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巡査・頭山怛朗の活躍(第五話 巡査・頭山怛朗の妻)

作者: 頭山怛朗

ヤフーブログに投稿予定です

「頭山巡査は結婚しているって聞いたけど? 」

「結婚しているよ! その上三歳の女の子までいる。さらに奥さんのお腹は大きい! 」

「どんな奥さん? 」

「三歳年上の姉さん女房! なんでも大学一年の春休みに、女がトランク一つ持って頭山のマンションに押しかけたそうだ」

「奥さんの顔、知っている? 」

「そこまでは知らない。でも、きっとブスだぞ! 間違いない」両手の親指を口に入れ大きく開き、人指し指で両方の目じりを下げ、右手の薬指で鼻を豚鼻にして言った。「きっと、こんな顔だ。美人ではやってられないけど、こんな顔なら許せる」

「すみません! 」と声がかかった。カウンターを見ると女が立っていた。背が高く超美人だ。残念なのは三歳くらいの女の子を連れていて、お腹が大きいことだった。女の子は一生懸命、中を覗き込んでいた。

 二人の男が同時にカウンターに立った。

 男たちのくだらない話を聞いていた女巡査が肩をすくめた。普段、男たちが最初にカウンターに立つことはない。それは一番若い自分の役目なっているが、相手が超美人となると話が違うらしい。

「な、なんでしょうか? 」相手があまりの美人で言葉が詰まった。

「頭山は? 」と、女が言った。

「出ていますが……」

「お父さんはお仕事で出かけていて、いないんだって」

「……」女の子はカウンターの中に興味を失った。

「すみません、頭山に渡してもらえますか? 」女が弁当箱をカウンターの上に置いた。

「それからこれも……」女が申し訳なそうに自動車免許証を弁当箱の横に置いた。“頭山達郎”の顔があった。「すみません、彼(女は夫を“彼”と表現した。)は“ずさんだつろう”だから……」

「頭山怛朗を免許証不携帯で……」嬉しそうに三十前男が言った。

「残念だけれど」と女巡査が言った。「本署の前田警部補が私用車で迎えに来て、そのまま出かけたから運転していない」

 男たちが肩をすくめた。顔に「残念」と書かれていた。

「あら、この人知っているわ! 」と、頭山の妻が壁に張られた殺人犯の指名手配写真を見つめ言った。

「さつき寄ったT町のコンビニのカウンターにいた男よ。鼻と顎の形は変わっている。整形手術をしているのよ、きっと! 」

 二人の警官が本署に電話をして飛び出していった。

「奥さん、旦那さんに直接言えば旦那さんの凄い手柄になったかも……」と、女巡査が二人を見送って言った。

「とんでもない」と、頭山の妻が言った。「そんなことに関係したら忙しくなる。彼、明日から三連休。久しぶりに彼の実家に帰ることになっている。おじいちゃんとおばあちゃんが孫の顔を楽しみしているのに帰れなくなるわ」


 頭山の妻の通報に間違いなく殺人犯が一般市民の通報によって逮捕され、マスコミで話題になった。三人を殺した男の逮捕だった。頭山の妻が思った以上に男の逮捕は彼女が思った以上に大事で、署の全員がかり出され頭山怛朗の休みは取り消された。

 翌日、頭山怛朗の実家には頭山の姿はなく、妻と三歳の娘だけがテレビをおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に見ていた。

「すみません、こんな大事おおごとになるなんて思ってもいなかったのですから……」と、頭山怛朗の妻が言った。「こんなことなら彼の休みが終わってから通報するのだった」

「いいのよ」と、おばあちゃんが言った。「私たちが見たいのは麗華とあなたの顔よ。怛朗はどっちでもいい」

「……ですって! 怛朗、こっちでは必要とされていないから、そっちでがんばって」と、テレビに向かって頭山の妻が言った。


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