#7 可能性とカノウセイ
西緒海新幹線南口で橘さんを待ち始めてから20分ほどがたった。約束の時間になっても彼女は来ない。あれ、ちょっとおかしいぞ。もしかして橘さんドタキャンしたのかな。そんな思いが脳裏をよぎる。それに今日は日曜日。いつも以上に人通りも多い。そんな人の流れに少し酔いながらも俺は彼女が来るのを今か今かと待っていた。
「あっ! ここにいたの。探したのよ」
後ろからそんな声が聞こえた。振り向くとそこには橘さんがいた。
「待ち合わせの場所少し違わない?私、北口にいたのよ」
「えっ!? 北口!? 俺が今いるのは……」
そうつぶやきながら少し上を見る。そこにはでかでかと――西緒海新幹線南口――と書かれていた。
「ハハ……。ごめんなさい。待ち合わせ場所少し間違えました」
「もぅ……。でもいいわ。こうやって会えたんだし。今日は付き合ってくれて本当にありがとうね。やっぱりこういうのって彼女さんに悪いかな?」
「あれ、俺に彼女がいるの知ってたんですか?」
「うん。風の噂ってやつかな。なんでも年上で英語がペラペラの彼女がいるのよね」
すごい、図星だ。当たってる! 少し驚いてしまったがすぐに冷静を装った。
「よく知ってますね、その通りです。でも今はイギリスに行ってて……。」
「ふ~ん。そうなんだ。じゃあこの後、私達がどこに行っても彼女さんが知ることはない訳だ」
「えっ!? 橘さんそれはズバリどういう意味ですか? 」
「えっ……。あぁこっちの話よ。気にしないで。さぁ! 行きましょう。ワッフル楽しみだな」
そんな橘さんに肩を押され俺は人気ワッフル店――イカリソウ。へと向かった。
***
街中には人々が繰り出し活気に満ち溢れている。今日は暖かい気候に恵まれ心なしか街を歩く人々の顔もにこやかだ。
「それにしても橘さん今から行くワッフル店のお店って名前変わってますよね。イカリソウってどんな意味があるんです?」
「さぁ……。詳しいことは知らないけどなんでも花の名前みたいよ。花言葉は……。秘密」
「えっ!? なんで秘密なんですか。教えてくださいよ橘さん」
そういう些細な事とても気になる。これは俺の性格なのかもしれない。
「ちょっとなんでも人に聞くもんじゃないわよ。少しは自分で調べなさいよ。あと私のこと橘さんじゃなくて梓って呼んでよ。なんだかよそよそしいじゃない」
「あっ! わかりました、そうします。梓さん」
「そうそれ! ありがとう。もしかしてカノウセイあるかも」
「可能性? 梓さんそれどういう意味なんです?」
「漢字じゃなくてカタカナの方ね。ううん。別に深い意味はないから」
そう言いながら梓さんは優しく微笑んだ。その笑顔がとても印象的だった。




