第7話
風に背中を押され森へ向けて全力で駆ける。
風の魔法を展開させて周囲に追い風を発生させて少しでも早く走る為だ。
これは、かなわない敵に出会ったしまった時の為に逃走用に編み出した魔法だ。
森の方からは、訓練所の外で聞いた爆発音が響いている。
なんで昨日もっとちゃんと言ってやれなかったのか後悔ばかりが浮かんでくる。
はやる気持ちを抑えつつ魔法を制御しながら森の様子を伺う
ステータスプレートが光った瞬間、索敵範囲が広がった。
どうやら索敵のスキルを身に着けることが出来た様だ。
森へ入りケンタとエラゴルンの戦闘場所に向かう。
配下の魔物は蹴散らし1対1で戦っているようだ。
現場に着くと丁度決着がついたようで倒れ込む巨体を見て安堵する俺。
「あれ?マークさん来てくれたんですか」
「ああ、無茶を止めるのも先輩の役目だからな」
「すいません、でも何とか倒すことが出来ました。この剣とポーションのお蔭ですね」
そう言って振り返り此方に歩いてくるケンタと話しているその瞬間、起き上がり最後の悪あがきとばかりにケンタに襲い掛かる。
ケンタより先に気が付いた俺はとっさに間に入りエラゴルンの一撃を受ける。
剣で受けたが、その爪であっさりと砕かれてしまい深々と体に食い込む。
肩口から腹にかけて引き裂かれバカみたいに流れ出る血だまりの中に倒れる。
倒れた俺を見て、ケンタが何かを叫んだ。
その瞬間、エラゴルンは粉々になって吹き飛び命を落とした。
魔物を倒して駆け寄ってきたケンタに
「マークさん!生きてますよね!」
そう言ってポーションを俺にかけるケンタの手を握って
「すまんな邪魔をしたみたいだ。もう、無駄だ。この傷じゃ長くはない。」
「そんなこと言わないでください、まだ何とかできます。いや、してみせます」
「もういいんだ、未練はいっぱいあるがそれでも最後に誰かに泣いてもらえるくらいの人生はおくれた。俺は満足だ」
涙を流すケンタの顔に笑顔を返して目をつむる。
(先輩、俺もそっちに行くことになりそうです。すいません、もっと長生きしてから行くつもりだったんですがこんな事になってしまいました。)
そうして俺は意識を手放した。
「あ、目が覚めました?」
ぼやける視界がはっきりとしてくるどうやらここは、俺の部屋のようだ。
声の方を見るとケンタが居た。
「俺は生きてるのか?」
「はい、何とか回復魔法が効いたみたいで助けることが出来ました。」
胸に手をやると深々と傷跡が残ってはいるようだが傷口はふさがっているようだ。
「そうか、死にそびれたか」
そう呟いた瞬間、いつの間にか入って来ていたマリアさんに頬を叩かれた
「何言ってるんですか!」
「すいません、変なことを言いました」
「そうです、それに貴方の命をケンタさんに背負わせる気だったんですか?」
そう言ってもう一発叩かれた。
「マリアさん、そのくらいにしてあげてください。まだ傷も完全に治っているわけではないんですから」
「あ、ごめんなさい」
少し涙目のマリアさんがシュンとなる
「ありがとな、ケンタ助けてくれて」
「何言ってるんですか、先に助けてくれたのはマークさんでしょ?これでおあいこです。」
「そうか、マリアさんもありがとうございます」
「え?私はそんな」
突然慌てだすマリアさんに首を傾げる俺たち
「それで、あれから何日たった?」
「えっと3日ですね、森の調査にもいきましたが確かにエラゴルンの討伐が確認できました。」
「そうですか、ケンタはどうなります?」
「どういうことですか?」
疑問顔で聞いてきたケンタにマリアさんが答える。
「簡単にいうと、どこからか現れた少年がギルドに登録して間もないのにエラゴルンをソロで討伐してしまったことがちょっとした事件でして」
「やりすぎたということですか?」
「いえ、倒していただいたことはあり難い事なんですが、なにぶん事が事なのでこれが表に出れば貴方を英雄に祭り上げようなんて輩が出てきてしまう可能性があるんですよ」
「なるほど、それは僕の望むことではないですね」
「そうですよね、報酬に関しては貴方に全額払いますが架空のパーティー名をでっち上げて、そのパーティーが倒したことにしてしまうなんてどうでしょう?
其れとは別に、ケンタさんとマークさんのランクをCにしようかと思うのですが」
「えーっと、僕はそれでいいです。」
「すいませんマリアさん、なんで俺までランクアップなんですか?」
「そうですね、一応保護者?と言うことになりますで同行した方がよろしいかと思いまして」
「たしかに、僕もマークさんが居てくれた方が心強いです」
「そうか、そう言ってもらえるのはあり難いな。
だが、実力が合わないランクでは仕事にならないでしょ?」
「そんなことないですよ、マークさんは仕事は丁寧ですし、隠されているようですがいろいろ多彩なスキルの修行をしていて、すでに何個かは取得していることを知っていますよ」
「そうなんですか?マークさん」
「えーっと、マリアさんどうしてそれを?」
「ヒミツです」
なんだろう、それ以上は聞いてはいけない気がする
「わかりました、それではあり難くその話を受けさせてもらいます」
「そう言って貰えるとうれしいです。それでは、ソロソロ仕事に戻ります」
そう言って部屋を出て行くマリアさんを見送る。
「マリアさんってもしかしてマークさんのことが好きなんですかね?」
そんなことをり送った後にケンタがボソッと言っていたがそんなわけ無いだろうと軽く答えた時、腹が鳴った。
そう言えば3日も食べていないのだ一気にお腹が減ってきた。
そのことを伝えるとケンタはふすこし笑った後、待っててくださいと言って部屋を出て行く。
台所からはいい匂いが漂ってくるベッドから起き上がろうとしたが倦怠感がありふらついたのであきらめて食事が運ばれてくるのを待つ。
ケンタがお盆に乗せて持ってきてくれた大きめのお椀には、透き通ったスープが入っていた。
具は入っていないようだったが、そのスープからは様々な野菜と肉の味わいが溶け合っていて一口飲むたびに体の中にしみわたっていくような気がした。
食事をを得ると、眠気が襲ってきたのでケンタに礼を言ってお盆を渡して眠りについた。
次の日には、体が嘘のように軽く、倦怠感もなくなっていた。
仕事を始めるのは、明日からにすることを決めて今日は、装備を整えるために各お店に回ることに決めた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
これで第1章は終わりになります。
続きの話が思いついたら再開いたします。




