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ラムザス男爵の憑依物語  作者: 厨二病発症
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プロローグ

 何処までも続く青い空。


 そんな青を際立たせるように転々と流れる白い雲。


 季節は初夏…いや、もう夏と言った方が良いだろうか?湿気染みた暑さに晒されウンザリしながら一人の少年が額や背中にうっすらと汗を浮かび上がらせ立ち止まると燦々と照りつける太陽を恨めしそうに見上げる。


「……暑い。」


 返事が返ってこないのを分かっていながらも文句を言うとため息をはいた後、止めていた足を動かし舗装された道路を歩き始めた。










「ふぅ……。」


 忌々しく照りつけていた昼の支配者太陽は地平線へと消え、夜の支配者たる月が朧気に輝いている姿を他所に¨彼¨は向かい合っていた机上から顔をあげると背中が大きく反ると利き手に持っていたシャーペンを転がすように机上へと手放した。


「今夜は満月か……。」


 ゛彼゛はそう呟くと朧気に輝く満月に目を細める。


 ……ドックン。


 満月を眺めているとふっと感情が沸き上がっては消えて行く感情。


 --歓喜。


 --怒り。


 --哀しさ。


 --楽しみ。


 一言で言うなら゛喜怒哀楽゛人なら誰しもが持っている感情が沸き上がっては消え、沸き上がっては消えと続く不思議な感覚に見舞われた。


「……んっ?」


 一瞬の出来事だった為に今一理解出来なかった゛彼゛は首を傾けた後、気のせいだとの答えに至り再びシャーペンを手に取ると数分前と同じように机上へと顔を向けるのだった。










 誰だ俺を喚ぶのは……。


 そんなに喚ばなくてもちゃんと聞こえているって。


 --まて…今、俺は゛何゛て言った……?


 ……゛喚ばなくても゛。


 いや、字がおかしくないか?


 そこまで考えると微睡んでいた意識は水面へと急浮上するようにはっきりと覚醒した。


「…はっ、はぁはぁ。何なんだよ、いっ…たい……?」


 視界に入るのは白い天井。


 そして何処までも続く白い空間に一つだけぽつんと置かれながらも存在感を強烈に示している木製の高い机。


 その他には何もない……。


「は、ははっ……何なんだよ?此処は…何処、なんだよ?」


 意味が分からない。


 自分は確かに自分の部屋で寝ていた筈だ。


 こんな訳分かんない場所なんて行った事もなければ寝た覚えもない。


 何で……どうして……。


「やっと起きたようだね?香我美朔弥君。」


 そんな考えが浮かんでは消え浮かんでは消えと混乱している中、頭上から中性的で混乱している最中でもすうっと染み込むように声が聞こえた。


「だっ、誰だ?今まで此処に人はいなかった筈だ!?」


 ニンマリと意地の悪そうな笑みを浮かべた女が俺を見下ろしていた。


「私?私はミュケラ。アイゼンヴォードで運命を司る可愛い女神様さ。」


 ミュケラ?アイゼンヴォード?


 そして聞き捨てならない言葉が…運命を司る女神、だと…。


「な、何訳分かんない事言ってやがる。神などこの世にはいないっ!!」


 このアマ人を拉致っといて訳分かんない事宣うなんて、頭がどうかしているとしか思えない……。


 だけど、だけども頭の中でこのアマが神である事を否定し罵倒しながらも何処かでこのアマが、いや彼女が何を司るかは知らないが神である事を認めてしまうのも事実。


 自分でも何でそう思うのかは分からない……。


「おや?これは異な事を言うね。君だって薄々感じているんだろう?私が何者であるかを。」


 内心戸惑う俺に彼女は勝ち誇った表情で見下ろしながら言うと強烈な存在感を示す机にもたれ掛かると気だるげに指を擦り合わせて音を鳴らす。


 --ブォン


 そんな音が聞こえたと思ったら有り得ない現象が目の前で始まった。


 赤、青、緑、黄、白、黒と点滅しながら大きな円が描かれ更に、その円の内側に見覚えのある図形が描かれてゆく。


 その図形は--五芒星。


 その全体図は正に魔方陣と呼ばれるファンタジー物の漫画や小説にテンプレの如く登場する物だった。


 そして驚愕する俺を置いて魔方陣はゆっくりと回転を始め淡く輝き出した。


「……お、おいっ」


 彼女に声をかけようと口を開くと同時に魔方陣は目映く輝いた。


 車のハイライトを至近距離で当てられたと錯角する光量に思わず腕で目を庇う。


 時間にして30秒程だろうか、辺り一面を照らしていた魔方陣の光は消え遮るために掲げてた腕をゆっくり下げると其処には困ったように苦笑いしている少年が俺を見つめているのだった。


「ラムザス。彼が君の願いを叶える為に対価として選ばれた者だよ。」


 ……この人は゛今゛なんて言った?


 とんでもない事を簡単に、さも何でもないように言わなかったか?


「ミュケラ様。その言い方はあんまりではありませんか?」


 目の前の少年は苦笑いしているがその瞳は哀しみに揺れているような気がする。


「そう言うが事実以外のなにものでもないさ。」


 彼女がそう答えるとラムザスと呼ばれた少年はがっくりと肩を落とした。


「では、両者が揃ったので話を進めよう。」



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