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4.Invaders Championship 3rd①

眞優未がどうして翔を意識するようになったのか、わかるような話を書きたくなりました。

 かれこれあって。今日は大会の3日前なのだが。


「5点+5点で…ぴったりリーサル。よし!」

「おお、いいね!粗がなくなってきた。これなら時の運次第では優勝もあり得ない話じゃないよ!」

「運次第なんだ…」

「結局カードゲームだからねぇ…」


 そんな話をしていると。当然至る疑問がある。そろそろ僕も話さなきゃいけないと思うんだが…聞かれてもないことを言いたくもないんだよなぁ…。


「なんか運をあげる方法ってない?」

「ない!お祈り!」

「Oh…きっぱり言うね…」

「逆にあると思って聞いたなら頭おかしいと見なすけど?」

「まあさすがに思ってない。カードゲーマーが挙って参る神社とかないのかなって…」

「あー…そういうの気にするタイプ?」

「うん。結構。かなり。」

「そういうの良く知らないから、僕の知り合いに聞いてみる?LINEにTwitterのアカウント送ろうか?」

「あっ、うんよろしく…って知り合いいたの?」

「うん。ネット弁慶だから。」

「ああ…」


 その心底納得したみたいな態度をやめろ。その通りだけど。


「ほら、その辺なら割と初対面でも気さくに絡んでくれると思う。DMも開いてるはずだし…」

「翔くんの名前出していい?」

「ああ、いいけど僕HN(ハンドルネーム)カタカナで『ショウ』だから気を付けて。本名も知ってはいるはずだけどきょとんとされるかも。」

「はーい…って、この名前見たことあるんだけど?この人とか、CS1stのグランプリじゃない?」

「ネット弁慶なので。」


 もっとほかの言い方はないのか?というほどこの言葉を使っているし、他の言い方はあるんだが、なんとなく僕の中のお茶目な僕が言わないでおいたほうがおもしろそうだと思っているのだ。決定的なことを聞かれたら答えるけどな?


「あっ、返信帰ってきた。『ショウくんの彼女さんならとっておきのところを…』だって!」

「…彼女って自己紹介したの?」

「したけど…」

「なんてことを!」

「へ?」

「ああああああああああああああ…」

「何かいけなかった?」

「次会ったとき絶対からかわれる…うごおおおおおおおおおおおお…」

「ええっと…てへ☆」

「ううううううううううう…DM、DM…」


 そういってTwitterを開くと…紹介した3人からメッセージが来ていた。CS1st優勝者のカイリ。公認ジャッジの任命権を持つ小日向さん。あと、普通にプレイヤーのカラト。三者三様の返答が帰ってくる。


カイリ『彼女できたって本当?おめでとう!』

小日向さん『彼女できたってマジ!?きゃーっ!(≧∇≦)』

カラト『羨ましいぞコラ!写真送れ!』


 …なんだこいつら。まあ、義理で返しといてやるか。前者二人には


『それは本当。漏らすなよ』


 これでいいとして。カラトにはどう返したものか…


「有名とかいうし、すごい人とパイプあるし…翔くんって…何者?」

「あー…ネット弁慶?」

「それ以外言えないの!?」


 まだネット弁慶でごまかせそうなんだよなぁ…この言葉にならいくらでも甘えられそうな包容力がある。


「そういえばだけど。」

「何?」

「翔くんって、このゲームめちゃくちゃ強いけど、なんで大会とかでないの?出ればわかるって言ってたけど…」

「あー…」


 そろそろネット弁慶じゃごまかせなくなってきたな。まあめちゃくちゃ強いってほど強くはないけど。たしかにかなりの時間をこのゲームに費やしているので、大会に出ないというのはかなり不自然だろう。観念して説明するか…


