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江藤くんはあの人とは違う。
優しくて大好きで、ちゃんと信用してる。
なのに意気地無しな私は、すぐ悪い方へ考えてしまう。
ほら、今だって何も言ってくれない。
きっと面倒くさいとか思われてしまったんだよ。
じわりじわりと込み上げてくる想いを必死に抑える。
沈黙がやたら長く感じられて、不安で押し潰されそうだ。
やがて江藤くんはゆっくりと口を開いた。
「ああ、ごめん。驚いた。」
「引いたよね?」
「いや、驚いただけ。ちゃんとしてないってことは、俺が初めてになるの?」
「…そう、なりますよね。」
思わず受け答えが敬語になってしまう。
もう、今すぐこの恥ずかしさから逃げ出したい。
逃げ出したいのに。
「名前で呼んでいい?」
「ええっ。う、うん。」
更にどぎまぎすることを言われ、若干テンパりながら返事をした。
え、名前?
名前って?




