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第八話 訪れる変革の時

『はいは〜い、お久しぶりです〜。今日皆さんを集めたのは、そうだな〜配信記念とでも言ったところですよ〜。遂に現実世界との合体の日が訪れました、いぇーい!!』

久々に聞く陽気でふざけた口調の頭に響き渡る不思議な声だ。

「合体? ゲームの話じゃないのか?」

『君達のジョブに設定されていたでしょ〜世界運営ってね! 今宵世界は恐怖と絶望に埋め尽くされるだろう、一人でも多く救う為に武器を作れ、生き残る為にはそれしかないのだから……』

しかし、その雰囲気は決して軽いものではない。それがこの話が真実だと知らしめていた。

「ふざけんじゃねぇ! お前に何で世界をどうこうされなきゃいけねぇんだ!」

 ふはは、と笑い声が漏れている。

『自分の作った物を自分で壊して何が悪い! まあ、茶番はここまで〜、君達は僕に利用される駒だ、大人しく自分のいた世界の変貌を目に焼き付けろ 』

 冷酷に言い放たれた言葉に反抗することは出来なかった。重圧がのしかかり、なんとか四つん這いの状態を保つ事で精一杯だ。

 神秘的な宮殿の床にほんの二週間前まで通っていた学校の校庭が映し出される、部活に励む生徒達や下校していく生徒達の姿が鮮明に映っていた。

「あぐっ」

 声を出そうとするが重圧はそれを許さない、変な音が口から漏れるだけだ。

『さぁ変革の時は来た! 強く育て我が子達よ!!』

 一瞬何が起こったのか理解出来なかった、理解したくなかった。現存しない古代の植物をモチーフにしたダンジョンが見慣れた校舎の姿を上書きしていく。校庭に光の玉、モンスターがポップする時のエフェクトが次々と現れる。

 ーーーーっ!やめろーーーーーー!!!!!!

 血飛沫が舞う、呆気に取られている子羊達の手には初期装備の片手剣が握られている。いきなり現れた剣で異形の化け物に挑もうとする者はいない。

『くそっ! あんなヤツら俺なら!』

 決してゲームの中で上位のモンスターではない雑魚だ、俺なら問題なくあいつらを救えるのに!

 必死の思いで剣を取り出す、画面のボタンを選択せずともまるで自分の意志に呼応するようだった。ふと思い出す、

 ーーーーこの場所が唯一下界と繋がる場所だと、床を壊せば帰れる事を、救いに行くことが出来ることを!


 双剣の一本を床に突き立て全体重をかける、重圧の力も加わっているはずだが傷がつく様子はない。

『あきらめてっ!ぜってぇあきらめねぇ!!』

 手のひらが赤黒く変色し始める、過度な負担がかかりすぎて充血しているのだ。その痛みは味わった事のないほどの痛みだがそれを気にせず、さらに下へと体重をかける。

『ーーーーそ の き も ち に う そ は ない な!?』

『あたりめぇだろうが! あいつらを救えるなら悪魔にでも魂を売ってやる! 』

『期待 し ている ぞ、決し て負け るな!!』

 どこから聞こえてくるのかも誰の声かも分からない声、弱々しいその声からは想像出来ない強い思いが聞こえた。

『あたりめぇだろうが、俺は負けねぇ!』

 身体が赤い光に包まれる、溢れ出るその光はとても温かく強い力を与えてくれる。

 俺の意思に応え、スキルが発動、勝手に素材も武器形状も選択される。

 重圧に逆らい立ち上がる、そして手に持つ双剣を地面に向かって振り下ろす。光は今も溢れ出したままだ。

『無駄だ! 次元が違うんだよ、諦めて侵食される世界を見ておけ!』

 重圧がさらに強くなる、膝が折れそうになる。

 ーーーーまだだ、まだ足りねぇ!!

 思考が加速する、意志の力がシステムのルールをねじ曲げる。

「はぁぁぁーー!! 負けてたまるか!」

 双剣の輝きに光が吸収されていく、虹色の結晶でできていた刃は赤い光を取り込み紅蓮の刃へと姿を変える。

 バキ、バキッィィィーーーン!!!!

『バカな!? 行かせるか!』

「仮はぜってぇ返す!! 首を洗って待ってろ!」

『間に合わなーー』

 自称ゲームマスターの叫びに似た言葉を聞き終えることなく、視界は白い光に包まれた。

 鮮明にかつての校庭をイメージする、あの惨状を思い出し歯ぎしりが鳴った。

「早くしやがれ!!」

 瞬間、鮮明な光景が飛び込んできた。

 校庭にほとんど生徒達は残っていない、数十の血塗れの亡骸が転がっている中央に一人の女子生徒が化け物と対峙している。諦めて剣を投げつけた、背を向けて逃げることを選択したようだ。

「早くしやがれクソ野郎!」


 校庭に光の玉が現れる。体は実体を取り戻した、直後、叛逆を誓った少年が女子生徒に向かって振り下ろされた斧を切り裂いた。

 紅蓮の双剣で視界に捉えた敵を屠っていく、少女を守る形で戦う少年の姿はヒーローにも見えたかもしれない。

「間に合ったーー」

 一人の少女の安全を目で確認し、少年はその場に倒れ意識を失った。

 序章は終わりを告げた、世界の歯車は加速する。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 校庭で意識を失った凰雅は自宅に運ばれ多くの人に介抱してもらっていた。意識が覚醒したのは丸々二日後、世界には不気味な静寂が訪れていた。

 少年は蹂躙された世界を聞き、絶望した。諦めた訳では無い、叛逆の意思をさらに強めたのだった。

序章終了です! ここまでは序章、これから本当の物語が始まって行きます!!

これからもよろしくお願いします!

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