第17話 犬人族
第17話 犬人族
いろいろあって、やっと宿屋についた。勿論、購入した服に着替えているので、パッと目ペアールックのカップル状態だ。でも宿屋の女将さんは、
「おや、奴隷を購入されたんですか?奴隷と一緒なら部屋代はかかりませんよ。部屋に入れずに厩の方に寝泊まりさせる場合にも料金はかからないからね」
えっ?なんで奴隷って解ったんだろう?鑑定スキル持ちとか?ってことはないか。
「あーあの、食事なんかは一緒にできるんですか?」
「奴隷と一緒に食事をするのかい?それはできるけど、その場合別料金だよ」
「あの、この子が奴隷ってすぐにわかるんですか?」
「それはそうさ。亜人なんだから奴隷以外にないだろう?お客さん、商人なんだろう?冒険者なら亜人の冒険者とパートナーを組んでるってこともあるけど、この国の商人で亜人を連れていれば荷物持ちか、護衛の奴隷って決まってるよ。そうじゃないのかい?」
「ええ、まあ今日購入したんですけど、いきなり当てられたんでびっくりして」
「これでも客商売のプロだからね。いずれにせよ、犬族なら護衛には一番いいよ。きちんと育ててやれば、索敵能力があがるからね。それに主人に対する忠誠心が高い種族だからね。うちでも一人犬族の子がいるけど、よく働いてくれるよ」
「そうなんですね。取り敢えず、この子と一緒に食事をしますので、その分の料金をお支払いします」
女将さんに追加の料金を払って部屋に上がる。今夜の夕食は、部屋に運んでもらうことにした。女将さんがそう言ってきたのもあるけど、俺としてもゆっくり話をしたかったので、そのようにしてもらうことにした。
部屋に入ると、クルルが、
「シュウ様、やはり奴隷である私が、このような服を着せていただいて、さらにはこのように高級な宿屋の部屋に泊まるのは、分不相応な気がします」
「まずは、座って話をしようか。俺も奴隷を購入したのは初めてだから、いろいろ配慮が足りないかもしれない」
「いいえ、決してシュウ様を非難している訳ではありません」
「勿論解ってるよ。えっとそうだな。まず、俺自身のことを少し説明するね。俺はかなり遠い所から、今いるアスラ王国にやってきたんだ。それでこっちの情報にかなり疎い。もしかしたら、こっちの国では常識だと思われているようなことでも知らない可能性がある。だから、クルルにいろいろ聞くことになるだろうし、なんでも教えて欲しいと思う」
「私が、シュウ様にお教えすることなど何もないと思いますが」
「いや、本当に基本的なことも知らないと思う。例えば、クルル達、亜人のこと。人族と亜人との関係みたいなこと。奴隷についてなどなど」
「解りました。私が解ることは何でもシュウ様にお話しします」
「うん、よろしく頼むよ。じゃあ、まず、奴隷について教えて欲しいかな。奴隷とどのように接すればいいのかなど。それと、クルルみたいな素敵な子がなんで奴隷になっているのかも知りたい。俺は奴隷を買うのも初めてだけど、奴隷を見るのも初めてなんだよ。この領都には奴隷がたくさんいるみたいだけど、誰が奴隷なのか区別すらつかない。さっき女将さんが、クルルのことをすぐに奴隷だと解ったのは、普通のことなの?」
「そうですね。では、私のことからお話しします。私は見ての通り、犬族です。正確には犬人族です。あっ、犬人族と言うのは亜人の中の種族です。この世界には、純血種属の人族と、魔族がいます。人族の血が濃いのが亜人。魔族の血が濃いのが獣人。ですので犬族でも魔族の血が濃い種族は犬魔族と呼びます。ってこのような話当たり前のことですよね。えっと、どこまで説明したらいいんでしょうか?」
「いや、クルルの話はとても勉強になったよ。俺自身、他の種族と交わったことがないし、そう言った環境になかったから亜人や、獣人、魔族について知らなかったしね。クルルが話しやすいように話してくれるとありがたいよ」
