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第二十四話  メテオストライク


                


     

「キサマはギムレットに大怪我を負わせた。何度でもぶち殺してやる」     

「お兄ちゃん……」

     

 怒りに燃えた知也の言葉にギムレットの顔がパアッと輝くが。

     

「トモヤ様、そんな三下をトモヤ様が相手にする必要などありません。ミユが始末いたします」

     

 ギムレットの嬉しそうな様子を見たミユが、不機嫌そうな声を上げてソウズイに向かって身構える。  と、そこに。

     

「そう、トモヤは見てたらイイ。三下はワタシが潰す」

     

 エウリュアレまでもが、ムスッとした顔で進み出た。

     

 そんな2人に、どうしたもんかと考え込む知也だったが。

     

「ふざけるな! 儂が三下だと! おのれぇぇぇ、ミドラス帝国軍最高の術者、ソウズイ様の力を見るが良い!」

     

 ソウズイが叫び、そして。

     

 ドカァァン! 

     

 空から降って来た隕石が、校舎の一つに激突した。


『な!!?』


 言葉を失う知也達に、ソウズイが勝ち誇る。

     

「どうじゃ! 我が大魔法、メテオストライクで滅びるがよブジャ!」

     

 が、話の途中で、飛び散った校舎の破片に直撃されて押し潰されてしまった。

       

「勝手に自滅した? バッカじゃない?」

     

 ギムレットが呆れた声を上げるが、そこにミユが空を指差す。

     

「操り人形を捨てただけ。これからが本番です」     

『え?』

     

 全員が空を見上げると……。

 大気との摩擦熱で真っ赤に焼けた隕石が、光を放ちながら降ってくるところだった。

     

 ズガァン!

     

 またもや校舎が一つ、破壊される。

     

「あら~~。防御魔法で強化されてる自慢の校舎がこんなに簡単に破壊されるなんて~~。隕石のエネルギーは流石ね~~」

     

 驚く声もユルいユイコにギムレットが詰め寄る。

     

「ノホホンとしてる場合じゃないだろ! どーすんだよ!」     

「あらギムレットったら怖い顔~~」     

「ふざけんな!」     

「取り敢えず彼らに任せてみるわ~~」

     

 ユイコの言葉に空を見上げてみると、ワイバーン、グリフォン、ペガサス、ハーピー、フェニックスなど空を飛べる生徒が、隕石に向かっているところだった。

     

「隕石の大きさ自体は小さい! 一つずつ確実に破壊していけ!」

     

 叫んでいるのはグラバスだ。

     

 確かに隕石の大きさは1メートルほどしかない。

 封印結界が破壊された今、元の力を取り戻したルシファー学園の生徒達はグラバスの指揮の元、簡単に隕石を砕いていった。

     

 が、砕かれた隕石の破片はルシファー学園に降り注ぐ。

     

「直撃ほどじゃないけど、このままじゃ甚大な被害が出てしまうんじゃ?」

     

 と、知也が不安を口にするが。

     

「魔法部隊!」

     

 グラバスの声で地上から攻撃魔法が発射され、隕石の破片を消滅させる。

     

「驚きました。あのグリフォン、中々やりますね」

     

 口ではそう言うが、全然驚いている様に見えないミユの言葉に、胸を張ったギムレットが自慢そうに言う。

     

「そりゃあグラバスは格闘コースでも有数の戦士なんだ。人望もそれなりにあるから、従う生徒も多いのさ」     

「でも魔法で射ち落とされなかった破片もあるみたいですが」

     

 ミユが指摘したように隕石の破片の中でも大きなモノが、攻撃魔法に砕かれる事なく落下してくる。

     

「どうやら只の岩ではなく、魔鉱鉄で出来た隕石のようですね。これでは普通の攻撃魔法では破壊出来ません」     

「え?」

     

 ミユの言葉にギムレットの顔が引きつるが。

     

「盾部隊!」

     

 グラバスの指示でサイクロプス、ミノタウロス、タイタン、トロルなど巨人系の生徒が10メートルもある盾を構えて主要な建物をガードする。

     

「ふっふうん。ぬかりはないよ!」

     

