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史上最弱の勇者と呼ばれた俺が、RTA走法で異世界記録を塗り替える話

作者: 桜木ひより
掲載日:2025/11/05

「え、マジで死んだの?俺」


なぜか気づいたら、真っ白な部屋にいた。

目の前には、RPGに出てきそうな女神様。


ああ、これ異世界転生ってやつだ。

配信のネタになるかもと思ったけど、現実に戻れないなら意味ないな。

これが夢だといいんだが。


「勇者として、魔王を討伐してほしいのです」

女神様は申し訳なさそうに、でも瞳を輝かせたキラキラした笑顔で言った。


俺は鏡崎颯。元RTA配信者。

チャンネル登録者30万人で、アクションRPGなら何でも最速クリアしてきた。

異世界転生か。まあ、新しいゲームだと思えば——


「あ、でも一つ問題がありまして」


…嫌な予感しかしない。


「手違いで、あなたたちには『成長停止の呪い』がかかってしまいました」


「……は?」


「レベルが上がりません。ステータスも固定です。経験値も入りません」


あなたたちと言われ、ふと周りを見渡すと、他にも転生者らしき人間が何人かいる。

全員、絶望した顔をしている。


「人生終わった……」

「レベル上がらないとか、詰みじゃん……」


そんな中、俺は——


「レベル上げ禁止RTA?」


思わず口に出た。


「え?」

女神様がきょとんとする。


「いや、むしろ燃えるわ。この世界、どんな仕様になってます?

