表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/257

055・第二章プロローグ 終焉の足音

「やめて……お願いやめて……」


 イスミンスールの中心で、()()は涙を流しながら懇願していた。しかし、その懇願を向けた相手は彼女の言葉に耳を貸そうとしない。何かに取り憑かれたかのように口を動かし続け、一心不乱に彼女の体をんでいる。


「やめて……正気に戻って……」


 無駄と承知で彼女は懇願を続ける。数千年と続けた懇願。回数はとうに億を超え、兆に届きそうなほどに重ねたその言葉は、やはり今回も無視された。かつてはとても従順で、打てば響くように言葉を返してくれたのに、今では表情一つ動かさない。


「やめて……やめて……」


 言葉すら忘れているやもしれない相手に、虚しく懇願を続ける彼女。自らの意思で動くことができず、力のほとんどを封じられてしまった彼女には、それしかできることがないのだ。


「やめて……これ以上はだめ……このままでは世界が滅んでしまう……」


 ずっとずっと耐えてきた。一人でずっと耐えてきた。だが、それもそろそろ限界だ。彼女の命はまもなく尽きる。星の寿命からみれば瞬きにも満たない時間。たったそれだけの時間しか、もはや彼女には残されていなかった。


「痛い……痛い……」


 ゆえに、彼女は願う。厄災に力を封じられる直前に、()()()()へと送り届けた最後の希望。その希望が無事芽吹き、力をつけ、その絶大なる力を振るうに相応しい者と共に、この世界に戻ってきてくれることを。


「早く……早く来て……」


 その希望の名は――


「私の……勇者様……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