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ペルソナ・ノン・グラータ 日本鎖国  作者: テロメア
第3章 後篇
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      ♪



 こぽこぽと音がする。

 すると、辺りには珈琲の芳ばしい香りが満ちる。

 あれから世界は目まぐるしく変化していった。世界の国々は日本を敵視し、日本は自衛手段として鎖国政策をした。それに伴い各国からの影響がなくなり、教育制度が抜本的に見直されることが決定し、それを機に今まで真実を報道してこなかったテレビが競うように次々に歴史検証番組を放送し、相次いで真実が雪崩の如くお茶の間を賑わせていた。世界的にも珍しい自分の国を嫌いになれ政策の裏側により、売国容疑の逮捕者が続出、刑務所が溢れ問題が山積しているとか。

 吸血鬼(ヴァンパイア)種族――アヴァロン系日本人はそんな中、教育総監督者として日本の教育の根本に関わることが決定された。これには賛成と反対で議会が紛糾したが、最後は賛成で落ち着いた。日本国は大和民族とアヴァロン民族が、ともに助け合って生きていく。そんな環境が徐々にだけど、出来つつあった。

 そして、世界は冷戦状態となり、実質日々死者が出ない平和が維持されつつあった。

「結局、成るようになったね」

 リリヤがそう呟き、ゆまの顔を見た。

 ゆまは先の戦闘で手と足を負傷し、手術をして現在リハビリ中だった。車椅子生活もだんだんと慣れてきた、そんな日々。ゆまはリリヤの言葉に、筆談ができないから精神感応(テレパシー)で応える。

《そうだね、とりあえずこれで日本は少しはまともな一歩を踏み出したね》

 ゆまが最初に抱いていた苛立ちの原因である閉塞感は、今の日本にはない。

 あるのは新しい未来に向かって、必死にみんなが一丸に戦う、主権国家として当たり前の光景だった。それにゆまは今、とても満足していた。

 そんな満足げなゆまを見て、リリヤは思わぬ提案をする。

「もうここも安定したし――ゆま、新しい世界に行ってみない?」

《新しい世界?》

 その言葉に、ゆまは首を傾げて疑問を呈する。

「そう、君ほどの霊能力者なら問題ないよ。なんせ、前の戦いでバイロケーションは成功しているわけだし、あの能力をもっと使いこなせれば――新しい世界に行けるよ」

 バイロケーション、この前の戦闘で使えるようになった能力だった。

 つまり、幽体離脱して別の世界に行こうと言われているのだった。

「この全ての世界――『世界樹』を自由に回れるんだ。そうなると、ボクとしても階級が上がって嬉しい限りだしね、何より違う世界での派閥の暴走を止められる」

《世界樹?》

「うん、この世界は簡単に説明すると球体みたいなもので、その真ん中から放射線状に世界の枝――光世界が広がっているんだ。そうだね、毬藻みたいなものかな。その枝の一つ一つにこうした世界があるんだ。まあ、この世界的な言い方をすれば、超並行世界だね」

 魂一貫で不安かもしれないけど、大丈夫だよ。そのためにボク達妖精(ピクシー)がいるんだ。その光世界の枝の一つに座標として固定できるから、肉体のあるこの世界に帰るのに迷子になることもないよ――と、矢継ぎ早にそう説明するリリヤ。

 つまり、その超並行世界の一つ一つで先の戦いのような派閥抗争が行われている、と。

 そうゆまは理解して、その途方の無さにゆまは少し呆れた。

「それにゆまにも見せてあげたいんだよ。『世界』はね、とっても美しいんだよ」

 広がり続ける世界の先は赤く輝き、近付いてくる世界の内側は青く輝いている。花火のように広がる世界は内から外へ輝きが極色彩に変わり、僕達を真っ白に包んでくれる――と、リリヤは熱っぽく郷土を語ってくれた。

 ゆまはそれに小さく笑みながら、《楽しみにしてる》と、誘いに応えた。

 すると、ゆっくりと鉄郎がマグカップを二つ持って歩いてきた。

「どうしたの? 何だか楽しそうだね」

「うん、まあね」

 リリヤは鉄郎の言葉に応えてから、「じゃあ、ボクは鉄郎に頼まれた仕事をしてくるよ」と、部屋をそそくさと出て行った。もしかしたら、鉄郎と二人きりにしてくれるために気を遣ってくれたのかもしれない、とゆまは少し思った。心の中で密かにお礼を言っておいた。

