表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引っこ抜いたら異世界で マンドラゴラを相棒に開拓者やってます  作者: 平平 祐
第一章・引っこ抜いたら異世界で……
20/257

019・クエストと階級 上

「今すぐ受けられる依頼は、他に何かありますか?」


 新規開拓者の殆どが登録した直後にクリアするであろう【初めてのパーティメンバー】と【パーティ完成!】の依頼。その攻略を後回しにした狩夜は、他の新規開拓者と比べて資金的に不利な状況でのスタートとなる。こなせる依頼があるのなら、それらを早急にこなしてお金を稼がねばならない。


 開拓者になった直後にこの手の質問をする人は他にも多いのか、タミーはすぐさま五枚の依頼カードをカウンターの上に並べてくれた。次いで、営業スマイルと共に口を開く。


「ございますよ。初心者向けですと、この辺りがおすすめです」


「えっと――」




 依頼名【ラビスタ狩り】


 依頼者・開拓者ギルド


 内容・可愛い顔の憎い奴、ラビスタを三匹倒して、開拓者ギルドまで死体を持って来よう。可愛いからって油断していると痛い目を見るぞ! しっかり血抜きをすれば報酬アップだ!


 報酬・50ラビス。




 依頼名【害虫駆除】


 依頼者・開拓者ギルド


 内容・農民の敵、ビッグワームを五匹倒して、その触角を持ち帰ろう。ちなみに正式名称はポイズンバタフライの幼虫。成虫になる前に叩け!


 報酬・50ラビス。




 依頼名【ボア狩り】


 依頼者・開拓者ギルド


 内容・森の大食漢、ボアを一頭倒して、開拓者ギルドまで死体を持って来よう。しっかり血抜きをすれば報酬アップだ! 毛皮に傷が少ないと更にアップ!


 報酬・100ラビス




 依頼名【ベア狩り】


 依頼者・開拓者ギルド


 内容・森の暴れん坊、ベアを一頭倒して、開拓者ギルドまで死体を持って来よう。しっかり血抜きをすれば報酬アップだ! 毛皮に傷が少ないと更にアップ!


 報酬・300ラビス




 依頼名【薬草採取】


 依頼者・開拓者ギルド


 内容・草原や森の中に自生する薬草を採取し、開拓者ギルドまで持って来よう。量が多ければ多いほど報酬アップだ。薬草は道具屋で調合されて回復薬になり、君の開拓を助けてくれるぞ!


 報酬・出来高払い




「ふむふむ、なるほど」


 確かに初心者向けといった感じの内容である。何気に食料に関係する依頼が多い。住人の食糧確保も開拓者の仕事ということだろう。


 道具屋もあるらしい。回復薬とやらが気になるので「後日顔を出すべし!」と、狩夜は心のメモ帳に記入した。


「これらの依頼は、我ら開拓者ギルドからの依頼であり、いつでも、何度でも受けることができます。ただし、報酬を受け取った次の日にならなければ、同じ依頼を受けることはできません。ご了承ください」


「わかりました」


 ようは、デイリークエストということらしい。


「他には、町人や農民、商人といった方々からの依頼もございます。こちらは中級者向けが多く、毎日あるとも限りません。報酬は早い者勝ちで、内容は様々ですね」


 タミーは、更に五枚のカードを取り出し、カウンターの上に並べた。




 依頼名【村の拡張】


 依頼者・イルティナ・ブラン・ウルズ


 内容・ティールの村周辺の木々を切り倒し、村を拡張せよ。依頼を受ける時は【木材採取】とのセットがお得。この森では木を切るのも命懸け。油断はダメ、絶対。


 報酬・出来高払い。




 依頼名【木材採取】


 依頼者・イルティナ・ブラン・ウルズ


 内容・民家や防護柵を造るための材料が不足している。村の周囲の木々を切り倒し、木材を手に入れろ。依頼を受ける時は【村の拡張】とのセットがお得。この森では木を切るのも命懸け。油断はダメ、絶対。


 報酬・出来高払い。




 依頼名【スライム捕獲】


 依頼者・イルティナ・ブラン・ウルズ


 内容・スライムを二匹捕獲し、開拓者ギルドまで持って来よう。生け捕りは想像以上に難しい。スライムとはいえ油断するな。


 報酬・500ラビス。




 依頼名【新人殺しを討て!】


 依頼者・開拓者ギルド


 内容・新人殺しと名高いベヒーボアを一頭倒し、開拓者ギルドまで死体を持って来よう。しっかり血抜きをすれば報酬アップだ! 毛皮に傷が少ないと、更にアップ!