「えっと、解りました。それで、私が犬人族であると言うところまではいいですね。犬人族は、この大陸では人数は比較的多い方だと思います。今いるアスラ王国内でも、各部族に別れて小さな集落を作って生活したり、いろんな職について都市や街で働いている人もいます。職には就いていないけど、冒険者や傭兵として生活している人もいます。私の両親は二人とも冒険者でした。私は生れてからずっと都市や街で暮らしていました。両親の生まれた部族はすでに滅んでいるようで、知り合いは両親と同じ冒険者だった人たちだけです。数ヶ月前に、両親がクエストで商団の護衛をしていたのですが、運悪く強い魔物、ビッグボアと言うそうですが、その魔物に襲われてしまいました。私がなぜ助かったのかわかりません。気がついたら、奴隷商館の部屋に寝かされていて、奴隷になっていました。私は両親と一緒にあちこちの街に住み、旅をしたりしながら育ったので、料理や簡単な計算などができますので、奴隷商館でも時々手伝いをさせられていました。今日も部屋で休んでいたら、いきなりゲンドさん、あっ、ゲンドさんと言うのはシュウ様の担当だった方です。副支配人の方なので普段はあまり直接お客様の対応をなさっておられないんですけど。それで、ゲンドさんに呼ばれて、お客様にお茶を出すように言われました。その時に、もしかしたら私を買って下さるかもしれない上客だと言われました。恐らく、領都に住んでいるのではなく、大陸中を旅しているんじゃないかと言うことと、冒険者か魔法師かもしれないとも言われました。とにかく、シュウ様から強い波動を感じたそうです。シュウ様なら私の願いを叶えてくれるご主人になるだろうとも。それで、何としてもシュウ様に買って頂きたいと思いました。シュウ様に買って頂いて本当によかったです。ありがとうございます」
「一目見て気に入ってしまったからね。俺の方こそクルルに会えてよかったよ。それで、クルルの願いって何?」
「えっ?あっ、それは・・・」
「構わないから言ってみて。できることならそうしてあげるし。できないこともあるだろうけど・・・」
「いえ、奴隷の私が願うことなど許されないんですが・・・」
クルルがそう言いかけたところで、料理が運ばれてきた。最初に俺をこの宿に誘った子だ。
大きなお盆に乗った料理を抱えてふらつくこともなく料理を運んでくる。意外と力があるんだな。俺たちが話の途中であることを感じていたのか、料理を置くと何も言わずに出て行った。
「えっと、温かいうちに食べようか」
「本当に、一緒のテーブルについて頂いてもいいんでしょうか?」
「ん?普通は別々なの?」
「普通奴隷は、ご主人様が食べ終わった後残った物を頂くか、ご主人様の足元に座って、お皿に取り分けて頂いた物を床に座って食べるので。こうしてご主人様と同じテーブルについて食事をするとか、ましてご主人様と同じメニューの食事をするとかないです」
「そうなの?でも、床に座って食べている人とか見たことないけど」
「こちらの宿は、かなりいいお宿ですので、奴隷専用の部屋があってそこで食事をしたり、寝泊まりしたりしていると思います。このお部屋ですとあちらの小部屋が奴隷専用の小部屋だと思います」
「あそこって、物置き部屋じゃないの?木の台が置かれているだけだけど」
「多分、それは奴隷専用の寝台だと思います。と言うか、私はそちらで控えているべきなのですが」
「そういうものなの?それで部屋代がいらないって話なんだ」
「このお部屋はかなりグレードの高いお部屋みたいなので、ご主人様のお部屋の中に奴隷専用の部屋が用意されていますが、通常の宿ですとご主人様が寝泊まりする部屋と別の階にあるか、もしくは厩と一緒になっていることがほとんどです。私も両親といろんな宿へ行ったことがありますけど、奴隷は大抵、厩に寝泊まりしていました。荷物持ちなので、ブルホースなどの移動用の動物の世話も奴隷の仕事なので丁度いいんです」
