#3 ふわりと
元文化祭実行委員長、蓮場総司。まだ2年生ながらも文化祭の実行委員長を見事に成し遂げたその手腕は高く評価されている。次の生徒会長選挙への布石とも思えるその大胆な運営力は他の追随を許していない。その点、嫌々委員になった俺とは大違いだ。俺は今、その蓮場総司に電話をかけている。橘さんの連絡先を知るために。
プルルル~。
呼び出し音が数回なる。彼は出てくれるだろうか。いや、むしろ俺の電話番号を登録してるのだろうか。
「はい、もしもし。誰?」
その冷徹な声を聞いた瞬間、俺はものすごく緊張した。間違いない。総司だ。それもどうやら予想通り俺の電話番号を登録していないらしい。
その後、俺は電話をした理由を必死になって説明した。
「そうか。話はわかった。いいよ、協力するよ。橘さんの携帯番号これから言うね」
あれ、意外にも気前よく電話番号を教えてくれた。計算高い彼のこと何かしらの取引材料に利用するとも思っていたが。その後、総司は「来年の生徒会選挙よろしくね」という意味深な言葉を残して電話を切った。
「はぁ、緊張した。何はともあれ橘さんの連絡先を知ることができた。よし、さっそく電話してみよう」
そうつぶやきながら、俺は数字のボタンを間違えないようにゆっくりと押した。
ルルル~。
呼び出し音が数回なる。
橘さんからしたら知らない電話番号からの電話。果たして出てくれるだろうか?
「はい?もしもし。どなた?」
出てくれた!この声はまさしくさっきの橘さんだ。よし、とりあえず自分が誰かを説明してその後、拾った写真の件を伝えよう。
***
「ありがとう。実は無いことに気づいた後、必死になって探してたの。そして、もう見つからないと思ってた。だからとても嬉しいわ」
ことの顛末を説明すると橘さんはほっと安堵の息づかいをしながらそう言ってくれた。そして、彼女は続けてこう言った。
「今、東緒海公園にいるの。もし良ければ来てくれないかな?」と。
彼女のふわりとした優しい声に導かれるように、俺は東緒海公園へと向かった。