「――はい、ゆまちゃん」

 ぎこちなく震える左手の甲に右手を直角に乗せてから、その右手を笑顔で挙げて『ありがとう』と手話でお礼をして、鉄郎からマグカップを受け取った。

 手話も少しずつ覚えてきた、今は挨拶程度だけどリハビリ中の手だと筆談より楽だった。

 ゆまがマグカップに広がるミルクたっぷりのカフェオレをゆっくり、ふー、ふー、と吹いてから、こくっ、と飲んだ。暖かい丁度飲みやすい温度で、身体の中から暖まる。

 初夏の夜はまだ少し冷えるから丁度いい。

 暖かい飲み物は必需品だ。

「よっと」

 鉄郎はふわりとゆまの横に腰掛けて、ゆまと同じカフェオレを飲んでいた。

 しばらく無言で二人でカフェオレのゆるりと飲む。

 ゆまはこうした静かな空気も好きだった。

 ちら、と鉄郎の方を見る……少しうずうずして、また、ちらっ、と見える。

「ん? どうしたの?」

 その視線に気付いた鉄郎がゆまの瞳を覗き込んでくる。

 でも、ゆまは少し恥ずかしくて、なかなか表現し辛かった。

 ……甘えたい、なんてやっぱり恥ずかしかった。

 そんな風にゆまがもじもじとしていたら、おもむろに鉄郎はマグカップを置いて立ち上がった。――その行動に、どうしよう、何か気を悪くすることをしちゃったかな? という不安が心に広がった。けど、そんなゆまの気持ちが分かるように、鉄郎はゆまの近くに来て――ふわっ、と、ゆまの小さな身体をお姫様だっこしてくれた。

 ゆまは慌ててマグカップを机に置いて、鉄郎の白いワイシャツをきゅっと掴んだ。

 いつも車椅子に乗せて貰っているときにだっこされるけど、それとはまた別の意味で抱き上げられたことに、ゆまはどきどきと心拍数が早くなるのが分かった。

 そのどきどきが鉄郎に聞こえてしまうんじゃないかと思うと、とても恥ずかしかった。

「ゆまちゃん」

 頭を傾けて、ゆまの頭に頬をくっつけて鉄郎は優しくいう。

「甘えたいときは、甘えてくれて良いんだよ――僕達はもう、家族だろう?」

 その鉄郎の言葉に、驚いて顔を上げて鉄郎の顔を見る。

 その『家族』という言葉に、心がきゅん、と締め付けられたように感じた。

「おや? ……違った?」

 あまりにゆまが驚いたままの顔だったのか、鉄郎が訂正した方が良いのかな? という顔で訪ねてきたのに、ゆまは力一杯首を左右に振ってそれを否定する。

 違うわけがない、だって、あたしは鉄郎さんのことが大好きだもんっ!