「そうなんだ。でも、クルルの場合は確かに俺の奴隷ではあるけど、奴隷として扱う気はないよ。冒険者なら亜人でも人族と一緒にいてもおかしくないんだろう?だったら、クルルには冒険者になってもらう」
「えっ?」
「あっ、冒険者になるのは嫌だった?ごめんね、ご両親の話を聞いたのに。でも本当に魔物と戦えってことじゃなくて、恰好とか冒険者らしくして周りには冒険者のパーティーだって言っておけば、これから一緒に歩いたり寝泊まりしても、変な目で見られないでしょう?」
「いえ、そうではなく。シュウ様がお許し下さるなら、私を冒険者にして下さい。魔物と戦ったことはありませんし、何のスキルも持っていませんけど、一生懸命頑張ります。私の願いは冒険者になって、強い魔物を討伐することです。強い魔物の数が一体でも減れば、私のように親を魔物に殺される子供は少なくなるでしょうし。それに、死んだ両親の願いも私が冒険者になることでした。8歳になったら、武術を教えてくれると言う約束でした。8歳になるまでは、言葉や、料理、その他、旅や生活に必要な知識と技術を身につけるようにって言われてました」
「そうなの?じゃあ、さっき言ってた、クルルの願いって言うのは、冒険者になること?」
「はい。冒険者になってこの大陸中を旅することです」
「そうか。それなら、問題ない。と言うか是非そうして欲しい」
それから、俺とクルルは食事をしながら今後のことを話し合った。俺自身の秘密のことは現時点では詳しく話せないけど、職業持ちであることと、魔法が使えることは伝えた。勿論、他言無用であることは命じておいた。
生活魔法で洗濯や、洗体をしてやったら驚いていた。魔法が使えると言ったので、生活魔法師だと思ったかもだけど追々解るだろう。それに、俺が魔法で洗濯とかしないとクルルが井戸で洗濯してくるって聞かないし、シャワーも奴隷には分不相応だと言って入ろうとしないしね。
ちなみに、この世界の標準は井戸水で身体を拭いて綺麗にすると言うものらしい。シャワーがあるんだし使えばいいのに。魔道具だから、魔法でお湯を作っているんだろうしね。確かに微妙な温度調整はできないけど、少し温かいお湯が出るんで今の気候なら十分だ。
ともかく、クルルのために生活魔法を見せるのを解禁したんだよね。本当は明日にでも魔物が狩りに行って、かっこよく魔法で魔物を狩って見せるのを狙っていたんだけど・・・。
ちなみに、クルルのステイタスリングを触って奴隷解除できることは確認済みだ。また元に戻しているけどね。ある程度クルルのLVが上がるまでは奴隷状態の方が安全みたいだ。
奴隷状態に戻したといっても奴隷魔法ではなく、隷属魔法をかけている。奴隷契約の上位魔法になるみたいだ。命令コマンドで行動を縛らなくても、主人に不都合な行為はできなくなるみたいだ。
あと、魔法をかけて最初にステイタスリングに触れるものが上位者になるという行動の縛りがなくなって、この魔法は離れた状態の相手でも隷属状態に置くことができる。しかも隷属状態にある者に対して、念話で指示ができる。クルルの方から俺に、念話を返すことはできないんだけど、俺の方からクルルに念話で指示を与えて、クルルの行動を縛ることができるようだ。奴隷魔法の上位互換だし、いろいろ便利なのでこっちで奴隷状態にすることにした。
ステイタス画面では、奴隷から、隷属に変化しているけど、クルルは気付いてないみたいだ。隷属魔法と言うものがあることを知らなければそう言うものだろうな。俺の場合日本語表記で違いがわかるけど、もしかしたらクルルが認識している言語では違いはないのかもしれないし。ともに、俺の所有になっているから気が付かないのかもしれない。
念話の件は、賢者くん情報なのでまだクルルには試してない。わざわざ念話で指示することもないし必要があるまでは言わなくてもいいだろう。
寝る時になって、クルルが布団もない木の台が置いてある部屋に行こうとしたので、一緒のベッドで寝ることにした。大きなベッドだし二人で寝ても余裕だ。勿論、ムフフなことはない。




