89/101
*
だけどやっぱり言うのは勇気がいる。
私は躊躇いがちに目を伏せながら呟く。
「絶対引いちゃうよ。」
「引かないよ。今までどれだけ辻野さんの愚痴を聞いてあげたと思ってるの?」
江藤くんがからかうように、笑いながら言う。
「私、そんなに愚痴ってた?」
「まあ、愚痴っていうか、いろいろ話してくれたよね。」
確かに、何かあれば江藤くんに話を聞いてもらっていた。
仕事のこともプライベートなことも。
ペラペラしゃべっていたっけ。
「どれだけ嫉妬したか知らないだろ?」
「ごめん…。」
「それでも好きだから、いいんだよ。」
そう言って、江藤くんの握る手が強くなる。
あったかくて大きな手。
安心するぬくもり。
好きだから。
好きだからこそ、ちゃんと言わなくてはいけない。
もう、間違った恋愛はしたくない。




