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ペルソナ・ノン・グラータ 日本鎖国  作者: テロメア
第3章 後篇
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 一八日早朝、千代田区有楽町のマンション駐車場で、衆院議員日本保守党の安部冬実氏(二五)が、車内でぐったりしているのをマンションの住人が発見。一一九番通報で駆け付けた救命救急員によって死亡が確認されました。安部氏の車には車体上部に何かが落下した痕跡があり、警視庁はそれが死因ではないかと発表。事件と事故の両面から、現在捜査中――。




 ネットの安部冬実の死亡記事に、誰よりも衝撃を受けたのは――蕾だった。

 あの時、クッションとして落ちた車で人が死んでしまった。

 自分が巻き込んで、人を殺してしまった。

 その人の死は、彼にとって何よりも重たいものだった。

 それも、自分の知らぬ内に自分が殺していた事実。

 それは、あの魔法少女とまったく同じだった。

 自分が復讐を誓った、あの事件と……。

「鉄郎さん、この人に家族や恋人は……」

 そう、自らの責を認め、そう問うた。

 すると、鉄郎はハーゲンダッツの空カップを積み上げて、冷たい言葉を並べた。

「彼女は幼い頃に両親を事故で亡くしている。そして、旧家の祖父に引き取られるが、その唯一肉親だった祖父も昨年他界している。天涯孤独という奴だ」

 その言葉を聞いて、どこか安心している自分がいた。

 それが溜まらなく、自分を許せない気持ちにさせた。

「しかし、彼女には恋人がいた」

「え……」

 その言葉に蕾は頭が真っ白になった――。


「池田智秋」


 鉄郎はそんな蕾に目もくれず、新しいハーゲンダッツのマカダミアナッツを開けていた。

「――二人は幼馴染みで、中学生時代から恋人という関係だ」

 その言葉に、心臓が止まりそうになった。

 それはまるで――自分と明日香のようだった。

 そんな蕾の心理を読み取ったように、蕾を見て小さく頬笑んだ。

「そう、まるで君のあったかもしれない未来の可能性だ」

 そう告げられた言葉に、蕾はびくっと小さく震えた。

 しかし、鉄郎の言葉はそれでは終わらなかった。

「その可能性を、君は自ら今度は奪う役になったわけだ」

 その言葉に、完全に血の気が引き、青ざめた蕾。

 そんな蕾の肩を軽く叩いて、鉄郎は頬笑んだ。

 その、まったくの作り物の笑顔で、


「となれば、今度は君が追われる番だよ」


 お~にさんこちら、てぇ~のなるほうへ、てね――と、耳元で囁かれた言葉に、蕾は完全に止めを刺された。全身から力が抜けていくのが分かった。

 そのまま鉄郎は頬笑みながら、手をひらひらさせて部屋を出て行ってしまった。

 池田智秋と言えば、この今日の円卓会議にも出席している日本の代表の一人だ。

 つまり、今日、今、同じ建物の中に居るんだ…………。

 自分だけは誰も傷付けていなく、誰も死なせていない――そんな幻想を抱いていた。

 それが自分の意思とは関係なく、人を傷付け、人を殺めていた。

 そんな現実を突き付けられ、愕然とした。

 自分が今までしてきた、感じてきた憎悪が――今度は自分自身に向けられる。


 復讐の結末には、復讐が待っている。

 そんな最悪の結末を、自ら招いてしまった……。

 蕾は、脱力し足が砕けたように膝を着いて――悔いた。



 例えそれが何を意味するものでなくとも。

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