「僕、実は公認ジャッジなんだよ。だから大会の日は仕事がある。それで大会には出られない。去年もジャッジしてたから、有名人とパイプがあるの。」

「え゛」


 ものすごい表情で固まる眞優未。あれ、思ったより驚かせてしまったか?じゃあもうちょい刺激の強いものをぶち込んでみるか。


「あと、その関係で会場の近くに宿をとってもらってて、一人まで同行OKなんだけど…一緒に泊まる?」

「ちょ…っと、考えさせて。」


 あれ?これ、もしかしてやばい状況?なに?付き合いたてのカップルのお泊りってやつ?完全に合理的にしか考えてなかった…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 結局、あの後異常にテンションをあげた眞優未に「うん、行く!ぜひ行く!ぐふふ…」と返されてしまい、自分から言い出した手前、断れる要素もなかったので請け負ったのだが…。そもそも僕はなぜ有名人を紹介したんだろう?親しい人が有名人しかいないっていうのは…否めない。僕と仲良くしてくれるのなんて、人間性のよくできた有名人ぐらいなものだ。こんなド陰キャと仲良くしてくれるのなんて…。


「何黙ってるの?」

「うわっ!」

「そんなに驚かなくても…」


 そうだ。いまジャッジの顔合わせ中だった…3度目とはいえまだ飲み会の空気感ってなれないな。僕は自分の目の前のジョッキからジュースをちびちび飲みながら端で気配を消すのがこの飲み会での仕事みたいなところがあるので、その仕事を淡々とこなしていたのだが…


「ショウくん、彼女さん連れ込むんだって?」

「…半ばあっちが無理矢理みたいな感じで。」

「ひゃー!!!いいね!青春(アオハル)だね!」

「その言い方古いですよ、小日向さん。あと、僕なんかじゃなくて構う相手いるでしょ。」

「つれないにゃぁ…秘密にしてあげてるんだからこっそり冷やかすくらいさせてよ!」

「それが目的ですか…」


 ぶっちゃけ、今掘ってもなにも出てこないんだけど。なんどそう言っても引き下がってくれなさそう。


「で?どうなの?どこまでいったの?」

「…僕だって怒るときは怒りますよ…」

「きゃー、こわーいっ!」


 飛び退いていく小日向さん。読めない人だな。


●●●●●●●●●●


 翔くんはどうやらジャッジの顔合わせに行くらしく、今日は早めにお開きとなった。普段の私なら死ぬほど引き止め、彼を困らせていたことであろうが、今日の私は一味違う。…いや、普段でもそんなことしないわよ!前言撤回!でも、一緒にお泊り…一緒にお泊りかぁ…。

 ふーん?ずいぶん積極的じゃない?へぇ~?私の女の魅力にメロメロってこと?


「うぇへへへへ…」


 まあわかってたわよ?だって、私以外の女の人…私より美人な女の人の配信を見て感じなかった魅力を私に感じてくれたんだもんね?そりゃあメロメロに決まってるわよね?ふっふーん?

 …現実的な話、二日間にまたがる大会で、宿の確保を忘れて困っていたところではあった。実際助かってはいる。でもまだ付き合って1週間も経っていないのにお泊りって…そういうこと!?やっぱり私からは大人の色気がムンムンだったってこと!?まあね?スタイルには自信あり!

 まあ、そんなこと微塵も考えていなさそうではあったのよね…私が自分の欲望を隠さないあの返事をしたとき若干引いてたし…いや、私の欲望じゃないわよ!?今のなし!