 報酬・500ラビス。




 依頼名【グリーンビーの巣の駆除】


 依頼者・イルティナ・ブラン・ウルズ


 内容・巨大なグリーンビーの巣を発見。放置すると大変危険。早急に駆除しよう。ソウルポイントも大量ゲットだ!


 報酬・3000ラビス。




「確かに、ちょっと厳しそうですね」


 というか、イルティナからの依頼ばっかりであった。本当に人手不足であるらしい。


「はい。特に、グリーンビーの巣の駆除などは大変危険です。参考にと一応お見せしましたが、今のカリヤ様にはおすすめできません」


「ですね、自分でもそう思います」


 今は弱い魔物を多く倒して、ソウルポイントとお金を地道に貯めることが肝要だ。レイラがいくら強くても、狩夜が弱いままでは話にならない。当面の間は近隣の森で狩りに勤しむべきだろう。安全第一だ。


「ベヒーボアってどんな魔物なんです?」


 新人殺しとはまた、随分と物騒な二つ名である。狩夜も新人である以上、他人事ではない。


 狩夜が真剣な口調で尋ねると、タミーは両目をキラリと光らせた。そして、どこか重くるしい口調で説明を開始する。


「はい。ベヒーボアというは、このティール周辺の森に生息する魔物の中で、最も警戒すべき魔物のことです。黒い毛並の猪型の魔物で、血の匂いにとても敏感なのです」


 タミーの説明に、ああ、あれか――と、この世界にきて早々に襲われた、漆黒の四足獣を思い浮かべる狩夜。あの四足獣は、そのベヒーボアとやらが主化したものに違いない。襲われた原因は、ラビスタの血の匂いだろう。


「倒した魔物の死体を惜しんで持ち歩いたり、解体に手間取ったりしたハンドレットの開拓者が襲われ、毎年多数の犠牲者が出ております。今年もその例に漏れず、すでに多くの犠牲者が……」


 タミーの懇切丁寧な解説に、狩夜は「なるほど」と声を漏らしながら頷いた。


 やはりあの四足獣は、かなりやばい魔物だったらしい。もしレイラがいなければ、狩夜もその犠牲者とやらに仲間入りしていたに違いない。


「ついた仇名が新人殺し。カリヤ様も、ベヒーボアには十分お気をつけください。近隣の森では、水辺以外では魔物の解体をしないほうがよろしいでしょう」


「マナが豊富な水辺なら、ベヒーボアも寄りつかないってことですよね?」


 これはベヒーボアだけでなく、イスミンスールに生息するすべての魔物に当てはまる基本知識である。ずっと川沿いを歩いていた昨日、狩夜が一度も魔物と遭遇しなかったのがその証拠だ。


 水辺は安全。魔物に襲われたら水に飛び込め。この世界の人間は、そう言い聞かされて育つのだとか。そして、ユグドラシル大陸に存在するすべての町、村は、湖や泉といった、水辺の傍に造られるという。


「その通りです。カリヤ様も、当面は水辺から離れすぎないように行動するのがよろしいかと。危険を感じたら、迷わず水の中に飛び込んでください。それで大抵の危機は乗り切れます。マナには傷を癒す効果もありますから、大怪我をしていても大丈夫ですので」


 タミーの言葉に目を丸くする狩夜。次いで思う。


 ――傷まで治るのか!? マナって本当にすごい。この大陸の水すべてが、回復アイテムみたいなものじゃないか!


「わかりました、ベヒーボアには特に注意したいと思います。それで、これが中級というと、上級にはいったいどんな依頼が?」


「お見せするのはかまいませんが……」


 タミーは、不安げな視線を狩夜に向ける。それを受けて、狩夜は苦笑いで口を開いた。


「見るだけですよ」


「そうしてください。私の権限では、止めることはできても、拒否することはできないのです」


 安堵の息を吐きながら、タミーは一枚の依頼カードを取り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