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第二十六話  ミユは負けません


         


     

「今度こそ事件解決だね、お兄ちゃん!」

     

 元のサイズに戻った知也に、ギムレットが飛びつく。

     

「トモヤ様から離れなさい! それに先ほどから気になっていたのですが、何でトモヤ様がお兄ちゃんなんです!」

     

 そんなギムレットを知也から引き剥がそうとしながらミユが目を吊り上げる。

     

「お兄ちゃんがイイって言ったからイイんだい!」

     

 引き剥がされないように、両手両足で知也の腿に必死でしがみ付きながら、ギムレットが言い返す。

     

「トモヤ様はそんなコト、言ってません!」     

「ボクの頼み、何個でも聞いてやるって言ったモン。だからこれからお兄ちゃんって呼ばしてもらうんだい! ね、イイよね、お兄ちゃん!」

     

 そう言えばそんなコトを口にしたような……。

     

「約束は約束か」

     

 知也の呟きにギムレットが勝ち誇る。

     

「聞いた? じゃ納得したね! あ! じゃあお兄ちゃん、次はボクとねぇ……モゴ」

     

 どうやらまだお願いの続きがある様だったが、話の途中でギムレットはミユに口を塞がれてしまう。

 いや、口を防いだだけではない。

 どうやらミユは空手の技を使ってギムレットの体の自由を奪ったらしい。

     

「はいはい、イイ子ですね~~、じゃあトモヤ様から離れましょうね~~」     

「モゴ~~」

     

 ギムレットはジタジタと暴れるが、なすすべもなく知也から引き剥がされてしまった。

     

「ではユイコ様、後の事は学園の方でお願いします。トモヤ様、お疲れ様でした。部屋に帰ってゆっくり休みましょう。もちろんミユがお傍で奉仕いたしますね」

     

 ミユが動きを奪ったギムレットをユイコに押し付けると、知也に最高の笑顔を向ける。

 その微笑みにドキッとする知也だったが。

     

「ワタシも行く」

     

 人間バージョンになったエウリュアレが知也の腕に抱き付いていた。

     

「トモヤ様はお疲れです。邪魔しないでください!」

     

 ピキッと青スジを浮かべて、ミユがエウリュアレを押しのける。

     

「邪魔なのはミユのほう。恋人同士の甘い時間を邪魔するな」

     

 ピキピキッと青スジを浮かべてエウリュアレがミユを押しのけ返す。

     

「やはりエウリュアレとは決着をつけておくべきですね」

     

 ミユの目が凶暴に光る。

     

「それはこっちのセリフ」

     

 エウリュアレが殺気を放つ。

     

「トモヤ様から離れなさい!」     

「そっちこそ」     

「いや、何でそうなるかな」

     

 知也が2人に挟まれてまれてオロオロしていると。

     

「お兄ちゃん、凶暴女の戦いなんて放っておいて、ボクの部屋においでよ。でね、でね、ボクと……」

     

 先ほどミユによってユイコに引き渡されたハズのギムレットが、知也に飛びついてきた。

     

「何でギムレットが!? 体の自由を奪っておいたのに!」

     

 大声を上げるミユにギムレットがニヤッと笑う。

     

「ヴァンパイア族の生命力の強さを知らなかった? あの程度、すぐに回復するに決まってんじゃん」 「なら今度は回復出来ないようにしてあげます」

     

 ミユの身体から、ユラリとカゲロウの様に殺気が立ち昇る。

     

「お、お兄ちゃん! ボクを凶暴女から守ってくれるよね!?」

     

 慌てて身体を駆け昇ると知也の首にヒシッと抱きつくギムレットに、ミユの殺気が焔のように燃え上がる。

     

「ギムレットは始末したほうが良さそう」

     

 こちらはブリザードのように凍てつく殺気を放つエウリュアレ。

     

 そこに。

     

「あらあら、大変なコトになってるじゃない~~。じゃあわたしがぁ、トモヤくぅんを没収しちゃうコトにするわ~~」

     

 ユイコまでが知也に抱き付こうとする。

     

「アンタは学園長だろ! 何考えてんだ!」

     

 知也に抱きつこうとするユイコの顔を、ベシッと足で押し止めながらギムレットが怒鳴る。

     

「あ~~ん、ギムレットったらヒドイじゃない~~。わたしだってトモヤくぅんが気に入ったのに~~」「いやユイコ殿、今は学園の後始末をしていただかないと困るのでござるが……」

     

 ムサシが隕石で破壊された学園の惨状を指差しながらユイコに進言するが。

     

「そんなのムサシ先生に任せるわ~~。じゃあヨロシク~~」     

「いや、そんな無茶ブリされても困るでござる」

     

 そんなムサシのセリフなど耳に入ってないらしく、ユイコが再び知也に抱きつこうとする。

     

「トモヤくぅん~~」     

「来るな!」

     

 またもやギムレットが知也の首にしがみ付いた態勢から、ユイコの顔をゲシっと足で踏みつける。

     

「お兄ちゃんはボクだけのモンだい!」

     

 が、いつの間にか後ろに回り込んでいたミユがギムレットを知也から引きずりおろす。

     

「トモヤ様はミユのモノです!」

     

 ギムレットに変わってミユは知也の首に両手をしっかりと巻きつける。

     

「ワタシのモノ」

     

 そこにエウリュアレが知也とエウリュアレの間に強引に体をねじ込んできた。

     

「ミ・ユ・は・負・け・ま・せ・ん!」

     

 エウリュアレと全力で押し合いながらミユが言うと。

     

「ワ・タ・シ・だ・っ・て」

     

 エウリュアレもミユを押し返しながら言い返す。

     

「ボクだって負けないやい!」

     

 そこにギムレットが、またもや参戦。

     

「わたしも~~」

     

 ユイコも全然懲りてない。

     

 ぺし。

     

「やったな!」

     

 ぱし。

     

「むか」

     

 ぴし。

     

「やったわね~~」

     

 ぺん。

     

「ミユは負けません!」

     

 こうして女性4人による、第一回知也争奪戦が始まったのだった。

     

「はぁぁぁ、ユイコ殿、学園長なのでござるから……ぐえ」

     

 4人が大騒ぎする中、ユイコを連れ出そうとしたムサシがミユ達の流れ弾を食らい、ひっくり返ってしまう。

     

「ああ! ム、ムサシ先生!」

     

 簡単にノビてしまった世界一の剣豪の姿に、知也が声を上げると。

     

「ミユは見ました! ギムレット、あなたムサシ先生を蹴ったわね!」     

「ミユの拳だってヒットしてたじゃん!」     

「どさくさに蹴ったのは学長」     

「エウリュアレだって肘が直撃してたわよ~~」

     

 更なる大騒ぎが始まってしまう。

     

「はぁ~~、とんでもないコトを祖父ちゃんに押し付けられたなぁ」

     

 知也は深いため息をついて空を見上げたが、その口元には小さな笑みが浮かんでいたのだった。








もしも喜んでもらえたなら、続きを書いてみます。


2020 オオネ サクヤ Ⓒ

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