天井が降りてくる。
掲載日:2026/08/18
視界を奪うほどの圧倒的な「白」と、忍び寄る絶望。閉ざされた空間で繰り広げられる短い恐怖の物語をお楽しみください。最後の一行まで、どうぞ油断なさらないように。
目を覚ますと、そこは真白で狭い部屋だった。ふと見上げると、白い天井が降りてくる。
床に潰されるまいと、男は必死にドアを探した。しかし、四方の壁にはノブも目地すらもない。刻一刻と迫る圧倒的な白。男は床に這いつくばり、迫る天井を両手で押し返そうと抗った。
冷たい圧迫感が背中を押し潰す。絶望の中で意識が遠のき、男の視界は真っ白に染まった。
――ポン、と軽い音が響く。
「よし、きれいに平らになったね」
白い巨人がパレットナイフを置いた。そこはケーキ作りの真っ最中。男が最後に目にした「白い天井」は、自分ごとケーキを覆い尽くすために塗られた、濃厚な生クリームだった。
そして今、暗闇の中で静かに、巨大なイチゴが頭上から降ろされようとしている。
【了】
見慣れたお菓子の風景も、目線を小さくするだけで一転して恐ろしいホラー映画へと姿を変えます。
日常の「あまい」世界に潜む「ひやっ」とする違和感を楽しんでいただけたなら幸いです。次にケーキを食べる時は、上に載った小さな飾りの視線を感じてしまうかもしれません