 そう、言葉に出すのは恥ずかしすぎる言葉とともに。

「じゃあ、僕達は家族――だねっ」

 その再度の確認に、ゆまはまた力強く今度は縦に首をこくこく、と振った。

 頬から耳まで熱い、その嬉しくて、でもちょっぴり恥ずかしい事実認定。

 でも、自分が何よりも望んでいたことなのかもしれない、と、ゆまは小さく思った。

「じゃあ、ゆまちゃん。約束できるかな?」

 鉄郎のその言葉に、首を傾げてその言葉の続きを待った。

「家族は『信じること』、だよ。――甘えたいときは甘えたいと言ってね」

 その鉄郎の優しさに、じわっと涙が浮かんだが、それを鉄郎の胸に抱き付くことで誤魔化した。そのまま鉄郎の胸に身体を預けて、こくこく、と甘えながら頷いた。

 そんなゆまの頭に再び頬を当てて、鉄郎は優しく微笑んで言葉を続けた。

「だから、僕もときどきゆまちゃんに甘えさせてね」

 その思わぬ言葉に、ゆまは驚いて、嬉しさに全身の細胞が震えた。

 自分が頼ってもらえる、自分が甘えてもらえる、その事実はあまりにも嬉しいことだった。

 ゆまは浮かぶ涙を抑えられずに、ぽろぽろ零しながら、力強く頷いた。



「あー、良かった。ゆまちゃんは本当に良い子だなぁ」



 その言葉で空気ががらりと変わった――――。

 先程までの優しい雰囲気は消え去り、あるのはどこか張り詰めた――硝子と硝子を擦り付けたような、緊迫感だった。

「そう言えばさぁ、この間、聞きそびれたままのことがあったよねぇ?」

 まるでたった今、思い出したかのように鉄郎はそんな言葉を発した。

 その言葉はゆまのついさっきまで満ち足りた温かさから、氷のような冷たさに追いやった。

「この間、言いかけたことって――何?」

 耳元から聞こえる鉄郎の心臓の速さとゆまの速さが同調する。

 ゆまは真上から掛けられた言葉に、びくっ、と肩を震わせて鉄郎を――見れない。

 その顔を見てしまったら、すべてが終わってしまうような――そんな不安に覆われる。

 ゆまは今まで目まぐるしく変わる世界に甘え、埋没させていた疑念が喚起される。

 それは、本当は鉄郎が自分を怨んでいるんじゃないかという――疑念。

 最愛の妹をあたしに殺されたんだ、それなのにあたしを怨んでないわけがない……。

 本当は、最初からあたしに復讐するために優しくしてくれたんじゃないか――そんな疑念が頭を過ぎる度に、ゆまはそんなのは違う、絶対に違うんだ、と否定してきた。

 あの優しさが演技なわけないっ!

 そう、思い込んでいた……。

 ――でも、

「僕はさ、あれから考えたんだ。ゆまちゃんがあの時に、なんて言いたかったのかを」

 そんなものはただの思い込みだったのだ。

「こう言いたかったんじゃないかな?」


 ――あたしのこと、怨んでいませんか?


「てね」

 その言葉に、心臓が締め付けられるように痛かった。

 その痛さは、その言葉は嘘だと、そう聞きたくて――鉄郎のワイシャツを弱々しく握る。

 その時――ぐらっと、視界がブレた……。

 それは急激な――眠気だった。

「でね、本音を言うとね――その通りだったよ」

 鉄郎がゆまを抱き上げたまま、ゆっくりと歩き出す。

 その時に、ゆまが慌てて置いたマグカップの取っ手に引っ掛かり、床にカフェオレが広がっていく――下で広がるカフェオレと、ぐるぐると廻る視界に、ゆまは気持ち悪くなる。

「その通り、当初は明日香を殺した相手に復讐するために、一連の事件に関わったんだよ。明日香を殺した奴を、怨んでいたし、殺したいと今でも思っている」

 ゆっくりゆっくりと、水の中を歩いているように鈍く見える世界。

 鉄郎の言葉に連動して、どんどんとゆまの五感が鈍くなっていく……。

 視野が狭まり、聴覚が遠退くなか、聞こえる言葉はすべて幻聴だと信じたかった。

 でも、魔法は起きず、世界は残酷にも現実を突き付けてくる。

 狭くなった視野の下に、揺れる波がじわっと現れる。

 目頭が熱くなり、胸が潰れるぐらい締め付けられて――痛い。

 違う、あたしは、違う――そう言いたくても声は出ず、何より何も違わなかった。

 言いたい言葉も、言わなくてはいけない言葉も、何も見つからず、紡げず、空気が喉から虚しく漏れるだけだった。

「でもね、ゆまちゃんが可愛くて可愛くて――どうしようかと、思ってね」

 えっ?――と、顔を上げてその言葉の真意を知りたかった。

 けど、もう身体が上手く動かない。

 視界も薄れ、意識も混濁し、思考も乱れていた。

「おやおや、少し睡眠薬を入れすぎたのかな? ごめんね、こうした話をしている間に誤解や早合点で逃げたり、魔法を使われてしまわないようにしときたかったんだ」

 その時、がらら――と、どこかの引き戸が開けられた音。

 その次に、ふわっ、と頬を撫でる――風。

 その開いた先がベランダなのだとわかった瞬間、あたしは殺されてしまうんだとどこか冷静に感じ取れてしまった。

 お願い、やめて……あたし、鉄郎さんのこと…………

 精神感応(テレパシー)でその思いを伝えたくても――鉄郎の心は、まったく読めなかった。

「ロードができない人生って――悲しいよね」

 その言葉はどこまでも冷静で、どこか悲哀に満ちていて、どこかで優しさがあった。

 だから、ゆまは余計に心が締め付けられた。

 もしかしたら、鉄郎さんは自分のことを許そうとしてくれているんじゃないか?

 そんな甘い考えを抱いてしまうぐらい、あたしは鉄郎さんに依存していた。

 そのことが余計ゆまは――許せなかった。

 ゆまは自分で自分が許せなかった。

 どうしてあの時、リリヤの手を取ってしまったのだろう?

 どうしてあの時、ペンを振るってしまったのだろう?

 どうしてあの時……自分の力に――傲ってしまったのだろう?

 ゆまの中には、過去の後悔が渦巻く。

 どうしてこんなことになってしまったのだろうか?

