で食べるだけでも、イベント気分を味わえると思いませんか?


 災害時には、水も貴重な資源として節約しなければならないこともあるでしょう。非常食と合わせて、紙皿、紙コップ、割りばし、使い捨てスプーンなどを一度使ってみて慣れておくことも、いい練習になります。


 コンビニのおにぎりや、菓子パン、インスタント味噌汁や缶入りのスープを食事にすることだって、立派な防災訓練です。こうした簡易の食べ物が避難所などで配られることもあるでしょう。それまでに家庭で食べたことのある食品なら、子どもたちにとって、安心感が全く違います。


 少し大きくなったお子さんには、自分でインスタント食品やレトルト食品を温めてもらいましょう。これからお留守番をする機会も少しずつ生じてくるかもしれません。そんな時、もしも急な事情で大人が予定していた時間に帰れなくても、「前一緒にやったことがあるんだから、レトルトくらい自分で温めて食べられるよ」と胸を張って言えるようになるという経験は、お子さんにとって、とても誇らしいのではないでしょうか。


 そして、こうした食事を実際に家族で繰り返すことで、自分たちの家庭にとって、災害時に必要な食べ物がなんなのか、ということがはっきり見えてきます。


 食べてみると、防災用に開発された食品の一部は、好みに合わないと感じる方もいらっしゃると思います。ご家族でそんな会話をして、減ってしまった在庫を何で補充したらいいか、考えてみるのもいいのではないでしょうか。数年保管できるアルファ化米や缶入りパン、定番の氷砂糖と乾パンのセットなどが口に合わないと感じれば、数か月保管できるカップ麺やレトルト食品を購入し、食べて買い換えていくことができます。時々食べていれば、好みの味、食べやすいサイズのものも分かって、なくなった分を買い足す時にも役に立ちます。


 出来合いの味付きの食品を複数ならべるとしょっぱすぎる、と感じる場合は、味付けしていない水煮缶、蒸し煮缶や、食塩無添加のトマト系野菜ジュースなども役に立ちます。果汁が多く配合されたものやニンジン系の野菜ジュースは糖分が多いので、喉の渇きを促進してしまうことがあるのです。こうしたことも、時々家族全員で食べていればこそ、各人の好みと合わせて把握することができるはずです。


 さて、ここまで、平時に非常食を食べることのメリットを幾つかお話ししてきました。

 ですが、何より、これだけ酷暑が続いて、コロナ禍のせいで外食や外出もままならず、子どもの気を紛らわすようなお友だちとのホームパーティーすら気軽にはできない中で、園児・学童・生徒に相当するお子さんをご家庭で抱えているという現状そのものが、緊急事態、災害級の出来事です! ここ、とっても重要。周囲の方にも声高に宣言してしまいましょう。


 堂々と、カップ麺や出来合いのおにぎりを使い捨て容器で食べる日があったっていいじゃないですか。胸を張って、防災の日を楽しんじゃいましょう。わいわい、これがおいしいとか、これは好きじゃない味だとか、遠慮なく言い合ってしまいましょう。

 それから、おいしいカップ麺を見つけて、特売の日に買い込んでおきましょう。開けたらすぐに食べられるような食品を家に置いておきましょう。

 子どもに、節度を持って時々カップ麺や菓子パンを食べさせるのは、罪悪でも何でもありません。それはお子さんの心と身体ををいざというときに守る大切な経験の一つですし、今日の家事担当者の皆様の笑顔と健康を守る、大事な砦の一つなのです。


   ◇


 日々、一家事担当者としてこんな屁理屈をこねまわしつつ、永遠に終わらないんじゃないかと思う夏休みを過ごしています。同じ境遇の皆様へ、心からのエールを送ります。

 私たちはよく頑張っている。これは手抜きではない。戦略的かつ計画的な、作戦行動の一つなのです!





たった今もまさに、コロナに豪雨にと、様々なご事情で必要に迫られて非常食を口にされている方もたくさんいらっしゃることと思います。心よりお見舞い申し上げます。



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[良い点] これいいですね~。 ( *´艸`)
[良い点] そうです!大事なんです! ローリングストックは定期的に食べる!! しかも、災害時(特に地震ですが)給水管・排水管が破損していると、水は出ないじゃなくて、使っちゃいけないんですって。マンショ…
[良い点] いいですね!  何もなくても防災の日!  我が家では、主に1月17日と3月11日に非常食を食べる(消費)する日に当ててます  最近はアルファ米もフリーズドライ食品もおいしくなって、保存パン…
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