 ギムレットは、またもや自慢げに胸を張った。

 しかし、生徒たちの活躍を見つめるムサシの顔は曇っている。

     

「このままでは危ないでござるな」

     

 ムサシの言葉にミユが頷く。

     

「はい、一向に隕石がストップする気配がありません。今は生徒達も元気なのですが、いずれ力尽きて隕石の雨に飲み込まれてしまうでしょう」     

「じゃあ術者を倒せばイイ!」

      

 ギムレットが即答するが。

     

「ミドラスまで行ってでござるか?」     

「あ」

     

 ムサシに言われて、ソウズイ自身はミドラス神聖帝国にいる事をギムレットは思い出す。

     

「じゃ、じゃあ打つ手なしじゃん!」

     

 そう叫んでから、急にギムレットは黙り込んだ。

     

「ギムレット?」

     

 どうしたんだ、と知也が聞こうとしたところで、ギムレットが大声を上げる。

     

「これほど大規模な攻撃魔法を行使する以上、何らかの魔法装置が必要なはず!」     

「なるほど。遠くはなれたミドラスからこのルシファー学園に隕石を落とそうと思ったら、とんでもない魔力が必要でござるからな」

     

 頷くムサシにギムレットが続ける。

     

「だからメテオストライクに必要な魔法装置はここ、ルシファー学園内にあると思うんだ」     

「それに心当たりはあるのですか?」

     

 ミユの質問にギムレットはニカッと笑う。

     

「多分、封印結界を張るためにミドラスが描いた10の魔方陣がそうだと思う」     

「じゃあ、残った9つの魔方陣を壊しちゃいましょ~~。ミンナ、ゆけ~~」

      

 ギムレットの言葉を聞くなり、ユイコが相変わらずユルい声で命令を下す。

     

『はい!』

     

 緊張感に欠けるユイコの声だったが、それでも気合の入った声を上げ、隕石の迎撃に関わっていない生徒と教師が9のチームに分かれ、一斉に駆け出した。

     

 それを目にするなり、ギムレットがキャスに命令する。

     

「粛清部隊! それぞれに同行して状況を報告!」     

「はい!」

     

 キャスの反応は速く、一瞬で9人の粛清部隊の隊員に選び出すと、連絡用の水晶版を持たせて送り出した。

     

「これで何とかなる筈」

     

 両手を組んで空を睨むギムレットに、キャスが現場からの報告を伝える。

     

「第2の魔方陣発見! 破壊しました!」     

「第3の魔方陣を発見! 破壊しました!」     

「これで解決しそうだな」

     

 知也がホッとした声を上げる知也に、ミウが笑顔を向ける。

     

「そうですね、トモヤ様」

     

 しかし、その直後。水晶版から緊張した声が響き渡る。

     

「最後の魔方陣にガーディアン出現! とても歯が立ちませ……」

     

 そこで急に通信が途絶えてしまう。

     

「く!」

     

 脳裏に死にかけたギムレットの姿が蘇り、知也はうめき声を漏らした。

 幸いな事にギムレットは命を取り留めた。

 しかし通信が途切れた際では、さっきまで一緒にいた生徒が殺されているかもしれない。

 そう思った瞬間、知也は叫んでいた。

     

「ギムレット! 場所は分かるか!」

     

 知也に言われて、ギムレットがキャスの名を呼ぶ。

     

「キャス! どこ!?」     

「南区武器練習場の近くです!」

     

 それを聞くなり、知也はミユに尋ねる。

     

「ミユ! 直接転移できるか?」     

「はい!」

     

 知也に転送の腕輪に見せながらミユが頷くと。

     

「ボクも行く!」     

「ワタシも行く」

     

 ギムレットとエウリュアレが同時に声を上げた。

     

「拙者も同行したいのでござるが」

     

 ムサシまでが同行を申し出るのを聞いて、ユイコがユルい笑みを浮かべる。

     

「ルシファー学園の最強チームね~~。このメンバーでダメならルシファー学園も終わりだわ~~」  「フニャラとした顔でとんでもないコト言うな!」

     

 ギムレットがユイコに食ってかかるが。

     

「時間が惜しい! ミユ、頼む」

     

 知也がミユの肩に手を置いてそう頼むと同時に、ギムレットは知也の右手に抱きついた。

     

