プロローグ
剣が交差した。その時鳴り響いた金属同士がぶつかりあった音を認識した直後無意識に両手が動く。その手に持つ双剣は異形の化け物の肉を裂き命を刈り取った。その少年は一人の少女を背に化け物を切り刻む。
戦いが終わった時、その周りには異形の化け物と共に数十人のクラスメイトの死体も転がっていた。その惨状に少年は空に向かって吼えた、そのまま過度な集中の反動で意識は沈んでいく。
異形の化け物が世界に現れ始めたのがこの日、全てが始まったのはその二週間ほど前のあの日だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
賑やかな空間、その雰囲気を作っているのはクラス内でも人気で明るい野球部の二人だ。文化祭の打ち上げで焼肉屋にクラス全員参加で来ている。
「凰雅、全員で写真撮ろうぜ!」
俺の名前を呼ぶ声が聞こえ、ふとその方向を見るとクラスメイト達が一箇所に集まり始めていた。
「ああ、今行く」
そう内心とは違う言葉で取り繕って輪の中に入っていく。中央近くのポジションを位置取りカメラに向かってピースサインと作り笑顔を見せる。
携帯からカシャという音が聞こえ野球部の一人が携帯に小走りで近寄った。ピロンと通知音がポケットから聞こえる、全員に写真を転送したようだ。
「やっぱり凰雅はイケメンだな!」
野球部の一人がそう言って肩を組んできた。傍から見ても仲良い友達に見えているはずだ。
自分でも外見的要素は悪くないと思っている、その外見だからこそ適当に取り繕っているだけで人が寄ってくるのだ。
「そんな事ねぇよ、お前は充分イケメンだろうが」
確かにという声が聞こえ笑いが起こる。もちろん端っこで一人でいる女子もいるが大して気にしない、取り繕って上手く過ごして行けるならそれでいい。
「凰雅!ちょっと来てくれ、こいつらと一緒に写真撮ろうぜ!」
野球部二人、ダンス部のクラスで中心的な女子が二人、如何にも人気が出そうな組み合わせだ。
「トプ画用に写真撮ろうぜ!」
不服な顔を隠さない人も写ったクラス写真を使えないと踏んだ女子が人を厳選したという所だろう。
「はいはい」
同じようにピースサインと作り笑顔を作る。
「はいチーズ!」
シャッター音が聞こえる前に世界が白黒に染まった。
「おい! どうしたんだ!?」
まるで時が止まった様に誰も動かない。
「少し黙って」
自分以外が動けないと思っていた世界で声が聞こえた。鋭く温かみのないその声には聞き覚えがあった。
「春川! 動けるのか?」
返事を聞く前に景色が一転した。
お試しでーす