 そんなわけで、私は期待と不安が綯い交ぜになったような感情で、その日を迎えたのだった。


●●●●●●●●●●


「あっ、いたいた。おーい!」


 海浜幕張駅に着くと、僕たちをさわやかな声が迎えた。


「おっ、カイリ!あれ?今回はお前がまとめ役?」

「ああ、そう。ジャッジではないんだけどねぇ…」

「解説だろ?わかってる、わかってる。知らされてるに決まってるじゃん。」

「そういうこと。んで、そっちが彼女さん?」

「ど、どうも…」


 めちゃくちゃ緊張してやがるなこいつ。やはりこいつも高校デビューの端くれ。初対面の男性には無条件で身構えてしまうらしい。


「(デッ!何すんだよ!)」

「(なんか超失礼なこと考えてるような気配がした)」

「(…ごめん)」


 勘の鋭いやつめ。だからって脇腹をどつくことないだろうが。


「…お邪魔かな?」

「そんなことない!そんなこと!」

「ねぇ…翔くんなんでそんなに気さくにしゃべってるの?年上でしょ?」

「年とか関係ないんじゃないか?…こいつ的にはこういう感じの雰囲気のほうがいいらしいし」

「そうそう!彼女さんも堅苦しくならずに話してくれると助かるよ!…っと」


 そんな風に軽口をたたきあっていると、カイリの背後から女性が現れた。背丈も大分小さく、小学生のように見えてしまうその女性は…


「ああ、ちーこさん、お久しぶりです」

「…久しぶり」

「えーっと…妹さんですか?」


 眞優未がその姿を見て漏らしてしまう。まあ、そう思うのも仕方ないだろうな。


「…そんなに若く見える?」

「なんで僕に言われたときはキレてたのにこいつに言われたらうれしそうなんですか」

「…こもってる感情の問題」

「えっと…翔くん?」


 そろそろ理解の追いつかなくなってきたらしい眞優未が僕に助けを求めてくる。僕に助けを求められたって困るよ。


「あー…紹介するよ。こちらちーこ。俺の彼女…ってやつなのかな?」

「ぼかすなよ」

「そう。私はカイリの彼女」


 カイリが柄にもなく照れている一方、ちーこさんは「ふんす」という効果音が聞こえてきそうなほどドヤ顔をしていた。


「へ、へー…連絡先とか教えてもらっていいですか?」

「エッグいガールズトークのため?」

「やめて、やめて!そういうこと言わないでください!」

「ふふん」


 そういいながら、お互いにスマホを取り出し、連絡先を交換する二人。打ち解けてるみたいでよかった。知り合い同士が気まずいの、すっごくむなしくなるからな…今回の大会も、人間関係には困らなくてよさそうだ。


「あっ!ショウくん!あら、そっちは彼女さん!?きゃー!!!」

「ぐえ…」


 前言撤回。狭義の人間関係には困らないかもしれないけれど、面倒な人が多いという意味ではめちゃくちゃ困りそうだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 …海浜幕張駅で意気込んだ集合を終えたはいいものの。今日は実は大会前日…の真っ昼間である。顔合わせは終わったけど直前の説明会は終わってないからね。仕方ないね。別に眞優未もついてくる必要はなかったのだが…ついてきたいというので連れてきた。


「さすがに中には入れないぞ?」

「それは大丈夫。一回東京戻って秋葉行く。買いたい新刊があるから。」

「…ならいいけど。じゃ、多分18時(ろくじ)くらいに終わるから。」

「え?でも説明会って16時(よじ)までじゃ?」

「うん、そのあと、当日の公式配信でやることがあるからその打ち合わせ。」

「うーん…さすがに18時まで時間つぶすのはきついなぁ…」

「なら私が」


 そう立候補してくれたのは、ちーこさんだった。


「えっ、でもお忙しくないんですか?」

「私もゆーちゃんと同じ状況だから」


 ちなみにゆーちゃんというのは、眞優未のネットネームであるところのEuonymusを略しているらしい。このネットネームは(まゆみ)の学名の前半部からとっているらしい。おしゃれだな…