モンスターの行動パターンは?アイテムの仕様は?ダメージ計算式は?」


「仕様……?」


俺の目が輝く。レベル1縛りなんて、今まででも散々やってきた。

ありとあらゆるジャンルのゲームを最低レベルやアイテム禁止でクリアしてきた俺にとって、これは最高の縛りプレイだ。


「最短ルート、構築します」


女神様、完全に困惑してる。いいリアクションだ。



王都に召喚されて、まずステータス確認。


鏡崎颯 Lv.1

HP: 50

MP: 30

攻撃: 5

防御: 3



ゴミだ。完全にゴミ。

この世界のスライムがHP100らしいから、俺、スライムの半分じゃん。

スライム以下かよ。


王様が立派な玉座から言う。


「まずは郊外でレベル上げを——」


「その必要はありません」


「え?」


「最短ルートで魔王城に向かいます。レベル上げは時間の無駄なので」


王様と大臣たち、ポカーンとしてる。そこに、パーティメンバーが紹介された。


エルフの魔法使い、リリア。

レベルは18。真面目そうな優等生タイプ。


「よ、よろしく。でも、あなた……レベル1?大丈夫なの?」


「問題ないです」


次に、でかい戦士のガルド。

レベル20。脳筋っぽい。


「レベル1とか、足手まといじゃねーか」


「すぐ追い抜きますよ」


最後に、小柄な盗賊のミオ。レベル15。

好奇心旺盛そうな目をしてる。


「レベル上げないで冒険とか、なんか面白そう、よろしくね!」


お、この子はいいリアクションだ。

このパーティーで最速クリアを目指す。


最初のダンジョンは「ゴブリンの洞窟」。


ガルドが張り切って言う。

「よし、まずは雑魚敵でレベル——」


「ボスのところに直行します」


「は?」

リリアが慌てて早歩きで歩く俺を止めに来る。


「無茶よ!ゴブリンキングはレベル30の強敵なのよ!?」


「大丈夫です。ついてきてください」


ダンジョンに入った瞬間、マップを脳内で暗記して最短ルートを構築する。

入り口から左、三つ目の分かれ道を右、トラップを二つ避けて、壁沿いに進めば——


「最短ルートはこっちです」


走る。


トラップのスイッチが見える。

発動タイミングは2秒間隔。フレーム単位で計算して——


スッと避ける。


「え!?なんで避けられるの!?」

リリアが驚く。


「パターンを観察すれば簡単です」


次は敵。ゴブリンが三体、巡回してる。

動きを見る。3秒で右、2秒で左、1秒停止。


タイミングを合わせて走り抜ける。


「戦わないの!?」

ガルドが叫ぶ。


「時間の無駄なんで」


5分でボス部屋到着。通常では30分以上かかるらしい。

タイムロスなし。完璧だ。


ボス部屋に入ると、でかいゴブリンが鎮座してる。

オーガキング。レベルは30。


ガルドが武器を構える。


「レベル差29だぞ!?勝てるわけ——」


「攻撃パターン、三種類ですね」


オーガキングが咆哮して、棍棒を振り下ろす。


横にステップ。


「一回目の攻撃は縦振り。フレーム数48。避けるの余裕です」


次は横薙ぎ。

バックステップ。


「二回目は横振り。フレーム数36。この後に——」


オーガキングが大きく息を吸う。


「0.8秒の硬直。ここです」


踏み込んで、剣で脚を切る。

ダメージ5。少ない。でも——


「弱点は脚の関節。ここに30回攻撃すれば、ダウンします」


「30回!?」リリアが叫ぶ。


「パターンを読めば余裕です。皆さんは補助お願いします」


そこから、完璧な立ち回り。


攻撃を全部避けて、カウンターを確実に入れる。

まるでダンスみたいに。


いつもやってたRTAと同じだ。

あの時も、レベル4縛りでクリアした。


30回目の攻撃。

オーガキングがダウンする。


「今です!総攻撃!」


リリアの魔法、ガルドの斬撃、ミオの短剣が叩き込まれる。


オーガキング、消滅。

ノーダメージでクリア。


「……嘘でしょ?」

リリアが呆然としてる。


「こういうのはパターンゲーなんで」


そして、宝箱を開ける。

中には回復薬と装備。


「あ、この宝箱、もしかしてバグが使えるタイプか?」


ミオが首を傾げる。

「どういうこと?」


「こうやって…開ける、閉じる、開けるの順番で繰り返すと、中身が二倍になります」


実演する。

宝箱から回復薬と装備が四つ出てくる。


「それバグじゃん!」


「仕様です」


次のダンジョンは「魔の森」。

本来なら迷いやすい複雑な構造らしい。


でも、俺には関係ない。


「この崖、飛び降ります」


リリアが目を剥く。


「100メートルあるのよ!?死ぬわよ!?」


「この世界、実は落下ダメージ計算バグってます」


「バグ?」


「1メートルでも100メートルでも、ダメージ49で固定。HP50の俺なら、HPが1残ります」


「そんなバカな——」


飛び降りる。

風を切る感覚。地面が迫る。


ドスン。


HP 50→1。


「ほら、生きてます」


リリアが崖の上から叫ぶ。


