第4話
門へ着き、ニコルに挨拶を済ませて門をくぐる。
街道を離れて30分くらい歩いたところで1匹のアシュナーを見かける。
「ケンタ、いたぞ」
「あれがそうですか、思っていたより強そうですね」
「そうか、取りあえず1人で戦ってみろ危なくなったら助けてやるから。」
「わかりました、やってみます」
そう言って鞘から剣を抜いて少しずつ間合いを詰めていくケンタ。
20m位まで近づいたところでアシュナーも気付いたようで威嚇の声を上げる。
そこからは、お互いの間合いを読み合うようにジリジリと接近して行き10mを切ったところでアシュナーが首筋に向けて獰猛な牙を突き立てるために飛びかかるが、ケンタは慌てることなく横に回り込むように避けてアシュナーの首に目掛けて剣を振り下ろす。
すっと
剣が通り抜けて首が落ちる。
少し遅れて血を吹きだし痙攣しながら倒れる身体部分を見て口を押えるケンタ。
頭を拾って近寄り声を掛ける
「大丈夫か?」
「はい。…いえ大丈夫じゃないですね。
僕は、どこかでゲーム気分で居たのかもしれません。
異世界に来てはしゃいで、自分のステータスを見て浮かれたままにこの生き物の命を奪ってしまいました」
「そうか、ゲームが何かわからんが俺たち冒険者の仕事は命を奪うことが隣り合わせになっているのは事実だ。
お前が嫌なら、料理屋をやるなんてのもありかもしれないぞお前の腕はチョットしたもんだしな。
だが、人間生きていれば様々な命を知らず知らずに奪ってしまっているのだから、割り切れるようなら割り切った方が精神的に楽だぞ。」
「そうですね、昨日食べたポロス鳥も…てかこっち来てから、野菜以外だとあの鳥しか食べてないじゃん」
「突然何を言い出すのかと思ったらそんなことか。」
「このアシュナーの肉っておいしいですか?」
「ん?そうだな筋っぽくて臭みも強いからあんまり美味くないってのが一般的なとこだな」
「そうですか、取りあえず木にでもかけて血抜きをしましょう。解体はそのあとで教えてください」
そう言って足にロープを結んで木の枝にアシュナーの体を引っ掛ける。
切り替え早いな、食べること優先なのか?
「もう大丈夫なのか?」
「そうですね、慣れるつもりはないですが殺した命には責任をもって向かっていきたいですね」
「そうか、ん?如何やら血の匂いに魅かれてアシュナーがこちらへ向かっているようだな」
「そんなことも分かるんですか?それもスキルですか?」
「まあな、まだスキルは取得してないが今修行中で範囲はまだ狭いがな」
俺は、耳に意識を集中して気配を探る。
足音からして2匹か、西と南から来ているようだ。
ケンタに西からくる方を任せて南側に向いて構える。
途中から一気に駆け出してきて草むらから飛び出してくるアシュナーの眉間に剣を突き刺して串刺しにた後足にロープを結んで木に掛けたところで振り向くとケンタも終わっていたようだ。
3匹の血抜きが終わり棒に括り付けて担いで帰る。
門をくぐってギルドへ向かう。
報告カウンターへ行き解体させてほしいことを伝え、奥の部屋に案内される。
ここは、ギルド内にある解体専用の部屋であり解体で出る血や油が部屋を汚さないようにコーティングと言うものが施されているうえに水魔法を用いて作られた魔道具により水を使いたい放題だ、ただ魔道具を動かすのは自分の魔力なので枯渇すると出せなくなる上に極度の疲労感に襲われるんだがかなり便利なものだ。
先ずは、手本に1匹解体する。
腹に内臓を傷つけないように解体用のナイフを入れて切り開きバケツに内臓を取り出して、いったん手とナイフを洗い腹から首にかけて切れ目を入れたあと各足の付根から先にかけても内側から切れ目を入れて足の側から順次剥ぎ終わり今度は、関節部分にナイフを入れて部位毎に切り分けて終了だ。
「こんな感じかな、じゃやってみるか?」
