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第二十七話 アバロンの墓

「よぉし、覚悟はいいか? ギルマス」

「おうよ」

「よしっ行こうぜ最凶のお化け屋敷に!」


 ビクッ、本当は無理している。怖いものは怖い。無理なものは無理なのだ。

 俺こと神野凰雅はお化けやら、そういった恐怖が人一倍苦手なのだ!


「ははは! 流石だなわらわら出てきたぞ!」

「ギャアアアアアア!」


 ゴースト型のモンスターやゾンビ型のモンスターが湧き出るように群がってくる。中にはレアモンスターの騎士ゾンビまでいる。


 刀を抜くと同時に二体のゾンビの首を落とし、騎士ゾンビの剣を受け流しつつ追撃を加える。


「流石だな! ギルマスに負けてらんないぜ! ゴーストは任せろ!」


 ゴーストは物理攻撃が効きづらいため面倒だが、使役者(テイマー)のスキルで充分やれる。

 使役者(テイマー)のスキルの一つ【借り受け】スキルは、テイムしたモンスターのスキルを一つ使えることだ。


 ケーンが今テイムしているのは『マイティエイ』、【放電】スキルを持った空飛ぶエイだ。


 洞窟内に雷鳴が迸る。雷に当てられたゴースト達が次々に消滅した。


「さっさと行くぞ! 目的はもっと奥だろ!」

「はいはい、そう急かさなくても行きますよ」


 一個目の集団を約五分以内に突破した二人は、通称『ナイトパレード』と呼ばれる場所を目指しダンジョンを進んでいる。


 その後もモンスターが出てきては洞窟内に悲鳴と雷鳴が鳴り響き、モンスター達を圧倒的な力でねじ伏せていった。


「やっと到着……もうイヤだ」

「よ〜く頑張ったぞギルマス! 限界まで行ってみようか!」


『アバロンの墓』でのボスが出現する大広間。夜になると通称『ナイトパレード』が起こる。

『ナイトパレード』とは通常出現する敵の全てが二倍になっていることである。大きさ、数、攻撃力、防御力、体力、そして経験値もだ。


『アバロンの墓』でしか実装されていない機能だが今となっては分からない。AEWでは大人気の機能だった

 しかし、難易度は倍以上にも跳ね上がる。知らずに踏み込んでしまえば命の危機と言っても過言ではないはずだ。


「午前九時、……始まる」


 ゴクリと大きな唾を飲む音。心臓もバクバク暴れている。何度経験しても体の拒否反応だけは抑えられない。


「……ほれ、頑張れギルマス!」


 地面が発行し光の粒が次々と形になってゆく。モンスターがポップする時のエフェクトである。

 それが始まったと同時に刀を抜こうとした俺は、不意に前に押し出された。


 ーーーー三百六十度、全方位から巨大なゾンビが現れる。


「ッッッッ!? やりやがったなクソ野郎! 後で覚えておけよ!」


 右から、左から、前から、上から、後から、次々と攻撃してくるゾンビはバイオハザード所ではない。


 ゾンビの倒し方は首を切断するか、脳を潰すことだ。頭がウィークポイントとなっており、それ以外の部分を攻撃する意味としては機動力を奪うくらいだ。

 ほぼ無尽蔵に設定されたライフポイントも頭を潰すか切り離せば、即死する。


「本気で行くぞ!」


 ゾンビ達が壁になり、ケーンからは俺のことが見えていないはずだ。

『霧化』と『吸血鬼の翼』を発動する。


 背中から翼が生え、俺の体の左半身を捉えるはずだったゾンビの拳は通り抜け地面を抉った。

 この翼は服に優しい代物だ。物理障害を無効化出来ることから、物理無効化能力があるのではと推測している。


 ゾンビの首元まで飛翔し、抜刀する。オリハルコン製の刀の切れ味を舐めてはいけない。綺麗な断面を残し、首は地面に着陸した。

 首なしになったゾンビを踏み台に跳躍し、もう一体、ゾンビの首を切り落とす。


「ギルマス! ゴースト一体行ったぞ!」


 上を見るとゾワリと鳥肌が立った。どうも俺はゾンビよりゴーストの方がダメらしい。

 それはもちろん精神的な問題だが、能力的にもゴースト型は最悪だ。


「やっぱりダメかっ!」


 避けるタイミングを少し遅らしわざと攻撃を受ける。『霧化』を発動したにも関わらず脇腹は血で染まりつつあった。


 ゴースト型のモンスターの説明には霊体と書かれている。つまり、物理的性質はひとつもない可能性が高かったのだ。そして、それは今この身をもって証明された。


 レベルもそれなりに上がったからなのか傷は再生されていた。浅かったと言えども人間ではありえない脅威的な再生速度だ。


「こういう時は……逃げる!」


 まっすぐ大広間の入口に向かって走る。ゾンビ達の攻撃も無視して直線的に走る。ゴーストも初めは追ってきたが途中で見失い、もう一人の標的の方へ飛んでいった。


「ふぅ、マジでショップ実装されてくれねぇかな」


 ショップには【魔法撃(まほうげき)】スキルが付与された武器も売っている。

 このままだと俺は一生、物理的性質がない霊体モンスターが出現するダンジョンにはソロで行くことが出来ない。


「おっと、あと十分か、やったろうじゃねぇか」


『ナイトパレード』は殲滅することは出来ない。無限にモンスターがポップする仕組みになっているからだ。そのため制限時間も設けられ、それが三十分なのだ。


「ギルマス〜ラスト三分だが、いなくなっちまったぞ」


 目の前に立ちはだかる敵はなく全て消滅寸前のゾンビの首なし死体だった。

 時間は九時から九時三十分まで、まだ時間は二十七分だ。


「ありゃ? 流石過ぎねぇか? ランキング一位は現実でも最強か?」

「やめろ、何サラッと何事も無かったよくにしてやがる! よくも突き出してくれたなおい?」

「ギルマス、その話はあとだ。……何かいる」


 出口に一人の騎士が立っている。

 しかし『ナイトパレード』中なのにも関わらず体はよくて二メートル、普通の人間と同じ身長だ。


「支援頼む」

「おい!」


 剣を自分の前に突き刺し剣の柄の部分に手を乗せ、堂々した佇まいだ。

 騎士の剣の間合いに右足を踏み込む。全体重を乗せた抜刀が騎士の首を襲う。


 ガキィィーーーーン!!


「ッッ!」

 今日、間違いなく最速の抜刀だったはずだ。それに吸血鬼の筋力を兼ね備えた刀の重みはそう易々と止められるものではない。


「汝、かの王を求めるならば聖い」


 フッと騎士の姿が消える。刀は空を切った。

 時間は九時三十分になっていた。

『ナイトパレード』の謎の騎士、未実装か新実装か、どちらにしろAEWには存在しなかったものだ。


「とりあえず、出るか」


 二人は『ナイトパレード』初日を無事クリアした。しかし、そのダンジョンの謎に足を踏み込むこととなる。

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