「いつでもイイよ!」     

「ワタシも」

     

 エウリュアレが知也の左手に抱きつく。

     

 そんな2人に、ミユが不機嫌そうな声を漏らす。

     

「ミユとトモヤ様で十分なんですけど」     

「まあまあ、そう言わずに出発するでござる」

     

 ムサシにそう言われ、ミユは渋々、転送の腕輪を操作する。

     

「トモヤ様、行きます!」     

「ボク達もいるのに……」

     

 ギムレットが文句を口にしかけた時には、全員揃って最後の魔方陣の前に転移していた……転移した筈なのに、目の前には巨大な壁が。

     

「何でこんなモノが?」

     

 ギムレットがそう言いながら壁に触れようとした、その時。

     

 ビッシャァ――ン!

     

『うわ!』

     

 いきなりの落雷に、知也達は飛び退いた。

     

「な、何が……」

     

 驚く知也達に向かって、水晶版で連絡してきた粛清部隊の隊員が必死に叫ぶ!

     

「ムサシ先生! そいつがガーディアンです、急いでこちらへ!」

     

 その声にムサシが鋭く叫ぶ。

     

「ミユ殿!」

     

 それだけでムサシの意を察し、ミユは転送の腕輪を操作して、短距離転移を行ったのだった。






     

「アイツが魔方陣の核を守っているので近寄れないのです。魔方陣の外にいれば襲って来ませんが、魔方陣の中に入ると猛然と襲って来ます」

     

 目の前に転移してきた知也達一向に、粛清部隊の隊員が報告してくる。

     

 ここに描かれている魔方陣は他の魔方陣よりも遥かに大きい。

 おそらく直径300メートル以上あるだろう。

     

「多分この魔方陣がメインで、他の9個の魔方陣は補助的なものだったんだ。だからココを、あんな巨大なドラゴンで守ってるんだ」


      ギムレットが言ったように、魔方陣の中にいるのは、体長200メートルはあろうかという巨大ドラゴンだった。

 先ほどは余りに近くに転移してしまった為に、この巨大ドラゴンの体を壁とカン違いしてしまったらしい。

     

 そこに先発隊として出発していたヴリトラがやって来て、重い口調で語り出す。

     

「いや、ドラゴンじゃない。あれは雷の精霊界を守護する者だ」     

「どういう事!?」

     

 鋭い声で問いただすギムレットに、ヴリトラが説明を始めた。

     

「火、水、風、土、雷などの精霊が存在している事は知っているだろう。雷の精霊の場合、雷の精霊はより大きな力を得ると、雷トカゲへと進化する。そして更に力を得たらサンダードラゴンへと進化し、そして最後には雷龍へと進化する」

     

 そこでヴリトラは一度、ゴクリとノドを鳴らしてから話を続ける。

     

「サンダードラゴンでさえ我よりも強い。ましてや雷龍ともなれば、雷の精霊界の守護神とでも呼ぶべき存在。とても勝てる相手ではない」

     

 シーンと沈黙が広がる中、ギムレットが声を上げた。

     

「でも、そんな高位の精霊を、どうやって召喚したんだろ?」     

「多分、あれに仕掛けがある筈だ」

     

 ヴリトラが、魔方陣の中心に見える小さな黒いピラミッドみたいなモノを指差した。

 小さいと言っても、すぐ横に雷龍がいるからそう見えるのであって、実際には高さ10メートル以上ありそうだ。

     

「しかし近づく事すら不可能な現状では、分かっていても意味はないがな」

     

 溜め息をつくヴリトラに、ミユが事も無げに言う。

     

「トモヤ様なら雷龍ごとき楽勝ですよ」     

『ええ!』

     

 全員が声を上げる中、一番声が大きかったのは知也だった。

     

「ちょ、ちょっと待ってくれ、あんな巨大な龍と俺が戦うのか、ミユ!?」

     

 顔色を変えて聞き返す知也に、ミユはニッコリと微笑むと。

     

「もちろんです。トモヤ様なら楽勝です。さあ、どうぞ」

     

 事も無げに、そう言い切ったのだった。

 



2020 オオネ サクヤ Ⓒ

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