 そう考えると、すべては自分が原因だと気が付いた。気が付いてしまった。

 今まで、そうじゃないと、そんなことはないと――自分を誤魔化していた。

 でも、もう――誤魔化すことは、できなかった。

 ごめんなさい……。

 そう心で呟いてしまうと、もう止まらなくなる。

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……………………



「さて、ここで選択肢です」


 そんな時、どこからかそんな言葉が頭に谺した。

「一、このまま復讐されることに甘んじる」

 そ……それでも、仕方がないよ……。

 ゆまは、そう心でその言葉に反応した。

「二、返り討ちにする」

 そんなの、絶対に駄目ッ!!

 そう、強く反論した。

 しかし、そんなことはお構いなしに選択肢は次を告げた。

「三、過去を変える」

 ――えっ?

 そんなことが……でき――――



 そう、その声に訪ねようとすると、急に世界に感触が戻った。

 爽やかな風が肌に触れるのがわかる。

 でも、身体は重く、世界は悲しく、言葉は辛かった。

「……ゆまちゃん、僕は君に、生まれて初めて迷惑な嘘を吐くよ」

 そう、右の耳元で囁かれた言葉に、ワイシャツを握った手が震えた。

「君を――――許さない」

 鉄郎のその言葉に心臓が一瞬、止まった。

 しかし、それと同時に、混乱が生じる。

 その言葉は――どっちなの?

 と。

 けど、その答えはなく、ただただ沈黙が降り積もる。

 その沈黙にわかったことは、これがあたしの――罰。

 どんなに謝っても、どんなに贖っても、どんなに償っても、消えない――罪。

 その罪に対する、これがあたしの罰なのだ。

 そう、ゆまは理解した。

 あたしが壊してしまった、すべてに対しての罪。

 それをあたしは一生背負って生きていく――。

 そう理解したとき、どうしても思ってしまうことがあった。

 どうして、あたしなんて――生まれてきてしまったのだろう……?

 なんの取り柄もない子だった。

 ちょっと幽霊が視えるだけの、なんの特別もない子。

 親しい友達も居なかった。

 お父さんもお母さんも、あたしは愛していなかった。

 他人から愛されていたという実感がない。

 生き甲斐もなかった、遣りたいことも、立ち向かわなければならないことも――なかった。

 そんな他人から、世界から、必要とされていない子だった。

 そんなあたしが、他人と大切な人を、愛おしい人を――死なせてしまった。

 あたしはそんなつもりじゃなかったのに、

 あたしは、ただ、世界の理不尽を壊したかっただけなのに、

 あたしは……誰かから必要とされたかっただけなのに…………

 結果として、あたしは誰よりも不必要な存在となってしまった。

 それは人としての存在ではなく、象徴としての存在。

 不必要なものの、象徴としての…………。

 ただ、力を偶然手に入れて、それで浮かれてしまった愚かな子供だったのだ。

 ああ、どうしてあたしは生まれてきてしまったのだろう?

 過去を――過去を、変えられたらいいのに…………。

 そう、あたしは三つ目の選択肢が、脳を過ぎった。

 その時――頭に柔らかい感触があった。

 その感触を、知っている……。

 それは、鉄郎さんが頬を当ててくれている感触だ。

 そう、感じた瞬間――あたしは頬から大粒の涙をぽろぽろと零した。

 ごめんなさい、鉄郎さん。

 その時、鈍くなった身体が強く抱き締められた気がした。

 鉄郎さんの温かさが身体に染み渡る――この温かさに包まれているあたしは、幸せだった。

 その感覚に、幸せと感じてしまった心に、余計に涙が零れ、謝罪の言葉が零れた。

 ごめんなさい、明日香さん。

 ごめんなさい、名も知らない鬼の人。

 ごめんなさい、あたしが殺してしまったたくさんの人達。

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………。

 その時、今度は確かな感触として、ぎゅっと、抱き締められた感覚が身体に甘く広がった。

 その時、右の耳元で息が掛かる。

 その囁かれた言葉が、ゆっくりと頭に響き渡る。

 その響いた言葉が心にまで届いたとき、あたしは深い眠りへと――――落ちる。

「お休み、ゆまちゃん……」

 響いた言葉に、身体の感覚が無くなっていくなか、あたしは謝り続けた。

 ごめんなさい、鉄郎さん。

 そして…………ありがとう。

 大好きな、大好きな、鉄郎さん。

 そんな彼にあたしができることは、生まれてこないことだったんだ。

 ごめんなさい、鉄郎さん。

 生まれてきて……ごめんなさい……ごめんなさい……。



 大好き、ごめんなさい。






 第三話/急/了

 Persona non grata ― Fin ―

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