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第二話 初日

遅くなりました〜

 見慣れたあの世界の森、始まりの森と左上に表示されている。

 ピロン、スキル「転移」を覚えました。

 そんな通知音が頭に響いた。

「まさか、転移が自分で使えるようになるとはな」

 そういったのは『タンク』だ、その言葉は当然である。元のゲームではマジシャンの上位職、ビショップの中でもかなりのレベルが必要になったはずだ。

「素材集めなら『秘境の鉱山』だよな」

『オーガ』の言う通り『秘境の鉱山』が一番効率が良いが、転移系スキル禁止区域だったはずだ。

「じゃあ近くまで転移しますか……この『桃源郷』という名称の場所は新実装でしょうか?」

 いかにも素材集めに適していそうな地名がマップには表示されていた。『秘境の鉱山』の更に奥地にあるようだ。ゲームの時と違ってマップが拡大されているような気がする。

 ーー実際の地球を模しているはずなのにも関わらずだ……


 とにかく『秘境の鉱山』の近くまで転移した。ゲームではその地点にNPCが配置されていたはずだが……居ないようだ。

 ピロンと通知音が再び鳴った。メールボックスにメールが届いている。

『無駄なNPCは排除してありま〜す、敵モンスターはしっかりと配置したままなので御安心を〜』

 流石はゲームマスターか、それなら素材集めも必要ないように感じる、目的が分からない。

「入っていいよな、装備品で回復ポーション足らないやつはいるか?」

「しっかりと配布済みなようじゃのう、全く不鮮明な行動よな」

 その疑問は誰しもが持っていたものであり、避けていたものだった。

「とりあえず行こうぜ、ドロップした物は各自で拾うことな」

『オーガ』は一番楽しんでいる気がする、みんなをまとめる役は『オーガ』に定着しそうだ。

 何も一位だからといって俺がする必要もないか、


「ッ! 量多くねぇか?」

『秘境の鉱山』のダンジョン内に入ると、いつもの二倍はいるであろう金ピカと銀ピカのネコ型モンスターが俺達を迎えた。

「いつも通りLv90だ、『サリーちゃん』、魔法は使えるか?」

 いつもの癖で指揮をとってしまうが、まあ大目に見てくれ。

「使用しようと頭に浮かべるだけでスキルに『爆撃魔法』が追加されたわよん、ここはイッパツかましてやるわ!」

 シルバーの杖が光を纏う、スキル発動のサインだ。爆発がネコの群れの中で起こりネコ達が吹き飛ぶ。

「あら? ドロップしなかったモンスターは消滅しないのかしらん?」

 ドロップ品を落としたモンスターもただただ死んだモンスターもゲームでは全て霧となって消滅していた。

 約十秒経った時、八割ほどの死体が消滅した。おびただしい金属素材と十匹のネコの死体がほのまになっていた。拾い上げると『ゴールドキャットの肉』と表示が出た。

「食べ物の素材らしいな、これも新実装か」

「よし、さっさと拾って次に行こうぜ。 この調子ならダンジョン内が変化していてもわかんねぇからな」


 何時間歩いただろうか? 最初の部屋は元々モンスターが配置されていたのは分かっていたが、それ以外はランダムだ。VRではなく実際の体を動かすと気持ちが疲れてくる。それも覚悟していたものだったが一つ大きな誤算があった。ダンジョンの道の選択肢も二倍になっていたのだ。

 目がチカチカするネコを斬っては斬っての繰り返しで精神がおかしくなりそうだった。

 やっとダンジョンを抜けた時には日が暮れていた、上空には人工的に作られたとは到底思えない星々の輝きが俺達を照らしている。

「飯だな、料理は各自でいいか?」

「どうせならみんなで食べるべきじゃろう、いきなりこんな世界に連れてこられて独りは悲しくないぞえ?」

 おかしな口調には慣れてきたが、みんなの顔色は優れない、疲労困憊というデバフが付いていてもおかしく無さそうだ。

「しょうがないのう、今日の料理当番はわしがなってやろう!」

 嬉嬉として金ピカや銀ピカのネコを取り出す。ネコの肉を示すふきだしを選択し、調理を選ぶ。ネコの肉に火が通りいい匂いが漂ってきた。

「ほれ、晩飯じゃみんなで不安を分かち合おうぞ」

 こういう気遣いができる辺りやはり幼女ではないのだろうな〜。まあ、いっか。

 ネコの肉は思っていたよりもジューシーで美味しかった。VRでは味覚までは再現されていなかったがネコの肉はどのくらいのランクなのだろうか。


「落ち着いたところで申し訳ないが話がしたい」

 口を開いたのは『カミック』だ、その事に異論を唱える者はいなかった。

「俺は元の世界に帰りたいと思っている。現実の世界でゲームをしているだけで充分だった、だから明日からの素材集めもペースを上げたい」

 まあ、当然だろう。俺も死んだらどうなるか分からない世界でこんな危ないことはしたくない。

「俺は帰らねぇでもいいかと思っている。素材集めもゆっくりやって行けばいいんじゃねぇか?」

 まあ、『オーガ』は一番楽しそうだったしな。

「帰りたい帰りたくないは別にしてもペースを下げるのはどうじゃろうか? 七十億の命がかかっていると宣言されておるのを忘れてはおらんか?」

 そう、この素材集めは下界の人類に武器を支給するためだという。

「だが、自分の命は危険に晒したくないだろ? 俺は二手に分かれることを提案するぞ」

「ほう、その二手とは?」

「周回組と攻略組だ、ゆっくりやっていきたいやつは今日と同じように『秘境の鉱山』に入る。攻略組は新たな『桃源郷』に挑む」

 沈黙が訪れる、命を危険にある程度晒しても効率性を上げたいかどうか、迷うのも仕方がないだろう。

「ってもすぐには決められねぇだろうから、今日は解散! 明日意見をってことにしねぇか?」

「賛成ねぇ、私も疲れちゃったわ」

 秘境の宿屋に泊まった、NPCはおらず勝手に入って勝手に寝ただけだが。


 ゲーム中毒者の朝は早い、現実世界が動き出す前にゲームをプレイしようとするからだ。

「よし! じゃあ意見を聞こうじゃねぇか」

 不敵に笑う『オーガ』を前に、攻略組と周回組に分かれることになった。

 凰雅の向かう先には初見の新ダンジョンが待ち構えていた、横には三人の仲間達。あと十三日ほとんどの時間を『桃源郷』で彼らと共に過ごすことになるのだった。

 そんな事を考えもせず凰雅は新たなダンジョンに挑む興奮を抑えきれずに口元をニヤつかせて足を踏み入れた。

『高校生Aは便利屋です、決して勇者ではありません!』も宜しかったら読んでみてください!

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