「わかりました、緊張しますね」
言葉とは裏腹に器用に解体していくケンタ。
2匹目を解体しているところで「あ!」っと言っていたので多分解体スキルでも覚えたんだろう、そこからの手付きとスピードが目に見えて変わった。
なんだろう、少しもやもやする。
解体した皮を2枚依頼品として提出して、肉も1匹分を残して買い取ってもらう。
1匹分でも30kg位はあって2人でもなかなか食べきれない量だ。
内臓は、肥料として使えるので肉より高く買い取ってもらえた。
残った、アシュナーの皮一枚と肉をもってギルドを後にした。
ケンタが臭みを消すために市場で香草を狩ってくるというので一足先に荷物を持って家へ帰る。
少しして帰ってきたケンタは、もも肉を薄く切って火を通して食べていた。
俺も1枚もらったが、噂通り筋っぽくて臭みの強い肉だった。
そこからは、大きめに切った塊2つに数回包丁を入れて、買ってきた香草を細かくしたものを練り込み大きな葉で包んだ後手を洗ってこちらへ来た。
「これで、20分くらい寝かせたら臭みもとれるでしょう」
又知らない単語が出てきた。
「ケンタ、その分?というのは何だ?」
「えーとですね、時間の単位ですよ」
そう言って、懐から何やら四角い板を取り出して見せられた。
それはステータスプレートのような感じで板に16:23と見たことのない字で表示されている。
「それは、なんだ?」
「えーっと、スマフォです。
ここの真ん中に書かれている数字が今の時間を表しています。
この世界には、時計と言うものは無いんですか?」
「ほう、それが時間か、ここらでは太陽の位置で動いているからな。
そういいば王都中心の広場に大きな時計塔と言うものが立っていると聞いたことがあるな。」
「王都ですか、そういえばここはなんていう名前の国なんですか?」
「すまんすまん、言ってなかったな、ここはドロワナ王国のダグラス領に位置するメーナっていう辺境の町だ。」
「ドロワナ王国ですか、他にはどんな国があるんですか?」
「その辺は、明日図書館で世界地図ってのを見ればわかるだろ。」
「それもそうですね、明日も案内お願いできますか?」
それから、少し時間をつぶした後ソロソロかなと言って台所へ戻っていった。
現在部屋は、肉を焼くジュージューという音と共に立ち上る蒸気からたならなくいい匂いに満たされていた。
はっきり言って、お腹は刺激されまくって限界寸前だ。
そうこうしているとケンタが、皿を抱えてやってくる。
皿の上には、大きな肉が一枚と付け合わせの野菜が乗っていた。
「どうぞ、もも肉のステーキを作ってみました。」
ステーキか初めて聞く名前だが、香ばしく焼き目のついた肉と付け合わせの野菜の色合いがなんとも鮮やかだ。
「これのソースをかけて食べてみてください」
そう言って、何やら茶色いスープの様なものを渡された。
先ずは一口、何もつけずに放り込む。もう我慢の限界だ。
放り込んだ肉は本当に先程試食したモノと同じなんだろうか、筋っぽさも臭みもなく口の中に広がる肉汁と香草の香りに一気に半分食べてしまう。
残り半分にソース?をかけて食べると先ほどとはまた違った驚きがある、ソース独特のコクと野菜の旨みが肉と絡まり口の中いっぱいに広がり鼻に抜ける息までうまいと感じる。
気が付くと皿は空になっていて腹を満たす満足感ともっと食べていたかったという思いが半々だ。
「何作ってもウマいなケンタは、ほんとに飯屋で食っていけるぞ」
「ありがとうございます。そこまで言っていただけると本当にうれしいです。
でも、僕は冒険者になりますよ、折角この世界に来たんですからまだ見ぬ景色なんかを見たいですしね」
「そうか、お前がそう決めたんなら応援するよ。
図書館は朝から開くからもう寝るかな」
「おやすみなさい」
「おう、おやすみ」




