番外「むかしむかしの」
「魔法使いはいたよ。」
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とある村。
みんな魔法使いに願った。
これを叶えてあれを叶えて。親に強請る子供のように。
だが、中には醜い怨嗟の様な願いを叶えてほしいと乞い願う者もいた。
その願いを【魔法使い】は叶えてあげなかった。
魔法使いは人間全員を愛していた。よく言えば博愛主義。
悪く言えば誰も愛していないともいえるだろう。
願いを断った【魔法使い】に逆上した人間は【魔法使い】の悪い噂を流した。逆恨みもいいところだった。
だがあっけなく村人はその噂を信じてしまった。
【悪魔】
人間は未知の力を,恐れた。
善人がいつまでも善人なわけがない。
今までの恩を全て忘れてしまったのかと思うほどに村人は残酷だった。
その中に1人、【魔法使い】を助けようと試みる1人の少年。
【魔法使い】様がくれた薬のおかげで前みたいに母さんは元気になったんだ!
叫ぶ。
少年は火炙りの刑に処されている、1人の【魔法使い】を助けようと縄を解こうとする。
自身の体が燃えようと関係ない。
ああ、【魔法使い】は涙を流す。
炎が消えた。
【みんなを愛してはいけなかった。】
魔法使いは村人を全員殺してしまいました。
村ひとつが壊滅したと、途端に隣町から隣町まで広まった。
魔女狩りが始まった。
私のせいだ。
あの時、私が村人を皆殺しにしたせいで、ほかの【魔法使い】が次々殺された。後悔をしてもあとの祭り。
遅きに失した。
もう死んでしまおう。罪を償いたい。
だけど私の死だけでは何も返ってこない。
後で知ったが私を助けた少年の父親は私に怨嗟の願いを乞うた男であった。
「殺してほしい」
とある人間の女を殺したいと。
それは、少年の母親だった。
違和感。
おかしな話だ。少年の母親は生来健康だったのに、なぜ余命幾許もなく死に瀕していたか。
呪いだ。
あの呪いはあの男がかけていたのか。
あの男は私に頼る前から自分の妻に呪いをかけていたのだ。だが人間の呪いに即効性はない。
呪いが体を蝕み全身に広がり切るぎりぎりのところで私は彼女を助けた。
なんのために呪いをかけていた?
人間の感情に意味を求めるのは合理的とはいえない。
ある仮説がたった。
嵌められたんだ。
私が少年の魂を汚した。
これからは村でただ1人生き残った彼の魂を護ろう。
そう決意した。
むかしむかしの【魔法使いのお話】