「あなた正気!?」


「移動時間30分短縮です。降りてきてください」


仕方なく、リリアが魔法で全員を降ろす。

確かにそっちの方が安全だった。まあいいや。


次は「三つの鍵」のギミック。

本来なら、森の奥で三つの鍵を集めて、扉を開ける。


でも——


「この扉、判定ガバガバです。頑張ったら抜けれます」


扉の横、微妙な隙間に体を押し込む。

スルッと抜ける。


「侵入成功。皆さんもこっちです」


ガルドが頭を抱える。


「順番無視かよ……」


「3時間の短縮になります」


そして、中ボスのドラゴン。レベル50。

普通なら歴戦のパーティーでも全滅するレベルらしい。


「このドラゴン、炎を吐く時に無敵判定が0.2秒切れます。

そこにクリティカルを入れれば——」


ドラゴンが炎を吐く瞬間、踏み込む。

首の付け根に剣を突き立てる。


クリティカル発生。


ドラゴン、即死。


「——一撃です」


ガルドが地面に座り込む。


「レベル1が……ドラゴンを……一撃……?」


「ダメージとかレベルよりタイミングだけなんで」


転生から三日目。


いよいよ魔王城に到着した。

王様から伝令の魔法が来る。


『え!?もう着いたの!?普通一年かかるんだけど!?』


「最短ルート通ったので」


『最短ルートって、山を越えて、海を渡って、迷宮を抜けて——』


「あ、全部ショートカットしました」


『ショートカット!?』



「とりあえず魔王を倒してくるので。それでは」


さっさと通信を切る。

話してる時間がもったいない。


魔王城の門を開ける。中から魔物の群れ。


「皆さん、壁沿いに走ってください。その辺の雑魚敵は無視でお願いします」


リリアが杖を構える。


「でも——」


「このあたりの魔物は倒しても経験値入らないんで、時間の無駄です」


走る。


敵の攻撃を最小限の動きで避ける。今までの様々なゲームのRTAで培った技術。まるで踊るみたいに、攻撃の合間を縫って進む。


ガルドが走りながら俺に叫ぶ。


「お前、本当に人間か!?」


「ただの陰キャゲーマーです」


そして、玉座の間。


魔王、ダークロード登場。

黒いマントを翻して、威厳たっぷりに言う。


「よくぞここまで来た、勇者よ。我は魔王ダークロード。この世界の——」


セリフの途中で攻撃開始。


「ちょっと待って!演説がまだ!」


「時間の無駄なので」


魔王の攻撃パターンを観察する。


横薙ぎ→縦斬り→闇魔法→硬直。


シンプルだ。

全部避ける。


「なぜだ!?なぜ避けられる!?」


「パターンを読めば簡単ですよ」


魔王の背中に、小さな結晶が見える。

あれが弱点だな。見え見えだ。


ミオに指示。


「ミオ、あの背中の結晶を狙って」


「了解!」


ミオの短剣が結晶に突き刺さる。

魔王が膝をつく。


「バカな……レベル1の勇者に……」


「レベルとか関係ないんで」


最後の一撃。

剣を振り下ろす。


魔王、消滅。


クリアタイムは三日と五時間。


王都に帰還すると、大騒ぎだった。


「史上最速の魔王討伐!」

「勇者万歳!」


王様が感動してる。


「まさか三日でクリアするとは……」


リリアが俺を見る。

「あなた、一体何者なの?」


「ただのゲーマーです」


ガルドが肩を叩く。

「お前、化け物だよ」


ミオが目をキラキラさせる。


「全部教えて!あの技術!」


そこに、女神様からメッセージが届く。


『記録更新されました』

『異世界クリアタイム:三日五時間』

『次の勇者の目標タイムとなります』


ああ、やっぱりこの世界、RTA仕様だったんだ。


「次走者、頑張ってください」


そして、俺は考える。


まだタイムロスがあった。

魔の森で5分、魔王城で10分。


装備の最適化をすれば、もっと縮められる。

理論値は——


「二日切れるな」


リリアが絶句する。

「まだ縮める気!?もう魔王は倒したでしょ!?」


「理論値、追求したいんで」

ガルドが頭を抱える。


「やめてくれ……」


でも、ミオが笑う。


「面白そう!もう一周行く?」


「ミオは分かってる」


リリアが叫ぶ。


「やめろ!もう十分でしょ!?」


「いや、でも——」


ガルドが俺の肩を掴む。


「休め。な?」


まあ、確かに少し疲れたかも。

そういえば、異世界の飯ってどんな味なんだろう。ラーメンより美味いのかな。


「じゃあ、とりあえず飯にします」


全員、安堵の息を吐く。


でも、心の中で思う。

次はアイテム100%回収RTA、やってみようかな。

それとも、ダメージレスRTA?いや、いっそ目隠しRTA——


「お前、絶対また何か企んでるだろ」

ガルドが呆れた顔をする。


「企んでないです」


「嘘つけ」


こうして、史上最速の勇者は、次の冒険を探し始めた。


レベル1のまま。


~完~

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