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第十八話 勇者の決意

勇者登場しちゃいました。


「(さっきの女性はまさか!? 裏ランカーか?)」


 紫龍 対【転移】と【投剣】を操る女性の戦いの余韻から俺はまだ抜けきれていない。

 激流の八龍(ハイドロ・ドラゴン)をあそこまで容易く攻略するのに必要な技術はちょっとやそっとで身につけられるものではない。


「(思ったより動揺しないんだな、一旦引くにしてもどこへ?)」


 人質を救うのが目的だったがこれでは力不足だ。やはりレベル上げしかないのか。


「転移! 『秘境の鉱山』!」


 レベル上げには強い武器が必要だ。その為にかつてランカー達と共に潜ったダンジョンへと行く先を変えた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 時を少し遡ること七時間前、天塚家の前に十人の少年少女が押しかけていた。仲間が死んでしまった次の日のことだ。


「俺はあの十人の仇を打ちたいと思ってる。レベルを上げていつかはあの魔王を殺したいと思ってる」

「ああ、それでこの街を出るのか。レベル上げのために」

「うん。実のところお前が最後だ」


 そりゃそうだろな、俺聖剣も使えないし。仇を取るために命をかけるか、自身の安全を取るか…半々ってことか。


「俺も行くよ。少しでも役に立ちたいからな」

「っ! 本当にいいのか!?」

「ああ、俺がやりたいんだ」

「ありがとう!! 今すぐ出られるか?一応最低限の荷物は持っていくけれど俺達には【転移】も使えるようになったし、特にいらないだろう?」

「そうだな。このまま行こう」


 今現時点での俺のステータスはこんな感じだ。


 《ステータス》

 job 旅人 Lv 57

 attack 7450

 lifepoint 19600

 defense 5400

 スキル

 主人公補正 瞬間移動 転移 調理 回復 削奪の魔眼 概念破壊


 完全に勇者の能力がない訳ではなく【擬似聖剣】スキルと【瞬間移動】スキルに交換されたという感じだ。それと百パーセント原因は『これ』のせいだろう……やけに物騒なスキルが追加されている。


「瞳也! 目が!」


 ああしまった。んーなんて誤魔化そうか。


「……朝起きたらこうなってたんだ」

 だってしょうがないだろ? 目が変色した理由なんて聞いたことない。


「痛みとかはないのか? 大丈夫ならいいけど」

「害は全くない、というか何にも変わってない」


 カシャッ!


「あっごめんね。リアルオッドアイなんてお目にかかれるものじゃないから記念にね」


 よかった〜この世界にはオッドアイという便利な言葉があったじゃないか!


「それはそれとして、俺達はどこへ行くんだ?」

「その事なんだけど『仙境』というダンジョンがあるんだ! 確か台湾だったはず」


 AEWでは中々有名な経験値用のダンジョンだ。台湾の山奥、仙人になる為に修行する場所という設定だったはずだ。


「それはいいかもな。足でまといになるだろうが頼む」


 俺は深々と頭を下げる。これから命をかけて強くなりに行く。何度も命を助けてもらうことになるだろう。


「瞳也……強くなろうな」

「ああ、ありがとう」


 何もできなかった歯がゆい思いは誰の胸にも刻み込まれている事だろう。

 悔しい思いを胸に十一人の勇者達は街を旅立った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ここが入り口だな……凄いな」


 断崖絶壁、その言葉通りだった。転移しなければどこが入り口かも分からない。険しい谷間に断崖絶壁の壁があり、そこに洞窟の様に入り口が配置されている。


「覚悟は出来たな。行くぞ」


 リーダーはクラスでも中心的な人物だった少年、阿形(あがた) (さとし)。キャラ作りで明るく振舞っているのかと思っていたが、本当の彼は熱い心を持った少年だった。

 俺の彼への印象はこの世界になってしまってから大きく変化した。あまり信用してなかったのが本音だったが今では一番信用できると言っても過言ではない。


「ゲームと一緒なんだな」


 これ程ゲームの時と内装が似ているダンジョンは初めてかもしれない。峡谷を歩いている俺らの前にモンスターの群れが現れた。

 このダンジョンは経験値ダンジョンとは思えないほど難易度が高いことで有名だった。ソロでクリア出来ない経験値ダンジョンは早々ない。


 ーーーー死闘が始まった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「だ〜か〜ら〜私はドイツにいたの! でも魔王が現れたから逃げてきたの!」

「一人で?」

「一人で!」


 ふーんと適当に流す。どう考えても信じられない。こんな小さな子供を放置している親もどうかと思う。


「信じてないでしょ!」

「うん。親御さんはどうしたの?」

「……分かんない。もうずっと前からもう……」

「そう、それはごめんなさい。じゃあ今育ててくれている人は?」

「それはいるよ!でもその話は後に……敵だ!」


 目の前には影で体ができ手が刃物で出来ているモンスターが現れた。彼女は敵をどうやって察知したのだろう?


「私戦えないわよ?」

「元から私だけで充分だよ! 下がっててね!」

 刀を二刀横に携え、その柄に手をかけた。


 ーーーー五秒、その一時の間にモンスターは霧となって死んでしまった。


「行こっか! 凰雅にぃには秘密にしてね!」


 モンスターを瞬殺した少女は何事もなかったように歩き出した。


「魔王と正体不明(ノン・コード)を弟子に持つ人物の顔を見てみたいわね」

「何か言った?」


 静かに首を横に振る。


「行きましょう」

 天を見上げた後、少女は歩き出した。

今年ありがとうございました!来年もよろしくお願いします!

感想等とても励みになります。宜しかったらお願いします。

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