「だから、私と秋葉原でデート」

「ならお言葉に甘えさせていただこうかな。ちーこさん、よろしくお願いします!」

「じゃ、ショウくん、彼女さんもらってく」

「カイリさん、彼女さんもらってきますね!」

「楽しんで来いよ~」


 そうして二人は、先ほど出たばかりの改札に吸い込まれていった。仲がよさそうで…


「追いてかれちゃったな…」

「寂しそうだな、カイリ。」

「まあ人並みには?」

「僕たちもしっぽりやろう!寂しいんだろ?」

「さすがにBLの趣味はないかな…」

「どうしてそっちに行くんだよ!」


 あとあれだって百合ではねぇよ…


●●●●●●●●●●


 そういうわけで。私はちーこさんと秋葉原の街に出撃した。


「あっ、アトレの壁、今はこんな仕様なんですね。」

「写真撮る?」

「いや、私は別にこのキャラ好きじゃないんで」

「じゃあ私は好きだから撮る。ほら、寄って」

「えっ、なんでセルフィーモードにして…」

「はい、チーズ」

「っ!?」


 私の肩が引っ張られたかと思うと、カシャっ、とちーこさんの持っていたスマホから音がする。かわいいスマホケース使ってるな…


「凸凹コンビ」

「…どう返せばいいんですか?」

「どう返してもダメ。これはどこを踏んでも地雷。」

「そんなぁ!」


 これは罠だ!日常に貼られた罠だ!しかもなまじツッコみづらい分野な所為で罠だと嘆くことが許されない系の罠だ!


「私がこの身体に生まれた3つの利点のうちの1つ」

「…あと2つは?」

「変な奴が引っ掛からないことと、ロリコンを引っ掛けられたこと。」

「あー…お惚気ごちそうさまです」


 あと自分でロリっていうの非常にツッコみづらいので止めてもらえませんか?


「あの…」

「何?」

「さっきからなんで私の胸をこね回してるんですか?」

「世界の理不尽さを体感していたところ」

「結構痛いんでやめてください」

「努力する」


 そういいながら胸をこね回すのをやめないのは何ですかね…


「今日はデート。だからいちゃいちゃする。いちゃいちゃするならおっぱいをもむのは普通」

「普通じゃないです!慎みを持ってください!」


 そんな感じで、秋葉原での女子二人水入らずのデートは胸の話で比較的(一方的に)盛り上がった。


●●●●●●●●●●


 そのように眞優未が改札に入ってしばらくした後。僕は今大会のチーフジャッジも務めている小日向さんと揉めていた。


「わかりました。百歩譲って僕が『経験豊富なジャッジ』だとしましょう。もちろん、経験豊富なジャッジがガイダンスをすべきだというのには全面的に賛成します。」

「うん、だよねだよね!だからショウくんが…」

「だからってなんで僕なんですか!?僕が人前で話すの得意じゃないの知ってますよね!?」

「ほら、訓練って必要じゃん!?じゃん!?」

「どうしてその訓練を大会の成功にかかわるこの場でさせようとしてるんですか!?馬鹿なんですか!?」

「うーん…ショウくんってすっごく自己評価低いよね…せっかく彼女さんできたのに…」

「彼女のことと僕の自己評価のことは関係ないでしょう!?僕の自己評価は適正ですよ!」

「おっと!あと10分しかない!ここにレジュメあるからショウくんよろしく!」

「あっ、ちょっ!」


 この女郎…覚えときやがれよ…

 内心で背中に悪態を投げつけ、仕方なくレジュメを手に取る。10分前ってことだし、もう代わりを用意する気もないんだろう。


「多分こういうところがダメなんだろうなぁ…」


 人に迷惑をかけるとなると、なあなあで請け負ってしまう。まあ、やるからには本気でやるけどさ…


「みなさん、こんにちは。公認ジャッジのガイダンスを始めたいと思います。僕は、昨年もジャッジをさせていただいた…」


 そんな風に話を切り出し、レジュメに書いてある内容をある程度尾ひれをつけて話していると、ホールの後方で小日向さんがスマホを構えているのが見えた。何のつもりなんだ、あの人。


「(あの、小日向さん)」

「(なに?カイリくん)」

「(ショウくんって、あんなにきれいに話せる人でしたっけ)」

「(実はそうなんだよねぇ…)」

「(話の間といい、話の速度といい、完璧…とまでは言わないですけど…)」

「(かなり聞きやすいよね…)」


 カイリと何か話してるみたいだけど…ガイダンスを託されたからには気にせずやらないとな…

 そういうわけで、僕のへったくそなガイダンスは、皮肉にしか聞こえない拍手で締めくくられた。

ショウくんはハイスペックなんだぞ!

せっかくラブコメの主人公なので、僕のステータスの各所を何倍かにしたキャラ作りたくなるじゃないですか!

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