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理想的な家族の食卓
彼はベッドの上で目を開けた。いつもと変わらない朝がやって来た。何か夢をみたが、今はもう覚えていない。思い出そうとする作業が自動的に始まるが、それが少し頭を痛くした。上半身をベッドから離し、大きく腕を肩から上に伸ばして背伸びをする。年を取る毎に、朝が爽やかな気分になるのはどうしてだろうか。もう夜更かしを出来る年齢ではないことが、朝を待ち遠しくさせる。
自室を出てリビングに向かった彼は、日課の歯磨きをするために、妻に「おはよう」の挨拶だけを済まそうと足を運んだ。妻の清子は台所に立って、3人分の朝食を作っていた。彼は清子の後ろに立つと、軽く口を開いて挨拶をした。
「あら、おはよう。今日は少し早いのね。もうすぐ朝食が出来るから、新聞でも読んでて下さいな」
彼は清子のいつも通りの明るい声に、この生活を大切に思う気持ちが増加していくのを感じた。決して裕福すぎることもなく、お金に困ることもない平均的な家庭だが、彼の唯一の誇りであり安らぎの場所だった。




